五人の適合者

アオヤカ

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力の在処

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「殺さないで…殺さないで…」
これが死なのか。少年は地面に座り込んで前から来る男を見ていた。
男は剣を振り下ろす。
少年は手でガードした。しかし、手は斬り落とされる。
「痛あああああ!!」
噴き出す血が男に跳ね返る。
「やめて!…お願いします!やめ…て」
男はもう一度剣を振り下ろそうと、する……………。


バーナードは手に触れた。手袋を外し、古傷が痛む。
「くっ…」
右手の腕が義手になっていた。
義手は人間の手と同様に精密に作られていて、実際に握らなければわからないくらいに作られている。
「余裕を持たなければな…。」
バーナードは口笛を吹いた。痛みを忘れるために、自分の意識を変えるために。
自分の仕事部屋に移動すると資料を読んだ。
「適合武器の開発計画…。本物が遂に作ることができれば我々は神の領域に達する。カゲを…全滅させる事もそう遠くないな。」
何枚もペラペラとめくる。
「なんだ?…なるほど。やはり、彼らが必要と言うわけか。」
バーナードは部下の兵士を呼んだ。
「彼らのケアを頼む。」
「承りました。」
兵士は部屋から出るとアルム達の元へ向かった。
「神は死に絶えた…か。」
バーナードは窓の外を見る。空はどこまでも遠く。いつまでも辿り着かない。青空に薄っすら月が見える。月に人が足跡をつけたという伝説がある。それを信じようとする者はいなかった。
「私は神話が好きだ。たとえ、忘れ去られた話だったとしても…。」


夢をみた。
「やぁ。」
アルムに話しかけてくる。
「……………。」
「無視は良くないんじゃないのかい?一応言っておくけど…ここでの記憶は現実に持ち帰ることはできない。」
彼は続ける
「夢とは脳がイメージするその人間の心の形。人間の周りの見えないものを再現したものだ。僕がこのように話しているのも君のイメージと言うわけさ。」
その姿は見えない。しかし、白衣を着ているようだ。
「君は心を閉じてしまった。そのままでは困る。僕の計画が台無しだ。何回繰り返すつもりなんだ。僕は何度見ればいい?」
アルムの額を指で弾く。
「君は次の計画を遂行しなければここで終わる。言っただろ?…君次第だとね。もう…やり直す事は……今の君はできないのだから。」
アルムは夢の中でもうひとりの自分を見る。
「少しの間でいいから休ませてくれ。」
アルムは座り込む。そして、もうひとりが外への扉を開く。光に包まれながら夢は覚める。

アルムは前と同じ部屋で目覚める。やけに身体が重かった。気持ちに引きづられているのだろう。
アルムはベットから起き上がると剣を背中に装備する。
部屋を出てからクロスの部屋に移動した。

「クロスさん。起きてますか?」
アルムは部屋の前で呼びかける。
「あぁ。」
部屋から声が聞こえたので扉をノックしてから部屋に入る。
「アルム。大丈夫か?」
クロスはアルムの顔を見てそう言う。
「はい。…僕は大丈夫です。」
クロスは何か異変に気がついた。しかし、何も言わないことにした。
「そうか。…なら、今日は気分を変えよう。街を案内する。」
クロスは模造刀を持ち部屋を出る。
「アルム…早く来い。いつまでも落ち込んでいるな!」
クロスの言葉でアルムはゆっくりと部屋を出る。
街は活気に溢れている。商人の声が響き渡り、踊る人々。
買い物を楽しむ人々。この国を信頼しているのだろう。笑顔がどこに行っても見られる。アルムの村も笑顔が絶えなかった。誰もカゲの脅威を知らなかった。いや…………教えてくれなかったんだ。カゲとの戦いを経験した人々はこの国に住んでいる。だからこそ、他の村の人々はカゲを知らない。…滅んだとすら思った。信じるということが最大の悲劇だった。平和を信じてはいけない。必ず、常識を越える日常があるのだと…。
「どうだ。賑やかだろ。俺は、この街が好きなんだ。」
クロスは笑みをこぼしながら歩く。
「僕の村も笑顔が絶えなかったですよ。」
クロスは知っている。でも、言えなかった。言うべきではないから。だからこそ、笑みは複雑になる。知らないのだから、顔に出してはいけない。
「俺も、行ってみたいよ。アルムの村にな。」
しばらくの沈黙があった。

「クロスさん。また剣を教えて下さい。」
アルムは止まる。そして、クロスの目を見る。
「…いつでも技を教えてやる。だから、元気を出せ。」
クロスは優しく言う。
アルムは少し、不器用だが、笑顔を見せた。
「それでいい!」
アルムがのお腹が鳴る。クロスは笑う。
「腹が減っただろ?買ってくるから待ってろ。」
クロスは近くにあった店の店主から串に刺さった鶏肉の食べ物を買う。
「ほら、食べろ!美味いぞ!」
クロスは10本ほど買っていた。アルムに半分渡す。
タレが鶏肉にかけてある。香ばしい匂いが食欲を引き立てる。一本手に取るとゆっくりと口に運ぶ。とても熱々で肉の噛みごたえがある。タレもとてもマッチしている。これなら何本でも食べれるだろう。アルムは昨日から何も食べていなかった。そのせいか、一本目を食べ終えるとすぐに2本目を口に運ぶ。
「とても、美味しい……です。」
アルムは涙が出た。溢れ出てしまう。アルムは、涙を止めようとするが止まらない。
「人は飯を食うことで生きていることを実感する。辛い時こそ、美味い飯を食え。この街は美味い飯がたくさんある。今日は巡るぞ!」
クロスは頭を撫でた。髪がぐじゃぐじゃになるぐらいに。
アルムは必死に隠そうと下を向いた。涙を手で拭う。
「はい!」
目が赤くなっているアルムであった。
「次はもっと美味いものを食わせてやる!ついてこい!」
クロスはアルムを連れて街を歩き回る。お腹いっぱいになるぐらいに食べ歩いた。
「今日はとても美味しかったです。」
アルムは、ベンチでグテっとなりながらそう言った。
「しばらく、休暇が取れた。バーナードが取り計らってくれたんだろうな。」
クロスもアルムの隣に座る。
「バーナードさんは、どんな人だったんですか?」
アルムは、苦しいお腹を押さえながら質問する。
「あいつは誰よりも情に厚い。しかし、アルムに言った言葉は間違っていた。だが、いいやつだ。いつも、プランを何通りも用意している人物だ。だから、作戦は完璧を貫く。そういう男だ。情に厚いくせに、他人を信頼していないのも笑えるよな。」
クロスは笑う。
「俺は、あいつを友だと思っているよ。」
クロスの言葉は友への信頼からくるものだった。友だからこそ強い口調になるのだろう、ぶつかるのだろう。そのたびに互いへの思いやりも忘れないのだろう。それが友だと、言うのだろう。
夕日が輝いていた。街の人々は家に帰っていく。
そして、夜が来る。街は機械の光で照らされていく。街は新たな姿へ変わる。これがお洒落な空間なんだとアルムは、思うのだった。
「帰りましょう。今日は疲れました。」 
アルムは、重い体を持ち上げた。
「そうだな。帰ろう。」
二人の歩く音が静かに街に溶け込んでいく。
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