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本編
*45* ほうれんそうは大事です
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らせん階段の近くに、ネイビーのフードをまぶかにかぶったローブのうしろ姿を見つけた。
「おまたせ、ノア!」
駆け寄りながら名前を呼ぶと、ふり返ったノアが、フードの影でサファイアの瞳を細めて笑う。
「おかえり。どんな感じだった?」
「負傷者は、旧ブルーム城ってところにあつめられてるみたい。これから臨時ポータルを使って、テレポートで向かうことになったの。ノアも来てくれる?」
「もちろん。リオのお手伝い、俺できるよ」
「ありがとう!」
なかには身動きのとれない負傷者もいるらしいし、男手があると、とても助かるんだ。
ノアって細身なのに、大量のマンドラゴラを運んでたときみたいに、けっこう力持ちだしね。
「えーっと……エルはまだ、忙しいかなぁ?」
わたしとノアを冒険者ギルドに送り届けてくれたエルは、その足で赤レンガ会……商団ギルドへ向かうと話していた。
「あとでまたお会いしましょう」と言われたけど、もどってきていないところを見ると、お仕事が立て込んでるのかな?
たくさん救援物資を運んできてくれてたからねぇ……なにも言わずに現場へ向かうのも申し訳ないし、よし。
「エルにちょっと連絡入れてくるね!」
たしか受付の近くに、連絡用の水晶が設置されていたエリアがあったはず。
個人個人がスマートフォンをもってる世界じゃないから、公衆電話みたいで助かる。
「俺も行く」
「え? ちょっと行ってくるだけだよ?」
「俺も連絡用水晶の使い方、知っときたいなって!」
なんと、ノアは使ったことがなかったのね。
「それじゃ、いっしょに行こうか」
「ありがと。……リオとふたりきりで話ができると思うなよ、ふふ……」
「えっ? わたしがなに?」
「なんでもない!」
はつらつと声を上げたノアが、ネイビーのローブをはためかせて先に行ってしまったので、わたしも首をかしげながらも、追いかけて肩を並べた。
「連絡用水晶を発動させるには、十一桁の魔法番号の入力が必要なの。ギルドとか主要な施設の魔法番号なら番号帳にのってるはずだから、調べればすぐに見つけられると思うよ」
「ふむふむ」
「ちなみに、実はさっきエルから連絡先をもらってるので、調べなくても大丈夫だったりします。えぇと、たしかこのへんに…………あっ」
ノアに説明しながらローブの内ポケットをさぐったら、手もとをすべらせてしまった。
わたしの手からこぼれたシルクのハンカチが、ひらりと大理石の床に落ちる。
──コツリ。
ハンカチを拾おうとかがんだわたしの視界の端で、だれかのブーツが立ち止まる。
かと思ったら、目の前で、ひょいとハンカチが拾い上げられた。
「可愛らしいお嬢さん。これはきみのかい?」
一瞬、なんのことだかわからなかった。
でも、『可愛らしいお嬢さん』がどうやらわたしを指しているらしいことに遅れて気づき、かぁっとほほが火照る。
ハンカチを拾ってくれたのは、全身黒ずくめのひとだった。
からだつきは華奢ながら、わたしが見上げるほど背が高い。
フードで顔が隠れているけど、聞こえたのは若い男性のハスキーボイスだ。
真っ黒な外套の左腰あたりにふくらみがあって、よくよく見れば、剣を提げている。剣士の冒険者かな。
「おまたせ、ノア!」
駆け寄りながら名前を呼ぶと、ふり返ったノアが、フードの影でサファイアの瞳を細めて笑う。
「おかえり。どんな感じだった?」
「負傷者は、旧ブルーム城ってところにあつめられてるみたい。これから臨時ポータルを使って、テレポートで向かうことになったの。ノアも来てくれる?」
「もちろん。リオのお手伝い、俺できるよ」
「ありがとう!」
なかには身動きのとれない負傷者もいるらしいし、男手があると、とても助かるんだ。
ノアって細身なのに、大量のマンドラゴラを運んでたときみたいに、けっこう力持ちだしね。
「えーっと……エルはまだ、忙しいかなぁ?」
わたしとノアを冒険者ギルドに送り届けてくれたエルは、その足で赤レンガ会……商団ギルドへ向かうと話していた。
「あとでまたお会いしましょう」と言われたけど、もどってきていないところを見ると、お仕事が立て込んでるのかな?
たくさん救援物資を運んできてくれてたからねぇ……なにも言わずに現場へ向かうのも申し訳ないし、よし。
「エルにちょっと連絡入れてくるね!」
たしか受付の近くに、連絡用の水晶が設置されていたエリアがあったはず。
個人個人がスマートフォンをもってる世界じゃないから、公衆電話みたいで助かる。
「俺も行く」
「え? ちょっと行ってくるだけだよ?」
「俺も連絡用水晶の使い方、知っときたいなって!」
なんと、ノアは使ったことがなかったのね。
「それじゃ、いっしょに行こうか」
「ありがと。……リオとふたりきりで話ができると思うなよ、ふふ……」
「えっ? わたしがなに?」
「なんでもない!」
はつらつと声を上げたノアが、ネイビーのローブをはためかせて先に行ってしまったので、わたしも首をかしげながらも、追いかけて肩を並べた。
「連絡用水晶を発動させるには、十一桁の魔法番号の入力が必要なの。ギルドとか主要な施設の魔法番号なら番号帳にのってるはずだから、調べればすぐに見つけられると思うよ」
「ふむふむ」
「ちなみに、実はさっきエルから連絡先をもらってるので、調べなくても大丈夫だったりします。えぇと、たしかこのへんに…………あっ」
ノアに説明しながらローブの内ポケットをさぐったら、手もとをすべらせてしまった。
わたしの手からこぼれたシルクのハンカチが、ひらりと大理石の床に落ちる。
──コツリ。
ハンカチを拾おうとかがんだわたしの視界の端で、だれかのブーツが立ち止まる。
かと思ったら、目の前で、ひょいとハンカチが拾い上げられた。
「可愛らしいお嬢さん。これはきみのかい?」
一瞬、なんのことだかわからなかった。
でも、『可愛らしいお嬢さん』がどうやらわたしを指しているらしいことに遅れて気づき、かぁっとほほが火照る。
ハンカチを拾ってくれたのは、全身黒ずくめのひとだった。
からだつきは華奢ながら、わたしが見上げるほど背が高い。
フードで顔が隠れているけど、聞こえたのは若い男性のハスキーボイスだ。
真っ黒な外套の左腰あたりにふくらみがあって、よくよく見れば、剣を提げている。剣士の冒険者かな。
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