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546.大会戦18
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ヴェルトール王国軍本陣では、魔術院学院長である
ファウスティノ・ソリベス・セドゥ、ルメディア教司祭エヴァニア、
宮廷魔術師第一席『王宮書庫のアーカイブ』
と呼ばれるジルベルトール・カルザティ、
そして伯爵であるアーロン・フォン・エスターライヒが卓を囲んでした。
「流石はレドリアン導師と言ったところでしょう。
隙を見つけるのは至難の業でした。
まあ、しかし正面の反乱軍の魔道師団は無力しました。
レドリアン導師も魔力が枯渇して、大規模な魔術を展開するのは
苦しいでしょう。あの調子では魔石も使い切っているかと。
私の本日の仕事はこれで終いです。うー本読みたい」
カルザティは両手を大きく伸ばしで背筋を伸ばした。
まるでここが戦場あることを感じさせぬ仕草であった。
「さて、左翼の我らが傭兵団は壊滅状態であったな。
確かアルフレート君もそこで参戦していたはず」
ファウスティノは、誠一に女王より下賜された鎧が
どこにあるか眼前の水晶球に映し出される風景で確認をした。
鎧には位置情報を示す魔石が他の魔石に混じって埋め込まれていた。
「これはまあ、大胆不敵と言うか何と言うか。
豪胆というより無謀な行動じゃないかねぇ。
さて、ファウスティノどうするかね」
エヴァニアの言葉にファウスティノは目を細めて水晶を凝視した。
恐らくダンブルがいる本陣付近であることは分かった。
しかしひと悶着も起こさずに敵陣深くまで潜り込めるものだろうか。
裏切りかもしくは裏切る振りをしたのか、ファウスティノの眉間に
自然と皺がよった。
「放置しておけば良かろう。
裏切ったにせよ裏切る振りをしたにせよ少数で敵陣に
堂々と潜り込むなど正気の沙汰ではない。捨て置けばよい」
アーロンは表情一つ崩さずに言った。
「まあまあ、アーロン殿。そう言うな。
如何なる理由か知らぬが廃嫡したとしても
貴殿の息子であることには違いがあるまい。
それに私の離れた後輩でもありますし。
ファウスティノ先生、此処は動かれては。全く本読みたい」
カルザティの言葉にファウスティノは何の反応も示さなかった。
アーロンは苦々しい表情であった。
「ファウスティノ、私をあそこへ飛ばしなさい。
この程度の距離なら一人や二人、転送陣の応用で何とかなるでしょう。
リシェーヌが目覚めたとき、あの者たちがいなければ、
不憫でしょうがない」
「リシェーヌが目覚める可能性は限りなく低い。
そしてここを動くのは女王の意に反する」
ファウスティノが重々しく答えた。
アーロンはそれが至極当然という風に頷いていた。
「教育者が生徒の無限の可能性を否定するかねぇ。世も末だ。
ファウスティノ、主はそこに畏まって座っていればいい。
私は行くから飛ばせ。これはお願いではないぞ」
一人は感情を押し殺し、一人は感情を爆発させて、火花を散らした。
一発触発の事態であったが、ファウスティノが折れた。
「ふむ、歳は取りたくないものだ。
どうにも常識が行動を妨げて、動くに理由を付けようとする故に
判断が遅れてしまうのう。
カルザティ、すまぬがバリーシャに伝えておいてくれぬか。
アルフレート救出に動くとな。戦況は心配の必要なし。
この戦局を見て、エドワードは点数稼ぎのために
賊軍の左翼へ喰いついて、アリバイ作りに励むじゃろうしな」
アーロンが慌てて、両者の行動を止めようとしたが、既に遅し。
言葉のみが卓に響きわたり、エヴァニアとファウスティノはその場から消えた。
「ふーめんどい仕事が残りました。
バリーシャ女王に伝えるとしますか。
あー憂鬱になりますな。本を読む気力すら奪われましたよ」
