五人の適合者

アオヤカ

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向かい風

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クロスは黒いコートを羽織る。
コートの中には愛銃を二丁忍ばせた。そして、ライフル銃を後ろに背負う。
静まり返る帝国の市街地で生き残りを探していた。
「…残念だが、生き残りはいないな。」
クロスは月姫に話しかけた。
「さっきの爆発できっと…。」
月姫は下を向いた。
「この先、これと同じことが起こるかもしれないだろう。いつでも戦えるようにしておけ。いいな?」
「…ええ。分かってる。」
クロスはスタスタと先に向かう。
月姫もついていくが足元がふらついている。
月姫が地面に倒れそうになるとクロスはゆっくりと支えて月姫を横にさせた。
「……すまない!気が付かなかった。エネルギー欠乏症だな。」
クロスは月姫の身体を気遣う。。
「…違う…のよ。クロスさん。私はもうあと少しなのよ。」
月姫は適合武器を展開した。
「どういうことだ?何があったんだ?」
クロスは心配そうに月姫を見る。
「アルムに影の王の力をあげたことで魂の維持能力がなくなっちゃみたい…。私は…もう1000年以上生きてるから魂の形を保つ事が難しいみたいなの…それを影の王の力で…保っていただけだから。ガタが来たみたい。でも……最後の戦いまでは死ぬつもりはないわ。だからクロスさん。私が死んだら天姫を頼んだよ。あの子、結構頑固だから。」
月姫の目は本気だった。生きたいという願いを完全に捨ててしまっている。
「俺はその役目はやらないぞ。自分で生きて見てやれ。大事な妹なんだろ?どれだけ長い時間を生きてきたのか…俺にはわからないが、月姫が妹を想う気持ちは負けないはずだ。それは生きる活力になる。前に進むには向かい風だろうが進むしかないだろ?」
クロスは真っ直ぐに答えた。
「本当に生きることに…貪欲ですね。……でもそこを尊敬してます。生きる活力を探しますよ。」
月姫は微笑んだ。
クロスは月姫に手を差し出した。
月姫はゆっくりと手を伸ばしクロスの手に掴まる。
立ち上がりゆっくりと歩く。風は向かい風だった。
でもそこには道がある、だから進むのだ。アルムたちは今も苦しんで戦っているはずだ。彼らの顔が鮮明に浮かんだ。早く行かなければと心ばかりが焦ってしまう。
進もう…空は青いのだから…。
すると、道の真ん中に黒い渦が起こる。
「警戒しろ!!」
クロスは拳銃二丁を持って構える。
月姫も適合武器を展開した。
中出てきたのは人の焼けた臭いとカゲ特有の靄がかかった姿…。槍を持ち…死んだ目をしていた。
「ここにいたのか。月姫…。」
渦の中から現れたのは殺したはずのカリストレートだった。
「お前…生きていたのか?」
クロスは月姫を後ろに隠した。
「ふ……あの程度なら何度だって蘇る。多少無茶はしたがな。…さて、喜べ!!月姫よ。お前は俺が仲間の元へ連れて行こう。早く合流したいんじゃないのか?」
カリストレートは少しずつ近づいてくる。
「止まれ。これ以上近づけば、お前を撃つ!!」
カリストレートは余裕の笑みをこぼした。
「クソッ!」
クロスは足に向かって発砲する。
しかし、カリストレートは倒れない。
クロスは何発も発砲する。
しかし、何度も撃ち抜かれても倒れない。
クロスは最終手段としてカリストレートの頭を撃ち抜いた。
しかし、倒れない……死なないのだ。
「お前は…一体…いや化け物になっちまったんだな。」
そして、クロスの横を通り過ぎていく。クロスのことは見ていない。
「さぁ行こう。アルム達が待っている。」
月姫は力を振り絞り弓を引くが、間に合わなかった。
肩に指が触れたところでクロスが重い口を開けた。
「待て…一体何をするつもりだッ!カリストレート!!」
クロスの叫びにカリストレートはそっと指を離した。
「昔、俺達が求めた理想郷だ。お前にはわかるはずだ。これ以上は必要ないだろ?」
カリストレートは月姫の肩に触れた。
そして、黒い渦となって消えていく。

一人取り残された時、互いに交わらないのだと感じたのだ。
クロスは拳銃を落とす。
「……理想が独り歩きしては誰もついて来ないぞ…カリストレート……。」
カリストレートは異形の化け物へ…アルムは影の王になってしまった。友も家族も何もない。力もない。一人の仲間も守れない。クロスは深い悲しみが重りのようにクロスの身体を押し潰す。
でも自然と、やるべき事が分かった気がした。
「必ず止めよう。友の陰謀を…そして仲間の自滅を…。」
拳銃を拾い上げ、真っ直ぐ先を見た。
広く道が広がっている。
きっと劇場はあの塔だろう。
アルム達はそこで戦うはずだ。
力は失ったが……やれる事がまだあるはずだ。
絶対に……。
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