転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた

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419.代理戦9

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「ったく何なんだよ。竜が暴れ出すとか」
ヴェルは愚痴を零すと、バーバラの顔の横へ
ハルバートを突き出して、竜の爪を分岐する穂先で上手く絡めた。
無論、竜の力に敵う訳もなく後方へ吹き飛ばされて、転がっていた。

「よくやった」

ブラナスがバーバラと竜の間に割って入り、
次の攻撃に備えたが、竜はおろおろして落ち着きが
無くなっていた。

「おい、姫さん。竜舎に戻るように竜へ指示しろ。
今なら、言うことを聞くだろうよ」

混乱の極致であったバーバラであったが、
とにかくブラナスの言う通りに竜へ指示した。
おろおろしつつも竜は来た時と同じように
空を飛翔して練兵場を去った。

数十発の水弾が水龍に被弾していた。
被弾した水弾を吸収しながら更に巨大化していたが
前進は止まり、その場に留まっていた。
水龍は何とかその形を保っていた。

「ハアハア」
ザガナスの呼吸は激しく乱れていた。
しかし、魔術の詠唱が中断されていないのは
流石に賢者の称号を得る者だと、
魔術に知見のある者たちは感心していた。

一方のシエンナは詠唱など全くしておらず、
余裕の表情であった。
彼女の頭上に展開されている水球は水弾を撃ち込む度に
小さくなっていた。逆に水弾を取り込む水龍は
益々大きくなっていった。

玉の様な汗を額ににじませ、必死に詠唱を続けるザガナスであった。

「ふううっ。そろそろ〆かな。
ヴェルの方も片付いたようだしね」
シエンナがザガナスに聞える様に大声で呟いた。
周囲を囲む魔術師たちは、巨大になっていく水龍と
段々と小さくなる水球を比べて、シエンナの強がりを冷笑した。

「フィールド展開、水触探知」

シエンナを中心に水の触手がうねうねと広がった。
練兵場がどよめいた。相手が見えているこの場で探知魔術の一種を
展開するとは、魔力の無駄、つまりアホウの極致であった。

ザガナスの表情が曇った。
眼前の相手は、無詠唱で相当高度な魔術を扱う者であった。
それが敢えて、詠唱を行使して、しかも聞こえよがしに
魔術を詠唱した。何か策があるのではと疑った。

「すっ水龍よ、奴を喰らいつくせ」
全魔力を込めて、水龍をコントロールするザガナスであった。
巨大化した水龍はのろのろと威圧するようにシエンナへ向けて動き出した。
その圧倒的な姿に周囲からは感嘆の声が上がった。

「ふっ。魔力の無駄遣いもいいところね。
ヴェルのフレイムチャージとさして変わらぬこけおどし」
ニヤリと唇を釣り上げるシエンナにザガナスは
反応することもできない程に集中していた。
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