転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

210.閑話 とある女の休日の情景1

熊須 莉々子は、3連休の初日を一日中、
部屋で過ごしていた。
一人暮らしのため、休日は、洗濯に掃除と
それなりに忙しかった。
それらの合間を見て、「ヴェルトール王国戦記」を
プレイしていた。

王国は乱世の様相を呈しており、
今まで以上に盛り上がっていた。
一時は過疎化から閉鎖に向かうのではと
噂されていたが、どうやら最近は盛り返して
来ているようであった。
ヴェルトール王国戦記は、昼頃から上位魔人討伐と
オニヤの出現情報で大いに盛り上がっていた。
無論、莉々子もそのうちの1人であった。
清涼からの希望もあり、オニヤの入手は
諦めるつもりだったが、清涼がどのように
仲間に引き込むか興味があり、盗賊を一人、
こっそり送り込んでいた。

　モニター越しに清涼の策略が
あっけなく潰される一部始終を莉々子は見ていた。
オニヤは5人の男を2度倒した後、
店内をキョロキョロ見回し、伝票を拾うと
そくささと店から出ようとしていた。
HRクラスでありながら、ごく僅かなS級の冒険者の
圧倒的な実力を見せた直後のせこく小賢しい行動に
莉々子は笑ってしまった。
そして、そのまま、口を開けたまま、
間抜けな表情でモニターを莉々子は見つめていた。

盗賊が首根っこを押さえつけられている。

莉々子は焦った。
清涼ほどではないが、莉々子も課金はしていた。
しかし、清涼程にキャラクターを揃えてはいなかった。
ランクHR以上のキャラクターを
無駄にできる程、取り揃えることができないために
各キャラクターをそれなりに成長させていた。

「逃げろ」
莉々子は、短く指示を出した。

盗賊は天啓を受け、数倍の力を得たにも関わらず、
オニヤを振り解くことができなかった。

「何でなんでぇー。逃げて、逃げて」
同じHR、しかも盗賊は天啓の力を受けていた。
彼は神に感謝していた。
数多のHRが一時であるが、神の啓示を受けるが、
それはほんの一時だけであった。

そんな中、彼は長きに渡り、神の恩寵を受けていた。
『おおっ！神よ、神よ。お力を！ありがたき幸せ』
力任せにオニヤを振り解こうとした。

『力では振りほどけぬよ。
ふーむ、余程、神に心酔していると思われますな。
どうしたものかな』
オニヤは盗賊を地面に押さえ付けていた。

「くそっ。単なる興味本位でこんなことに。
降伏して！降伏すれば、死なずに済むはず」

盗賊は夜空を見つめていた。そしてかぶりを振った。

『いやいやいや、ちょっと待って。
盛り上がっているところ、申し訳ないけど、
少し覗いていたからって、殺す訳ないでしょ』
オニヤは呆れたような表情で盗賊を解放した。

『まあ、覗きはあまり良い趣味とは言えませんな。
ここは、一つ何かあれば、お力を借りましょうぞ、神様』

モニター越しにも関わらず、莉々子は、
こくこくと頷いていた。
そして、素早くキーボードを打った。

「頷きなさい」

盗賊は悔しそうに頷いた。
それを見たオニヤは盗賊を解放した。