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232.閑話 とある連休の最終日3

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「おはよう、清涼さん。
普段からお洒落な服装なんですね。
ごめんなさい、ちょっとラフ過ぎました」

「いや、そんなことないですよ。
久々の大学だったんで、少し気合が入り過ぎたかな」
それが嘘なことは彼の表情から明らかであった。
舞い上がり気味の清涼に千晴はくすりと笑い、
行きましょうかと声をかけたが彼は周囲を
きょろきょろと見回していた。

「どうかしました?」

「いや、何か視線を感じない?
周囲の人では無さそうですね。
どこからかじーっと見つめられてる気がしない?」

どうやら清涼も同じことを感じているようだった。
街中を歩く人の興味本位の視線は一時だけであるが、
この纏わりつくような視線はなんだろうと千晴は
不思議に思った。

「まあ、気のせいかな。
同僚と二人っきりで会うからかも。
オフィスラブと勘違いされないか気にし過ぎなのかな」
おーい、そのデートに行くようなお洒落で
気合の入った服装の君がそれ言うと心の中で突っ込む千晴だった。

「うーん、迷惑だったかもしれないけど、
莉々子も呼べばよかったかな」

「いやいや、折角の休日だし、莉々子に悪いよ。
僕はこんな機会でもなければ、母校を訪問するなんてないし、
ちょうどいい機会だったから、いいけどね」

「これはこれは、妄言に付き合わせてしまいまして、
大変申し訳ございませんでした」

大仰に頭を下げる千晴に清涼はあたふたと言い訳を始めた。

千晴は頭をあげると、「そろそろ、行きませんか」と声をかけた。

清涼は頷くと二人は大学に向かって歩き始めた。

私立翔陵国際大学、その正門は、その規模相応に大きかった。
両脇を固める数百本の桜並木が
春には、咲き乱れ、
夏には、道行く学生に木陰を提供し、
秋には、紅葉が彩り、
冬には、枝先の芽の息吹が春を知らせていた。

「うーん、歩くだけでも気持ちいいね」
千晴が背伸びをして、大きな欠伸をした。

「確かにね。これはここの大学の自慢の一つだよ」
千晴につられた清涼も背伸びをして、大きな欠伸をした。

「佐藤さん、その鈴木誠一という人物を調べる前に
学生食堂に寄っていかない?」

「えっ、学食?いいけど、開いてるの?」
食事には早いが、ここの学生食堂にも興味が
あったために千晴は了解した。

「まあね、地域交流のようなことや部活動の学生が
食事を取るために14時頃までは確か開いているかな。
もし可能なら、そこでヴェルトール王国で
そのアルフレートから、もう少し情報を得て貰えないかな」
清涼の言っていることは最もだと思い、歩きながら、
どういった情報を得るべきか彼と話し合った。
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