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141.復活3
しおりを挟む「おはよう、アル。美人を侍らせて、随分な身分よね」
険のある言葉が誠一に飛んだ。
「シエンナ、おはようって。
朝食の前に挨拶はしたような気が」
「ふん、吹っ切れたようね。
アルは、それでいいの?」
誠一には何のことがいまいち分からなかったが、
おそらく魔物を殺すことへの抵抗のことであろうと思った。
「いや、まだ分からないけど、頭の靄が取れて、
すっきりとした気分だよ。
実際のところは、次に会ってみないとわからないさ」
気だるそうな表情と声で
答えられたようにシエンナには感じられた。
シエンナにとって、リシェーヌは恋敵であるが、
それ以上に親友であった。
その親友を軽く扱われたような気がして、
カチンときてしまった。
「あんたねー」
「魔物を前にして、冷静でいられるかまだ、分からない。
震えて動けないかもしれない。
その時は助けてくれるかい、シエンナ?」
壮大な勘違いに気づいたシエンナは、
真っ赤な顔で右往左往し始めた。
後ろでヴェルの笑いが漏れていた。
前では、キャロリーヌが優しい瞳で見つめていた。
誠一は不思議そうな表情をしていた。
「そっそうね。もちろん、助けるわ。当たり前でしょ」
キャロリーヌは立ち上がると、
シエンナの腕を取り、誠一の隣に座らせた。
「ふううー。アル君はまだ、
本調子じゃないから、少し様子を見てあげてね」
そう言って、キャロリーヌは、ヴェルの横に
腰を下ろした。
シエンナは誠一の隣に座ると、
怠そうな誠一を気遣った。
ヴェルは二人をちらちらと見ながら、
気づかわし気に姉に声をかけた。
「いいのかよ、姉貴。シエンナは本気だぜ」
キャロリーヌはヴェルの頭を軽く小突いた。
「まあ、良いのよ。
今回、アル君が目覚めたのは、
シエンナの力かもしれないしね。
シエンナの必死の看病が
もしかして神の琴線に触れたのかも。
だから、貴重なアイテムを下賜して
頂けたのかもしれないし」
「姉貴、俺はいいぞ!
アルを兄貴と呼ぶことに抵抗は
少しあるけど、まあ、いいや。
だから、リシェーヌやシエンナに遠慮すんなよ」
ヴェルは少し寂しそうな姉を気遣って、
明るく振舞った。
「あんたは、そんなことを心配するより、
きっちりと魔術院を卒業することを心配しなさい」
その言葉に頭をかかえるヴェルだった。
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