【完結】たまゆらの花篝り
明朗な少女、穂花(ほのか)。早くに両親を亡くした天涯孤独の身の上であるが、ごく普通の高校生活を送ることができていた。とある神に溺愛されているということ以外は。
「このままだとおまえは、あいつに殺されるぞ」
兄のように慕う付喪神・紅(べに)の過保護ぶりに感謝しつつも悩まされる日々を送っていた、十六歳の誕生日のこと。幼馴染みの青年・真知(まち)に告げられた言葉、そしてサクヤと名乗る、美しい少女の姿をした神が突然現れたことで、穂花の運命は大きく動き出す。
神々の住まう天界、高天原(たかまがはら)。穂花は、かの地を統治する最高神の血族、ニニギノミコトと崇められる神であった。
太古の昔、葦原中津国(あしはらのなかつくに)と呼ばれるかつての日本に住まう国津神と、高天原の天津神は、対立関係にあった。両者の溝を埋め、葦原中津国の平定を成し遂げた神こそ、ニニギノミコトなのである。ニニギノミコトへ想いを寄せていた神は、ただ一柱のみには留まらない。
或る一柱は、兄代わりであり、高天原の頭脳と言っても過言ではない、知恵を司る天津神。
或る一柱は、幾度散ろうとも純粋に恋慕う、儚くも心優しき桜の国津神。そして――
「お迎えに上がりました。貴女様と、永久を過ごす為に」
紅蓮の瞳に狂おしい程の色を滲ませた神は、嗤う。物心のつく前から共に過ごしていた紅の、真の正体は。
偃月の夜、穂花を巡り、神々たちの闘いの火蓋が切って落とされる。
少女の身体に刻まれた、赤い花、青い花、白い花。咲き誇るのは、一体何色の蕾なのか。
失敗は許されぬ。非なる者には、天より数多の矢が降り注がん。
「それでは始めましょう。鮮烈なる死合(しあい)を」
古事記をもとに織り成す、日本神話×男女反転×逆ハー現代ファンタジー。
「貴女様は、この――だけのものじゃ」
――その神、愛憎過多につき。
「このままだとおまえは、あいつに殺されるぞ」
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