転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた

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76.温泉まったり物語1

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急いで宿に戻った3人は、すぐさま、
移動の準備を完了し、モリス商会に向かった。
リシェーヌは普段の服装に着替えた。
そして、街より少し離れたところにある温泉街に
向かった。
商談はシエンナの父が進めるとのことで、
スターリッジが案内するようだった。
リシェーヌが持つデスサイスに商会の面々は
面食らっていた。
協議の結果、デスサイスは商館に置いてくことになった。

「シエンナ、これ」
誠一が道中でヨークの短刀をシエンナに手渡した。
「えっありがとう。
ってか、この短刀の柄の部分って
物凄く精巧な装飾じゃない。どうしたの?」
事の経緯を誠一がシエンナに説明すると、
拗ねてしまった。

「また、わたしだけいないし。
そのヨークさんって方はパパに伝えておくけど」
どう説明しても機嫌が直らないシエンナを
スターリッジが先頭を走りながら、ちらちらと観察していた。

温泉街に到着すると、誠一はその風景に感動していた。
日本式の温泉街、誰かが意図して街づくりを
したとしか思えないほどに似通っていた。
街は冒険者たちで溢れており、活況を呈していた。
冒険者たちは傷を癒すためなのだろうと誠一は思い、
街往く人々を眺めていた。
「凄い賑わいですね。普段からこんな感じなんですか?」
誠一が感想を述べた。

「いや、これは違います。別の理由です」
スターリッジが愛想もなく答えた。
その答えを補足するようにリシェーヌが言った。
「大規模なスタンピードの兆候でもあるのかな。
霊峰氷山から吹く強烈な冷気が落ちる兆候があれば、
魔物が大集団で山から逃げ出すけど。
ちょっと早いけど、その周期なのかな」

スターリッジはニヤリとした。
「流石は、勇者候補です。
おっしゃる通りです。
宮廷魔術師の観測から、その恐れが
大きく冒険者を集めるだけでなく、
王国騎士団も動いています。
我々以外にも多くの商人が集まり、
戦時に必要な物資がソルテールに
集積されています。
我々は巻き込まれる前に
戻りますので、安全かと」

誠一はその話を聞き、思案していた。
冒険者証はあるため、スタンピード殲滅の
イベントに参加することは可能であろう。
メリットを考えると、良い経験値稼ぎ、
資金集め、そしてあわよくば新たな称号の所得に
繋がるかもしれないと判断した。
半面、デメリットを考えると、
低ランクのために後方へ追いやられて
然したる実入りがない、滞在費の都合をどうつけるか、
準備不足であった。

思案顔のアルフレートへスターリッジが
釘を刺した。
「アルフレート様、スタンピード討伐への
参加はできません。
あなたがたは、王都まで我々の護衛を
請け負っていますので。
そのようなことを考えるより、
良質な温泉を楽しんでください」

「ふううっ」
温泉に浸かった誠一は自然に声が出てしまった。
ぷかぷかと温泉に浮かぶヴェル、
ロジェは誠一と同じようにゆったりと浸かっていた。

高い衝立の方から女性の声が聞えた。
その声を聞くとヴェルが勢いよく立ち上がった。
「アル、これは行くしかないな。
千載一遇のチャンスだ」
叫んだ瞬間、風呂桶がヴェルの目の前に飛来した。
派手に水しぶきを上げて、そのまま、男湯に
ぷかぷかと浮いていた。
それだけでヴェルのアレは縮こまってしまった。

「アル君、しっかりと見張っておきなさい」
キャロリーヌからの怒声が響いていた。
上擦った声で誠一は了解の旨を伝えた。

風呂を上がると、男女ともに浴衣を着て、
食事を取った。
シエンナは慣れているのか、
上手く着こなしていたが、キャロリーヌ、
リシェーヌは着崩していた。
無防備な胸元が気になり、誠一は食事を
取った気がしなかった。

「アル、何?こっちを見すぎ。気になるでしょ」
リシェーヌから叱責された。
そして、ジト目で誠一を見るシエンナ。
そして、そんなことを気にせず、
眼前の料理に集中するヴェル。
どこに居ようとも変わらぬ風景が広がっていた。
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