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192.北方戦役2
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弓と魔術が雨あられのごとく、
ダンブル軍へ降り注いだ。
元々、統率の取れていない魔物集団は、
一瞬で大混乱に陥っていた。
矢玉と魔術の餌食になり、
進軍速度は著しく遅れていたが、
砦より尽きる事無く溢れ出てくる魔物の大軍と
蛮族の集団は、着実に王国軍との距離を
詰めていた。
「敵の本軍は、まだ、砦より姿を現さぬか?」
ドレルアンは、声を荒げていた。
「はっ、いまだに魔物と蛮族が溢れ出ています」
街道を埋め尽くすほどの大軍が
あの砦に収容できるはずかない。
ドレルアンは、傍に控える参謀に意見を求めた。
「相手方の意図は、容易に看破できます。
主力を温存して、魔物と蛮族どもで矢玉と魔力を
消費させ、そのまま、乱戦に持ち込み、
恐らく数で押し切ろうとしているのでしょう」
「わかっておる。して、その対策は!」
ドレルアンは、声を荒げた。
現在は、距離を保ちながら、遠距離からの攻撃で
優位に立っているが、矢玉も魔力も
無限でないことは、十分に理解していた。
「ここは、距離を保ちつつ、後退するのが上策。
敵軍の総兵力を見誤りましたな。
乱戦に持ち込まれれば、確実に数で押し切られます」
ドレルアンは、思案した。
恐らく敵軍は、乱戦で出血を強いるのも良し、
王国軍が後退するのも良しとの戦術なのだろう。
とにかく一戦して、王国軍を後退させることが
主目的であり、この北伐で敗戦したと国内外に
声高らかに喧伝することが目的なのだろう。
参謀も同じ意見なのだろう。
「敵軍の策に嵌りましたな。
同じ後退するなら、戦力を温存して、
後退するのが上策かと。
あのような敵軍をいくら消耗させても
打撃は与えられません。
体力を消耗して、引き際を敵の本体に
喰いつかれたそれこそ、兵の損耗が
大きくなります」
ドレルアンの形相は凄まじいものであった。
この北伐にあたって、穴熊砦まで
連戦連勝であったが、つまるところ、
ダンブルの戦略・戦術に嵌ったような形に
なっていた。
最前線では、敵軍との距離が次第に近づいてきた。
「アーロン卿、ここへ退くべきでは?」
レドリアン導師が前線の状況を鑑みて、
再考を促した。
「どうらやそれが良さそうだな。
あれらを相手に損耗しても馬鹿らしい。
退くぞ」
「待ちたまえ、一押しして、戻るべきでしょう。
一戦も交えずでは、王国軍、弱しと喧伝されますわ」
マルーガが異を唱え、ベルスターがそれに唱和した。
アーロンは、黙って、魔物の侵攻を観察していた。
そんな時、本陣より伝令が届いた。
「全軍、後退します。
魔物が前線を埋めている以上、
追撃が鈍いとの判断です。急ぎ準備を」
「了解したと、本陣に伝えよ。
レドリアン導師、最後に一発、
魔物の前線に魔術を放ってくれ。
しんがりは俺が引き受ける。
各々、あの大軍にのみ込まれる前に撤退だ」
レドリアンは頷き、魔術師隊へ向かった。
ダンブル軍へ降り注いだ。
元々、統率の取れていない魔物集団は、
一瞬で大混乱に陥っていた。
矢玉と魔術の餌食になり、
進軍速度は著しく遅れていたが、
砦より尽きる事無く溢れ出てくる魔物の大軍と
蛮族の集団は、着実に王国軍との距離を
詰めていた。
「敵の本軍は、まだ、砦より姿を現さぬか?」
ドレルアンは、声を荒げていた。
「はっ、いまだに魔物と蛮族が溢れ出ています」
街道を埋め尽くすほどの大軍が
あの砦に収容できるはずかない。
ドレルアンは、傍に控える参謀に意見を求めた。
「相手方の意図は、容易に看破できます。
主力を温存して、魔物と蛮族どもで矢玉と魔力を
消費させ、そのまま、乱戦に持ち込み、
恐らく数で押し切ろうとしているのでしょう」
「わかっておる。して、その対策は!」
ドレルアンは、声を荒げた。
現在は、距離を保ちながら、遠距離からの攻撃で
優位に立っているが、矢玉も魔力も
無限でないことは、十分に理解していた。
「ここは、距離を保ちつつ、後退するのが上策。
敵軍の総兵力を見誤りましたな。
乱戦に持ち込まれれば、確実に数で押し切られます」
ドレルアンは、思案した。
恐らく敵軍は、乱戦で出血を強いるのも良し、
王国軍が後退するのも良しとの戦術なのだろう。
とにかく一戦して、王国軍を後退させることが
主目的であり、この北伐で敗戦したと国内外に
声高らかに喧伝することが目的なのだろう。
参謀も同じ意見なのだろう。
「敵軍の策に嵌りましたな。
同じ後退するなら、戦力を温存して、
後退するのが上策かと。
あのような敵軍をいくら消耗させても
打撃は与えられません。
体力を消耗して、引き際を敵の本体に
喰いつかれたそれこそ、兵の損耗が
大きくなります」
ドレルアンの形相は凄まじいものであった。
この北伐にあたって、穴熊砦まで
連戦連勝であったが、つまるところ、
ダンブルの戦略・戦術に嵌ったような形に
なっていた。
最前線では、敵軍との距離が次第に近づいてきた。
「アーロン卿、ここへ退くべきでは?」
レドリアン導師が前線の状況を鑑みて、
再考を促した。
「どうらやそれが良さそうだな。
あれらを相手に損耗しても馬鹿らしい。
退くぞ」
「待ちたまえ、一押しして、戻るべきでしょう。
一戦も交えずでは、王国軍、弱しと喧伝されますわ」
マルーガが異を唱え、ベルスターがそれに唱和した。
アーロンは、黙って、魔物の侵攻を観察していた。
そんな時、本陣より伝令が届いた。
「全軍、後退します。
魔物が前線を埋めている以上、
追撃が鈍いとの判断です。急ぎ準備を」
「了解したと、本陣に伝えよ。
レドリアン導師、最後に一発、
魔物の前線に魔術を放ってくれ。
しんがりは俺が引き受ける。
各々、あの大軍にのみ込まれる前に撤退だ」
レドリアンは頷き、魔術師隊へ向かった。
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