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420.代理戦10
しおりを挟むしかし、外野は激しく反応した。
「シエンナ。てめー俺の必殺の一撃をコケ脅しとか」
「あれを見て強がるとか、これだからプライドの高い魔術院の奴らは」
「ふん、ザガナス様の術が炸裂して、無事でいられるわけなだろうに」
一部、 味方かと思しき者からの怒声が混じっていたが、シエンナは全く動じていなかった。
「ぐぼう。げぼう。うげげっ」
水龍が突然、その形を崩し、単なる水の塊として地に降り落ちた。そして練兵場を水浸しとしていた。腹を押えて両膝をついていた。
練兵場にいたロジェ、キャロリーヌ、サリナ、ヴェル、シエンナ、そしてブラナス、バーバラ、ザガナスも水でびっしょりとなっていた。
「シエンナ、ったく。少しは考えろよな。びしょびしょになっちまったじゃねえかよ」
周囲の弓兵や魔術師たちからは歓声の声が上がっていた。水の滴るキャロリーヌに興奮してのことであった。
「クハッ、クハハハッ。こりゃいい、最高だよ。まさか魔術師が水の触手でタコ殴りとか。その上、この水溜まり。笑えるわ」
ブラナスが高笑いしていた。
「おい、皇族にこのようなことをしてのう、ただで済むと思うなよ」
バーバラが水を滴らせながら、シエンナに向けて怒鳴りつけていた。
ザガナスはまだ、立ち上がれないのか蹲っていた。
ブラナスの高笑いがぴたりと止んだ。
「おいおい、すむんだよ。痛み分けで終わりだ。我儘を言うなら、俺を敵に回すことになるぞ」
「ちっ調子に乗りおって。ザガナス、行くぞ。立てい」
「ううっすみません、お腹が痛くて」
バーバラは弓兵や魔術師にザガナスを支える様に怒鳴りつけると、彼等を一睨みして、練兵場を去った。
「ふう、さて我々も一旦、宿に戻ろうかな。まさかの結果であるが、笑い話で終わりそうで何よりだ」
ずぶ濡れのロジェの一言に全員がため息混じりに頷いた。
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