転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組！だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業？それとも社畜？誰か助けて

246.出陣6

　エスターライヒ家の騎士たちの鎧と四肢の肉片が
そこら中に飛散した。そんなことが幾度も続いていた。

ヴェルは目を背けた。
「ヴェル、シエンナ、行こう！
ヴェル、すまないがそこに向かって」
誠一は、魔術のサポートなしには戦うことが
困難な敵がそこにいると判断した。
本職の魔術師たちは本陣の後方におり、
エスターライヒ家の騎士たちが魔術のサポートを
受けることは難しかった。

「恐らく魔人がいるわね。
アル、こう言ったら悪いけど、サポートがあったとしても
エスターライヒ家の騎士団では倒せないわよ」
エスターライヒ家の騎士団員の多くのランクは、
R(レア)もしくはN(ノーマル)で騎士の称号を
持った者たちであった。
厳しい訓練を重ねた者たちではあったが、
如何せん基本能力が違い過ぎた。
ドレルアンの精鋭騎士隊か本国の近衛騎士団でなければ、
相手になりそうになかった。

「そんなこと、わかってる！
僕らが徒歩で本陣に戻るより、騎士団の誰かが
騎馬で本陣に救援を求めた方が早い。
その援護をするだけだ」
声を荒げて誠一は続けた。
「本陣の精鋭か優秀な冒険者でなければ、
魔人を倒すのは無理だ。
それまでの時間稼ぎができればいいんだ！行こう」
誠一が更に続けようとしたが、
ヴェルがそれを遮った。
「アル、もういい。分かった。
兎に角、向うんだな。最短を進むぞ、ついて来い」

「あーもう、付き合うわよ。
補助魔術で強化を二人とも忘れない」

二人は言いたいことを言い終えると、
補助魔術を急いで展開した。
先日、プレーヤーより貰った魔力を
回復する魔石を握りしめると、素早く行動に移った。

　誠一たち3人は、魔人と相対する最前線付近に到着した。
アーロンは馬上でその場に留まっていた。
魔人より放たれる攻撃がアーロンに被弾する前に
エスターライヒ家の騎士たちは死を厭わずに
身を挺して、彼を守った。
無論、騎士は破裂して粉々になっていた。

「おい、あれって！アルの親父だろ。
もしかして動けないのか。助けに入るぞ」
ヴェルは叫び、突撃をしようとしたが、
誠一がそれを止めた。
そして、誠一は、アーロンを守ろうとする騎士の前に
防御魔術を展開した。
展開された防御壁は、魔人の一撃で粉砕さて、
そのまま、騎士を吹き飛ばした。
幸にも騎士は一命を取り留めたようだった。
誠一は急ぎ、アーロンに近づき、話し掛けた。
「父上、動けそうですか？補助魔術と掛けます」
アーロンを父と呼ぶには違和感しかなかったが、
それ以外に呼びようが誠一にはなかった。

「アルフレートか、要らざることをするな。下がっていろ」
二人の間で短い会話が交わされている間に
一命を取り留めた騎士が立ち上がると
エスターライヒ家の騎士たちには歓声が沸き上がっていた。

「おおーアルフレート様だ！
アルフレート様がエスターライヒ家に帰還したぞー」

「アルフレート様が我々を救ってくださったぞ」

「アルフレート様万歳、万歳」

歓声は雄叫びへと変わり、悲痛な表情は
意を決した表情へと変わり、周囲の魔物たちを
再び圧倒し始めた。
誠一は、アルフレート・フォン・エスターライヒという
男の持っていた魅力に驚きを感じえなかった。