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339.竜公国19
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「うーむ」
グロウが居間で椅子に座ると嘆息した。
薦められて、誠一たちも椅子に座った。
「どうしたものか、このまま公国の宿泊施設に
泊まらせるべきか否か、困った」
うーんうーんと頭を抱えるグロウであった。
特に何かを強要する訳でもなく、本当に困った様子であった。
「おい、アルフレート。おまえは何か良案を持っているだろう。言え」
無論、誠一たちが自主的にチェックアウトして、
適当な宿泊施設に移動するのがグロウにとっては一番の良案であったが、
それを実行するには誠一の腹の虫が収まらなかった。
グロウというより竜公国にヴェルも業腹のようで、押し黙っていた。
ロジェも内心は竜公国のやり様に不快であったが、二人の様子を見て、
ため息一ついて話始めた。
「確かエドワード陛下直々の言葉ではなかったな。
グロウ殿が陛下の言葉を又聞きして、勘違いしたのだろう。
明日、宿を引き払うとしよう」
あからさまに不機嫌な態度の二人に焦っていたグロウは、
ロジェの言葉が神の啓示のごとく感じたようであった。
「そっそうなんだ。俺が聞き違いしていたんだ。
そうに違いない。明日までだったんだ」
自分を納得させるようにグロウが同じような事を
念仏のように繰り返していた。
ロジェは収まりのつかない二人を納得させるために話を続けた。
「そうだな。明日、宿をでるとしよう。
グロウ殿、我々は商人としてこの国に来ている。
当然、それなりに売り物もある。
これが売れないことには次の宿に支払う金にも困る有様で。
どうだろう竜公国で購入して貰えないだろうか?」
グロウの念仏がぴたりと止んだ。
「ロジェ、俺は駆け引きが苦手だ。
そこの二人と違っておまえは既に俺の性分が分かっているだろう。
宿を出る代わりに商品を高く買い取れと言っているんだよな。
合っているか?」
ロジェは曖昧に頷くだけで、それ以上、何も言わなかった。
グロウは、シュリョリョ、シュリョリョと喉を鳴らした。
「覚醒したての竜人を一人、倒したくらいで
あまり調子に乗らないことだ。
アレを基準に竜人を考えないことだな」
誠一はどう受け取れば、そういう話になるのか
ちょっとグロウの思考が理解できなかった。
それは、ヴェルも同様のようであった。
「グロウ殿、そういうつもりはない。
しかし、本来は受ける必要のない争いで我々の仲間が怪我を負った」
「ふん、それは貴様らの知恵が足りないからだろう。
そして、力なき者が対等に交渉しようと思うのがおこがましいわ。
今、ここで殺してもいいんだぞ」
グロウの瞳孔が目の中心に集約して、ロジェを睨みつけていた。
全身から発するグロウの殺気に3人は緊張した。
グロウが居間で椅子に座ると嘆息した。
薦められて、誠一たちも椅子に座った。
「どうしたものか、このまま公国の宿泊施設に
泊まらせるべきか否か、困った」
うーんうーんと頭を抱えるグロウであった。
特に何かを強要する訳でもなく、本当に困った様子であった。
「おい、アルフレート。おまえは何か良案を持っているだろう。言え」
無論、誠一たちが自主的にチェックアウトして、
適当な宿泊施設に移動するのがグロウにとっては一番の良案であったが、
それを実行するには誠一の腹の虫が収まらなかった。
グロウというより竜公国にヴェルも業腹のようで、押し黙っていた。
ロジェも内心は竜公国のやり様に不快であったが、二人の様子を見て、
ため息一ついて話始めた。
「確かエドワード陛下直々の言葉ではなかったな。
グロウ殿が陛下の言葉を又聞きして、勘違いしたのだろう。
明日、宿を引き払うとしよう」
あからさまに不機嫌な態度の二人に焦っていたグロウは、
ロジェの言葉が神の啓示のごとく感じたようであった。
「そっそうなんだ。俺が聞き違いしていたんだ。
そうに違いない。明日までだったんだ」
自分を納得させるようにグロウが同じような事を
念仏のように繰り返していた。
ロジェは収まりのつかない二人を納得させるために話を続けた。
「そうだな。明日、宿をでるとしよう。
グロウ殿、我々は商人としてこの国に来ている。
当然、それなりに売り物もある。
これが売れないことには次の宿に支払う金にも困る有様で。
どうだろう竜公国で購入して貰えないだろうか?」
グロウの念仏がぴたりと止んだ。
「ロジェ、俺は駆け引きが苦手だ。
そこの二人と違っておまえは既に俺の性分が分かっているだろう。
宿を出る代わりに商品を高く買い取れと言っているんだよな。
合っているか?」
ロジェは曖昧に頷くだけで、それ以上、何も言わなかった。
グロウは、シュリョリョ、シュリョリョと喉を鳴らした。
「覚醒したての竜人を一人、倒したくらいで
あまり調子に乗らないことだ。
アレを基準に竜人を考えないことだな」
誠一はどう受け取れば、そういう話になるのか
ちょっとグロウの思考が理解できなかった。
それは、ヴェルも同様のようであった。
「グロウ殿、そういうつもりはない。
しかし、本来は受ける必要のない争いで我々の仲間が怪我を負った」
「ふん、それは貴様らの知恵が足りないからだろう。
そして、力なき者が対等に交渉しようと思うのがおこがましいわ。
今、ここで殺してもいいんだぞ」
グロウの瞳孔が目の中心に集約して、ロジェを睨みつけていた。
全身から発するグロウの殺気に3人は緊張した。
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