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590.狩猟祭15

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莉々は消えゆく3人、地に倒れる2人を
血の涙を流しながら見つめていた。
彼女の脳裏には様々な事が走馬灯のように駆け巡った。
様々な土地で様々な人と交流し、様々な食を楽しんだ。
迷宮や遺跡の攻略失敗もあれば成功もあった。
都度、女神様は温かい言葉を送って励ましてくれた。
輝かしく、懐かしい日々が彼女の脳裏に浮かび上がった。
 
そう急激に女神様が変わったのは目の前の
アルフレート・フォン・エスターライヒに興味を
持ち始めた頃からであった。

 知りたい知りたい、このまま知らずに死ぬわけにはいかない。
まだ生きている3人を助けたい。このままでは終われない。
神に抗ってでも知りたい。仲間を助けなければ。
これ以上神の名を汚すことは許されぬ。
神が誤っているならば、神罰が下ってでも
それを正すのが『莉々』の名を冠する者の務め。
痛みと思考が入り混じり莉々の意思は混濁した。
理性のフィルターが外れ、莉々の本能が叫んだ。

「あああああ、神よ、あなたに逆らうことをお許しください。
『莉々』の名は地上において、神の代行者であり、
あなたの過ちを正すのが我が努め。
ああっ抗うことをお許しください」

莉々の行き場のない悔恨と懺悔が爆発した。
その瞬間、彼女の心に何かが生まれた。

称号『神々への反逆者』を得ました。

天啓を受けた際の制約がなくなり、
恩恵のみを受けられるようになります。
そんな声が心に聴こえると、
莉々は苦痛から自由になった。そしてそのまま、崩れ落ちた。

誠一は過去の自分の経験に照らし合わせて、
彼女が『神々への反逆者』の称号を得たと判断した。
彼女らに襲われたことは取り敢えず置いておき、
倒れた彼女を慌てて介抱した。

「ふむふむ、こういうことでござるか。
それなりに長く生きているが、やっと観察することができたでござる」

「先生、もう少し分かりやすく話して頂けないですか?」
再び、皆を代表してシエンナが尋ねた。

「神の拘束から解き放たれる刻、
それに運よく立ち会えたでござる。
あのまま、錯乱して廃人となるか死ぬかと
思ったでござるが、在外、強き芯を持っていたようでなにより」

「なんだ、そんなことかよ。もったいぶり過ぎだぜ、先生。
前科があるから、そういうの疑われるからやめてくれよな」
ヴェルは魔術を解いた。それを見たアミラも構えを解いた。

「偶然ねえ」
胡散臭げな表情のキャロリーヌであったが、弓を下ろした。

「鬼谷殿、できれば疑われないように行動して欲しい。
仲間に刃は向けたくないからな」
ロジェはツヴァインヘンダーを鞘に納めた。

「さて残りはシエンナだけでござるな」
頭上に浮く巨大な氷結を剣豪は一瞥した。
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