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青と白の行方㈠
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初めて耳にしたのは、鶯の歌声。清々しい春告鳥のさえずりにどこか違和感を憶えてしまった理由は、まだ夢見心地な穂花には思い当たらない。
ひとしきり倦怠感に浸ったのち、つと意識が清明となる。紅だ。長いまつげを伏せた神が、寄り添っている。
外気とは遮断されているが、抱き合う身体が一糸纏わぬ姿となれば、羽毛布団も意味を成さぬというもの。
遅ればせながら沸き上がる羞恥に声をあげそうになり、とっさに飲み込むことが出来た。
長いまつげを伏せ、安らかな寝息を立てられては、せっかくの夢路を邪魔することが憚られた為にほかならない。
「……紅の寝顔、初めて見るかも」
規則正しい時分に、紅が必ず起こしに来てくれる。
一日の始まりに耳にするものが、草笛の音色でない。ゆえに、先ほどの違和感が在ったのだろう。
そ……と頬へふれる。泣きはらした所為か、目許が赤い。
胸に溜め込んでいた苦しみを、想いを、残すことなく吐露したのだ。肉体的にも精神的にも疲労は相当なものだったはずだ。
わだかまりが少しでもほどけたのなら良いけれど。そんなねがいを込めて、翠の絹髪へ指を通す。
「……甘やかしてくださるなんて、珍しい」
「あ、起こしちゃった? ごめんね」
「かまいませぬ」
ふるふると、かぶりを振る紅。
「お早う……穂花」
穂花の頬へすり寄る動作は緩慢で、紅玉と菫のまなざしも、とろんと鈍いまま。
首筋へ直にふれる翠の絹髪がくすぐったく、思わず身をよじれば、くすり、と笑い声の後に再び抱き寄せられる。そればかりか、額、まぶた、頬、唇をついばまれてしまう。
「……蕾がほころんでおりますね。鮮やかな紅の椿じゃ。うれしい……」
「んっ……!」
さらには、歓喜に震える唇を胸許の花弁へ添えられ――
「……申し訳ございませぬ」
何故だか、詫びを入れられた。
なんに対する謝罪なのかわからず、返答に戸惑ってしまう。
ひとしきり倦怠感に浸ったのち、つと意識が清明となる。紅だ。長いまつげを伏せた神が、寄り添っている。
外気とは遮断されているが、抱き合う身体が一糸纏わぬ姿となれば、羽毛布団も意味を成さぬというもの。
遅ればせながら沸き上がる羞恥に声をあげそうになり、とっさに飲み込むことが出来た。
長いまつげを伏せ、安らかな寝息を立てられては、せっかくの夢路を邪魔することが憚られた為にほかならない。
「……紅の寝顔、初めて見るかも」
規則正しい時分に、紅が必ず起こしに来てくれる。
一日の始まりに耳にするものが、草笛の音色でない。ゆえに、先ほどの違和感が在ったのだろう。
そ……と頬へふれる。泣きはらした所為か、目許が赤い。
胸に溜め込んでいた苦しみを、想いを、残すことなく吐露したのだ。肉体的にも精神的にも疲労は相当なものだったはずだ。
わだかまりが少しでもほどけたのなら良いけれど。そんなねがいを込めて、翠の絹髪へ指を通す。
「……甘やかしてくださるなんて、珍しい」
「あ、起こしちゃった? ごめんね」
「かまいませぬ」
ふるふると、かぶりを振る紅。
「お早う……穂花」
穂花の頬へすり寄る動作は緩慢で、紅玉と菫のまなざしも、とろんと鈍いまま。
首筋へ直にふれる翠の絹髪がくすぐったく、思わず身をよじれば、くすり、と笑い声の後に再び抱き寄せられる。そればかりか、額、まぶた、頬、唇をついばまれてしまう。
「……蕾がほころんでおりますね。鮮やかな紅の椿じゃ。うれしい……」
「んっ……!」
さらには、歓喜に震える唇を胸許の花弁へ添えられ――
「……申し訳ございませぬ」
何故だか、詫びを入れられた。
なんに対する謝罪なのかわからず、返答に戸惑ってしまう。
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