555 / 719
547.大会戦19
しおりを挟む
グレイガー皇太子率いる軍とバリーシャ率いる近衛兵団は
激しく剣戟を交えていた。
軍を指揮していたバリーシャはカルザティから
ファウスティノの件の連絡を受けた。
その瞬間、彼女の紅い豪奢な髪がひときわ激しく燃え上がったように
周囲の兵たちには見えた。
「やってくれたな、アルフレート!」
絞り出すようにそれだけをバリーシャは吐き出した。
バリーシャの周りでは、炎の精霊たちが彼女を焚きつけるように
踊り狂っていた。
炎の精霊を纏ったバリーシャは、凄まじい怒気を発した。
「踊れ踊れ踊り狂え精霊たちよ。
燃やせ燃やせ、全てを灰燼に帰せ。
炎の踊り子たちよ、我に纏え!
全軍に告ぐ。目の前の雑魚どもを速攻で叩き潰せ。
反乱軍の首魁ダンブルの首を獲るのは我なり」
バリーシャが率いる近衛兵団は、凄まじい突撃を繰り返して
一気にダンブルの着座する本陣を目指した。
とばり一枚を隔てて、ダンブルをはじめとした反乱軍の首脳部が
無駄な議論を戦わせていた。
それを一段高い場所から意見するでもなくダンブルが
眠たげなとろんとした瞳でぼんやりと見ていた。
「火急の伝令にて、失礼します。
マシュー殿が左翼の状況について、
重要な報告を伝えにまいりました。
至急、お目通りをお願い致します」
誠一たちの話を受けた儀仗兵が貴族や将軍を前にして
片膝を地面にあてた。それは彼等の視線より低い位置になるよう
配慮して報告するためであった。
「マシュー、誰だそれは?」
「左翼が崩れることはなかろう。
北方16部族の精鋭にバルフォードとナサレノを付けている。
抜かれることはない」
「追い返せ。戦に乗じて、取り入ろうとする輩に違いない。
どうせ派手な装飾の鎧でもしていだだろう。話してみろ」
本陣に集まる貴族や将軍は全くマシューという人物に
会う気はなかった。
その雰囲気を察して性急すぎたかと思い返すと、
儀仗兵は気持ち悪い汗を背中に感じ取った。
「はっ、マシューなる人物は漆黒のマントに白い鎧、
そして、質朴なメイスを武器にしております。
両脇に二人の美女を侍らせていました。
従う者たちは、一騎当千の強者とまではいえませんが、
それなりに腕の立つ剛の者のようです」
ダンブルの目が一際細くなり、周囲はざわついた。
漆黒のマントに白い鎧。
彼らの脳裏に裏切者アルフレート・フォン・エスターライヒの名前が浮かんだ。
「貴様に聞くが、その男は金髪の貴公子風の青年であったか?」
一人の貴族が唾を吐き散らしながら、尋ねた。
「はっ、その通りでございます。金髪の美青年に間違いありません」
詐欺師でも引きこんでしまったのかと儀仗兵は心配になったが、
諸貴族の質問でどうやら彼らの知った人物であると思い、胸を撫で下ろした。
激しく剣戟を交えていた。
軍を指揮していたバリーシャはカルザティから
ファウスティノの件の連絡を受けた。
その瞬間、彼女の紅い豪奢な髪がひときわ激しく燃え上がったように
周囲の兵たちには見えた。
「やってくれたな、アルフレート!」
絞り出すようにそれだけをバリーシャは吐き出した。
バリーシャの周りでは、炎の精霊たちが彼女を焚きつけるように
踊り狂っていた。
炎の精霊を纏ったバリーシャは、凄まじい怒気を発した。
「踊れ踊れ踊り狂え精霊たちよ。
燃やせ燃やせ、全てを灰燼に帰せ。
炎の踊り子たちよ、我に纏え!
全軍に告ぐ。目の前の雑魚どもを速攻で叩き潰せ。
反乱軍の首魁ダンブルの首を獲るのは我なり」
バリーシャが率いる近衛兵団は、凄まじい突撃を繰り返して
一気にダンブルの着座する本陣を目指した。
とばり一枚を隔てて、ダンブルをはじめとした反乱軍の首脳部が
無駄な議論を戦わせていた。
それを一段高い場所から意見するでもなくダンブルが
眠たげなとろんとした瞳でぼんやりと見ていた。
「火急の伝令にて、失礼します。
マシュー殿が左翼の状況について、
重要な報告を伝えにまいりました。
至急、お目通りをお願い致します」
誠一たちの話を受けた儀仗兵が貴族や将軍を前にして
片膝を地面にあてた。それは彼等の視線より低い位置になるよう
配慮して報告するためであった。
「マシュー、誰だそれは?」
「左翼が崩れることはなかろう。
北方16部族の精鋭にバルフォードとナサレノを付けている。
抜かれることはない」
「追い返せ。戦に乗じて、取り入ろうとする輩に違いない。
どうせ派手な装飾の鎧でもしていだだろう。話してみろ」
本陣に集まる貴族や将軍は全くマシューという人物に
会う気はなかった。
その雰囲気を察して性急すぎたかと思い返すと、
儀仗兵は気持ち悪い汗を背中に感じ取った。
「はっ、マシューなる人物は漆黒のマントに白い鎧、
そして、質朴なメイスを武器にしております。
両脇に二人の美女を侍らせていました。
従う者たちは、一騎当千の強者とまではいえませんが、
それなりに腕の立つ剛の者のようです」
ダンブルの目が一際細くなり、周囲はざわついた。
漆黒のマントに白い鎧。
彼らの脳裏に裏切者アルフレート・フォン・エスターライヒの名前が浮かんだ。
「貴様に聞くが、その男は金髪の貴公子風の青年であったか?」
一人の貴族が唾を吐き散らしながら、尋ねた。
「はっ、その通りでございます。金髪の美青年に間違いありません」
詐欺師でも引きこんでしまったのかと儀仗兵は心配になったが、
諸貴族の質問でどうやら彼らの知った人物であると思い、胸を撫で下ろした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
118
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる