激情ヱレキてる

はーこ

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Fuse7

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 ──といったケースも考えられますように、先生のおっしゃる新たな電力エネルギーは、画期的なものには違いありませんが、非現実的な要素をぬぐい去れません。

 てかぶっちゃけ、つかの間の現実逃避の話題ぐらいにしかなりません。

 このストレス社会、怒りをエネルギーとして発散しよう?
 地球にも優しいし?
 犯罪率も低下するはずだし?

 寝ぼけるのも大概にしなさい。

 個人の感情は個人のものです。
 他人がどうこうしようなんておこがましい。
 そんな夢物語をほざく暇があるなら、明日の数Ⅱで私に勝つくらいの気概を見せなさい。

 こんな茶番のためにすっぽかされたスケジュールのこと、私は絶対絶対、ずぇぇっとぁい忘れませんからね。

 その点お忘れなきよう願いますね。
 親愛なる火原 あつき先生へ、碓氷 あかりより。

 追伸

 今度の日曜
 次はない



「俺のあかりが可愛いんだがどうしよう」

「お兄ちゃん顔がうるさい」

 中学生になった妹が思春期だ。
 心外だ。こちらはテスト勉強のかたわら、成績へ影響のない程度に恋人とのメッセージのやり取りを楽しんでいたというのに。

 かくいう恋人も、あつきのノリに合わせてくれていたのも最初のみで、途中から容赦ない文面へフェードインしている。
 リビングで勉強するのはやめてほしいんだけどとうんざりしている妹の声は、スマートフォンに釘付けな兄には届かない。

 怒りは負の感情だと、みな言うけれど。

 かまってやらないと拗ねて、意地っ張りしか言わなくなる彼女に、可愛い以外のどんな言葉が出てくるっていうんだ?
 こんな怒りなら、いくらだって浴びたい。

 そんなことを素でのたまい、意図的に恋人へ意地悪を仕掛ける青年の天邪鬼は、とうに手遅れだった。
 おそらく、手術をしたって治らないだろう。

 このおめでたい兄が激怒するとしたら、それは彼女に悪い虫がたかったときだろうなぁと、妹には容易に想像できてしまった。

「明日朝イチでキスハグする」

「テス勉やれバカ」

 愛情電力は、多すぎても少なすぎてもブラックアウトの原因となる。
 そのことをあつきが理解するのは、果たしていつのことやら。


【完】
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