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514.竜公国の陣にて
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ヴェルは竜公国軍の駐屯地で臥せっていた。
全身の至る所に痛みを感じ、少し動くだけでも激痛が走った。
昨日よりも痛みは激しくなっていた。
側にはヴェルの汗を甲斐甲斐しく拭うアミラがいた。
そしてそれを不快気に見ているグロウがいた。
ヴェルは苦痛を感じながらもアルフレートのことを考えていた。
あの男は、補助魔術の重ね掛け・天啓・コールバーサーク
・アイテムによる強化で昨日の自分以上に肉体を強化して、
剣豪鬼谷と戦っていたはずだ。
下手すれば肉体がズタズタになっていても
おかしくないはずであった。
当然、今の自分以上の痛みを感じていたはずだが、
再会したときに泣き言一つ言わなかった。
「チッ、くそが」
自然とヴェルは舌打ちした。それだけでも痛みは増した。
「余計なことを考えずにおとなしく寝ているです」
「そういう訳にもいかねえよ。
俺以上の痛みに耐え切った男がいると思うと
居ても立っても居られないんだよ。
俺はこのくらいで寝転がっている訳にはいかないんだ」
アミラは無言でヴェルの胸辺りを指で強く突っついた。
「うぎゃー」
ヴェルは叫ぶとそのまま意識を失った。
「誰と比較してのことかはわかりますが、今は体力の回復に努めるです」
アミラはそう呟くとヴェルの食事を準備するために天幕を離れた。
アミラが食事を準備して運んでくる頃にヴェルは目を覚ました。
見開いたヴェルの瞳に入ったのは、両手を組んで座っているグロウであった。
瞬きもせずにグロウの瞳はヴェルを映していた。
ぐっ気まずいと思うもヴェルは何と話し掛けていいものやらと
思案していた。
やましいことは一切無い筈だが、ヴェルは額に汗を流していた。
よく見ると何故かグロウも額に汗をながしていた。
時間が経てば経つほどにお互いに牽制しあってしまい、
膠着状態になっていた。
天幕が開かれる音がした。
「アミラっ」
「アミラか」
二つの声が重複した。
ヴェルとグロウの視線はアミラの方へ向かった。
しかし、アミラの視線はヴェルを映すのみであった。
アミラは慌てて、ヴェルに近づき額の汗を拭った。
「一体、どうしたですか?」
グロウの方をキッと睨むアミラであった。
グロウは自分で汗を拭っていた。
「何もしておらぬ。そいつが勝手に汗を流し出した。
そうか食事の時間か、俺も食事を取ってくる」
アミラの追及を避ける様にそくささとグロウは天幕を出て行った。
邪魔者が去った後、アミラは動けないヴェルの食事を
甲斐甲斐しく手伝い始めた。
「あちっ」
一口目でヴェルがそう言うと、
アミラは食料に息を吹きかけて少し冷ましてから
再びヴェルの口に含ませた。
3口、4口とヴェルは食べた。その間、2人は無言であった。
食べ終えたヴェルは何か言わねばと思ったが、
アルフレートのような世辞が思い浮かばずに頭を悩ませた。
結果、ヴェルはありきたりな言葉を伝えた。
「アミラ、おいしかったよ。ありがとう」
ヴェルの真摯な表情を見て、アミラはその言葉をそのまま受けいれた。
アミラの表情が嬉しそうでヴェルはほっとした。
「上手い言葉が見つからずに悪いな。
アルみたいに咄嗟にそういうのが出てこないんだよな」
ヴェルはすまなそうな表情だった。
全身の至る所に痛みを感じ、少し動くだけでも激痛が走った。
昨日よりも痛みは激しくなっていた。
側にはヴェルの汗を甲斐甲斐しく拭うアミラがいた。
そしてそれを不快気に見ているグロウがいた。
ヴェルは苦痛を感じながらもアルフレートのことを考えていた。
あの男は、補助魔術の重ね掛け・天啓・コールバーサーク
・アイテムによる強化で昨日の自分以上に肉体を強化して、
剣豪鬼谷と戦っていたはずだ。
下手すれば肉体がズタズタになっていても
おかしくないはずであった。
当然、今の自分以上の痛みを感じていたはずだが、
再会したときに泣き言一つ言わなかった。
「チッ、くそが」
自然とヴェルは舌打ちした。それだけでも痛みは増した。
「余計なことを考えずにおとなしく寝ているです」
「そういう訳にもいかねえよ。
俺以上の痛みに耐え切った男がいると思うと
居ても立っても居られないんだよ。
俺はこのくらいで寝転がっている訳にはいかないんだ」
アミラは無言でヴェルの胸辺りを指で強く突っついた。
「うぎゃー」
ヴェルは叫ぶとそのまま意識を失った。
「誰と比較してのことかはわかりますが、今は体力の回復に努めるです」
アミラはそう呟くとヴェルの食事を準備するために天幕を離れた。
アミラが食事を準備して運んでくる頃にヴェルは目を覚ました。
見開いたヴェルの瞳に入ったのは、両手を組んで座っているグロウであった。
瞬きもせずにグロウの瞳はヴェルを映していた。
ぐっ気まずいと思うもヴェルは何と話し掛けていいものやらと
思案していた。
やましいことは一切無い筈だが、ヴェルは額に汗を流していた。
よく見ると何故かグロウも額に汗をながしていた。
時間が経てば経つほどにお互いに牽制しあってしまい、
膠着状態になっていた。
天幕が開かれる音がした。
「アミラっ」
「アミラか」
二つの声が重複した。
ヴェルとグロウの視線はアミラの方へ向かった。
しかし、アミラの視線はヴェルを映すのみであった。
アミラは慌てて、ヴェルに近づき額の汗を拭った。
「一体、どうしたですか?」
グロウの方をキッと睨むアミラであった。
グロウは自分で汗を拭っていた。
「何もしておらぬ。そいつが勝手に汗を流し出した。
そうか食事の時間か、俺も食事を取ってくる」
アミラの追及を避ける様にそくささとグロウは天幕を出て行った。
邪魔者が去った後、アミラは動けないヴェルの食事を
甲斐甲斐しく手伝い始めた。
「あちっ」
一口目でヴェルがそう言うと、
アミラは食料に息を吹きかけて少し冷ましてから
再びヴェルの口に含ませた。
3口、4口とヴェルは食べた。その間、2人は無言であった。
食べ終えたヴェルは何か言わねばと思ったが、
アルフレートのような世辞が思い浮かばずに頭を悩ませた。
結果、ヴェルはありきたりな言葉を伝えた。
「アミラ、おいしかったよ。ありがとう」
ヴェルの真摯な表情を見て、アミラはその言葉をそのまま受けいれた。
アミラの表情が嬉しそうでヴェルはほっとした。
「上手い言葉が見つからずに悪いな。
アルみたいに咄嗟にそういうのが出てこないんだよな」
ヴェルはすまなそうな表情だった。
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