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353. 交流8
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突然、知らない名前と言葉が出て来て、アミラはポカンとしていた。
その人物や言葉の意味について考えることを止めてアミラは話を続けた。
「まあ、盗人猛々しいとはこのことです」
二人の応酬は終わることを知らぬ勢いであったために誠一が話題を転じた。
「それにしてもよく売れるな。
こんな剣や防具、街の武具屋でも売っている気がするけど」
「あーそれはですね。相場よりかなり安いです。
それと多分ですが、あなたと接触を図って、
人なりを知りたい方々も一定数いるからです」
アミラの説明に頷く誠一であった。
誠一にとっては売れるに越したことはないため、
特に気にしなかった。
強いて言えば、もう少し価格を釣り上げておけば良かったと
後悔した程度であった。
「そろそろ、お暇するです。また、明日もここにいるですか?」
誠一に代わってヴェルが答えた。
「さあな、明日は別のことをしてるかもしれないな」
「わかりました。では宿の方へ伺いますので、よろしくです」
誠一やヴェルが同行を了解した訳でもなかったが、
どうやらついてくるつもりであった。
軽く会釈をすると、アミラは突然、現れた者たちに囲まれて
帰っていった。
アミラの姿が完全に見えなくなると露骨に誠一たちへ
視線を送る柄の悪い男どもがいた。
誠一とヴェルは気にせずに商売を続けた。
「よしっ!今日はこのくらいで帰るとするか!
アミラがいなくても売れたな」
どうやら本気でヴェルはアミラの魅力で物が売れていたと
思っていたらしい。
「いやいや、ヴェル。アミラと僕の会話を聞いていたでしょ。
最初は面倒事に関わりたくないから、客が近づかなかっただけ。
その後は安さと僕らへの観察でしょ」
「そうか、アルがそう言うならそうなんだろうな。
まあ、いいや。兎に角、この勢いで明日も売りまくるぞ。
それよりも不愉快な視線だな。アル、どうする?」
商品を纏めながら、今日の売り上げにご機嫌であったが、
物騒なことを主張するヴェルであった。
「いまのところ、実害が無いから、無視しとこう。
その内、接触を図ってくるさ」
二人はご機嫌で宿に戻った。
それから二日ほどヴェルと誠一のコンビは市場で
品物を売り捌いていた。
何故かアミラも彼等と一緒に品物を売り捌いていた。
「こりゃあ、仕入れに金がかかってないから、丸儲けだな」
「命を担保に集めた品々にしては、少し安くし過ぎたかな」
誠一はヴェルを窘めた。しかし、ヴェルはそんなことを
気にせずにご機嫌で金を数えていた。その隣で誠一が帳簿をつけていた。
アミラはにこやかな表情で客の値引き交渉をはじき返していた。
客足が鈍くなったタイミングでヴェルが昼飯を買ってきた。
「天候にも恵まれたし、集めた品もかなり捌けたし。明日で終わりだな」
もぐもぐと飯を食べながら、ヴェルが話した。
「そうなのですか?次はどこにむかうですか?」
ぱくぱくと飯を食べながら、アミラが尋ねた。
「おう、グレートウォールでひと稼ぎする予定だよな、アル!」
誠一は、行儀の悪い二人を真似することはなかった。
「取り敢えず、二人とも食べながら話すのは止めてね。
特にアミラ、気を付ける事、いいね。
一応、予定ではグレートウォールで売れそうなものを
ここで買い付けてから、向うつもり」
少ししょんぼりするアミラだった。
「仕方ないです。明日で終わりです。明日も手伝っていいですか?」
「それはもちろん!アミラ、終わったら、明日は打ち上げだ!
僕らの宿でよければ、一緒に食事をしよう」
誠一の提案にはにかみながら、頷くアミラであった。
その人物や言葉の意味について考えることを止めてアミラは話を続けた。
「まあ、盗人猛々しいとはこのことです」
二人の応酬は終わることを知らぬ勢いであったために誠一が話題を転じた。
「それにしてもよく売れるな。
こんな剣や防具、街の武具屋でも売っている気がするけど」
「あーそれはですね。相場よりかなり安いです。
それと多分ですが、あなたと接触を図って、
人なりを知りたい方々も一定数いるからです」
アミラの説明に頷く誠一であった。
誠一にとっては売れるに越したことはないため、
特に気にしなかった。
強いて言えば、もう少し価格を釣り上げておけば良かったと
後悔した程度であった。
「そろそろ、お暇するです。また、明日もここにいるですか?」
誠一に代わってヴェルが答えた。
「さあな、明日は別のことをしてるかもしれないな」
「わかりました。では宿の方へ伺いますので、よろしくです」
誠一やヴェルが同行を了解した訳でもなかったが、
どうやらついてくるつもりであった。
軽く会釈をすると、アミラは突然、現れた者たちに囲まれて
帰っていった。
アミラの姿が完全に見えなくなると露骨に誠一たちへ
視線を送る柄の悪い男どもがいた。
誠一とヴェルは気にせずに商売を続けた。
「よしっ!今日はこのくらいで帰るとするか!
アミラがいなくても売れたな」
どうやら本気でヴェルはアミラの魅力で物が売れていたと
思っていたらしい。
「いやいや、ヴェル。アミラと僕の会話を聞いていたでしょ。
最初は面倒事に関わりたくないから、客が近づかなかっただけ。
その後は安さと僕らへの観察でしょ」
「そうか、アルがそう言うならそうなんだろうな。
まあ、いいや。兎に角、この勢いで明日も売りまくるぞ。
それよりも不愉快な視線だな。アル、どうする?」
商品を纏めながら、今日の売り上げにご機嫌であったが、
物騒なことを主張するヴェルであった。
「いまのところ、実害が無いから、無視しとこう。
その内、接触を図ってくるさ」
二人はご機嫌で宿に戻った。
それから二日ほどヴェルと誠一のコンビは市場で
品物を売り捌いていた。
何故かアミラも彼等と一緒に品物を売り捌いていた。
「こりゃあ、仕入れに金がかかってないから、丸儲けだな」
「命を担保に集めた品々にしては、少し安くし過ぎたかな」
誠一はヴェルを窘めた。しかし、ヴェルはそんなことを
気にせずにご機嫌で金を数えていた。その隣で誠一が帳簿をつけていた。
アミラはにこやかな表情で客の値引き交渉をはじき返していた。
客足が鈍くなったタイミングでヴェルが昼飯を買ってきた。
「天候にも恵まれたし、集めた品もかなり捌けたし。明日で終わりだな」
もぐもぐと飯を食べながら、ヴェルが話した。
「そうなのですか?次はどこにむかうですか?」
ぱくぱくと飯を食べながら、アミラが尋ねた。
「おう、グレートウォールでひと稼ぎする予定だよな、アル!」
誠一は、行儀の悪い二人を真似することはなかった。
「取り敢えず、二人とも食べながら話すのは止めてね。
特にアミラ、気を付ける事、いいね。
一応、予定ではグレートウォールで売れそうなものを
ここで買い付けてから、向うつもり」
少ししょんぼりするアミラだった。
「仕方ないです。明日で終わりです。明日も手伝っていいですか?」
「それはもちろん!アミラ、終わったら、明日は打ち上げだ!
僕らの宿でよければ、一緒に食事をしよう」
誠一の提案にはにかみながら、頷くアミラであった。
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