ぶつぶつと愚痴を絶え間なく言うカルザティだが、
覚悟を決ると水晶球に向かって魔術を唱えた。
ファウスティノ・ソリベス・セドゥ、ルメディア教司祭エヴァニア、
宮廷魔術師第一席『王宮書庫のアーカイブ』
と呼ばれるジルベルトール・カルザティ、
そして伯爵であるアーロン・フォン・エスターライヒが卓を囲んでした。
「流石はレドリアン導師と言ったところでしょう。
隙を見つけるのは至難の業でした。
まあ、しかし正面の反乱軍の魔道師団は無力しました。
レドリアン導師も魔力が枯渇して、大規模な魔術を展開するのは
苦しいでしょう。あの調子では魔石も使い切っているかと。
私の本日の仕事はこれで終いです。うー本読みたい」
カルザティは両手を大きく伸ばしで背筋を伸ばした。
まるでここが戦場あることを感じさせぬ仕草であった。
「さて、左翼の我らが傭兵団は壊滅状態であったな。
確かアルフレート君もそこで参戦していたはず」
ファウスティノは、誠一に女王より下賜された鎧が
どこにあるか眼前の水晶球に映し出される風景で確認をした。
鎧には位置情報を示す魔石が他の魔石に混じって埋め込まれていた。
「これはまあ、大胆不敵と言うか何と言うか。
豪胆というより無謀な行動じゃないかねぇ。
さて、ファウスティノどうするかね」
エヴァニアの言葉にファウスティノは目を細めて水晶を凝視した。
恐らくダンブルがいる本陣付近であることは分かった。
しかしひと悶着も起こさずに敵陣深くまで潜り込めるものだろうか。
裏切りかもしくは裏切る振りをしたのか、ファウスティノの眉間に
自然と皺がよった。
「放置しておけば良かろう。
裏切ったにせよ裏切る振りをしたにせよ少数で敵陣に
堂々と潜り込むなど正気の沙汰ではない。捨て置けばよい」
アーロンは表情一つ崩さずに言った。
「まあまあ、アーロン殿。そう言うな。
如何なる理由か知らぬが廃嫡したとしても
貴殿の息子であることには違いがあるまい。
それに私の離れた後輩でもありますし。
ファウスティノ先生、此処は動かれては。全く本読みたい」
カルザティの言葉にファウスティノは何の反応も示さなかった。
アーロンは苦々しい表情であった。
「ファウスティノ、私をあそこへ飛ばしなさい。
この程度の距離なら一人や二人、転送陣の応用で何とかなるでしょう。
リシェーヌが目覚めたとき、あの者たちがいなければ、
不憫でしょうがない」
「リシェーヌが目覚める可能性は限りなく低い。
そしてここを動くのは女王の意に反する」
ファウスティノが重々しく答えた。
アーロンはそれが至極当然という風に頷いていた。
「教育者が生徒の無限の可能性を否定するかねぇ。世も末だ。
ファウスティノ、主はそこに畏まって座っていればいい。
私は行くから飛ばせ。これはお願いではないぞ」
一人は感情を押し殺し、一人は感情を爆発させて、火花を散らした。
一発触発の事態であったが、ファウスティノが折れた。
「ふむ、歳は取りたくないものだ。
どうにも常識が行動を妨げて、動くに理由を付けようとする故に
判断が遅れてしまうのう。
カルザティ、すまぬがバリーシャに伝えておいてくれぬか。
アルフレート救出に動くとな。戦況は心配の必要なし。
この戦局を見て、エドワードは点数稼ぎのために
賊軍の左翼へ喰いついて、アリバイ作りに励むじゃろうしな」
アーロンが慌てて、両者の行動を止めようとしたが、既に遅し。
言葉のみが卓に響きわたり、エヴァニアとファウスティノはその場から消えた。
「ふーめんどい仕事が残りました。
バリーシャ女王に伝えるとしますか。
あー憂鬱になりますな。本を読む気力すら奪われましたよ」
ぶつぶつと愚痴を絶え間なく言うカルザティだが、
覚悟を決ると水晶球に向かって魔術を唱えた。
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