644 / 978
635.神堕ちの儀11
しおりを挟む
「やめろやめろ、やめてくれ」
誠一の叫びは次第に小さくなり、次第に呻き声になった。
「もしかして啓示に抗っているの」
サリナが悲鳴をあげて、首飾りに手をかけた。
「サリナ、それは絶対ないから心配しないで。
それより周囲の警戒をして。
今の叫び声で魔物や魔獣がこちらに近づいてくるかも」
シエンナの誠一に啓示を下す神への信頼は揺らぎなかった。
誠一は四つ這いになり、両手は地面の土を握り掴んでいた。
キャロリーヌが心配そうに寄り添っていた。
「わっわたしも」
シエンナも誠一に寄り添うために近づこうとした矢先だった。
「シエンナ、俺らはどうすればいい?」
「ちょっ、そんなこと、ってか」
チラチラと誠一とキャロリーヌの方へシエンナは
目を向けていた。
シエンナの心の中で『貧乏くじ』の称号が輝いていた。
「あー全く!くそっくそったれ」
シエンナらしからぬ口汚い言葉で何かを罵った。
「ヴェルは焚き火を絶やさないようにしながら、
体力・魔力回復液が直ぐに使えるようにしといて。
アミラはサリナが索敵で見つけた魔物を倒して。
それと必ず魔石は確保。
くうううっキャロリーヌはそのままアルの容態を看て。
私は魔石を各種準備」
『貧乏くじ』の称号によりシエンナの思考は冴えわたっていた。
考え得る最悪の状況に対処するためにシエンナは
矢継ぎ早に指示と行動を起こした。
「流石はシエンナだ。すげーな。
大した参謀だよ。俺なんて混乱の極致だったぞ」
終わりそうにないヴェルの賛辞を中断させて、
シエンナは一喝した。
「無駄口を叩かずにさっさと作業する」
「へいへいっと」
軽口を叩くヴェルにシエンナはイラっとした。
そして、たまに目に入る誠一とキャロリーヌの距離が
シエンナのイラっとした気分に拍車をかけた。
「やめろやめろ、やめてくれ」
誠一は同じこと再び呻いた。
誠一の心には間断なく天啓が送られて来た。
俺は一体、何を言われているのだろうか。誠一には理解できなかった。
普段、千晴は文語体で天啓を送ってくるが、今は口語体であった。
安ぽいAVでも流しっぱなしで『ヴェルトール王国戦記』の設定が
音声入力になっているのだろうか。
それにしては女性の叫ぶ言葉が真に迫るように誠一の心へ刻まれた。
『ほほう、嫌がっている割に身体は
やる気があるようだな』
安ぽい男の台詞。
『いや。誰か助けて助けて、お願い助けて』
かつてアルフレートのメイドであったマリアと同じ叫び声。
『あああ、佐藤。もっと叫べ叫べ。朝まで十分に時間はある』
かつて誠一がマリアに向かって言った言葉。
そして聞こえる肌と下着や服をずらす音。
佐藤、その言葉が心に刻まれた時、
誠一は千晴に危機が迫っていることを悟った。
誠一は千晴のいる世界に直接、干渉をする手段を
持っていなかった。
つまり千晴の悲痛な叫びが一方的に誠一の心に
流れ込むだけだった。
耳を塞ごうともその声は誠一の心に訴えて来た。
誠一はどうすることもできなかった。
誠一はおかしくなりそうだった。
誠一の叫びは次第に小さくなり、次第に呻き声になった。
「もしかして啓示に抗っているの」
サリナが悲鳴をあげて、首飾りに手をかけた。
「サリナ、それは絶対ないから心配しないで。
それより周囲の警戒をして。
今の叫び声で魔物や魔獣がこちらに近づいてくるかも」
シエンナの誠一に啓示を下す神への信頼は揺らぎなかった。
誠一は四つ這いになり、両手は地面の土を握り掴んでいた。
キャロリーヌが心配そうに寄り添っていた。
「わっわたしも」
シエンナも誠一に寄り添うために近づこうとした矢先だった。
「シエンナ、俺らはどうすればいい?」
「ちょっ、そんなこと、ってか」
チラチラと誠一とキャロリーヌの方へシエンナは
目を向けていた。
シエンナの心の中で『貧乏くじ』の称号が輝いていた。
「あー全く!くそっくそったれ」
シエンナらしからぬ口汚い言葉で何かを罵った。
「ヴェルは焚き火を絶やさないようにしながら、
体力・魔力回復液が直ぐに使えるようにしといて。
アミラはサリナが索敵で見つけた魔物を倒して。
それと必ず魔石は確保。
くうううっキャロリーヌはそのままアルの容態を看て。
私は魔石を各種準備」
『貧乏くじ』の称号によりシエンナの思考は冴えわたっていた。
考え得る最悪の状況に対処するためにシエンナは
矢継ぎ早に指示と行動を起こした。
「流石はシエンナだ。すげーな。
大した参謀だよ。俺なんて混乱の極致だったぞ」
終わりそうにないヴェルの賛辞を中断させて、
シエンナは一喝した。
「無駄口を叩かずにさっさと作業する」
「へいへいっと」
軽口を叩くヴェルにシエンナはイラっとした。
そして、たまに目に入る誠一とキャロリーヌの距離が
シエンナのイラっとした気分に拍車をかけた。
「やめろやめろ、やめてくれ」
誠一は同じこと再び呻いた。
誠一の心には間断なく天啓が送られて来た。
俺は一体、何を言われているのだろうか。誠一には理解できなかった。
普段、千晴は文語体で天啓を送ってくるが、今は口語体であった。
安ぽいAVでも流しっぱなしで『ヴェルトール王国戦記』の設定が
音声入力になっているのだろうか。
それにしては女性の叫ぶ言葉が真に迫るように誠一の心へ刻まれた。
『ほほう、嫌がっている割に身体は
やる気があるようだな』
安ぽい男の台詞。
『いや。誰か助けて助けて、お願い助けて』
かつてアルフレートのメイドであったマリアと同じ叫び声。
『あああ、佐藤。もっと叫べ叫べ。朝まで十分に時間はある』
かつて誠一がマリアに向かって言った言葉。
そして聞こえる肌と下着や服をずらす音。
佐藤、その言葉が心に刻まれた時、
誠一は千晴に危機が迫っていることを悟った。
誠一は千晴のいる世界に直接、干渉をする手段を
持っていなかった。
つまり千晴の悲痛な叫びが一方的に誠一の心に
流れ込むだけだった。
耳を塞ごうともその声は誠一の心に訴えて来た。
誠一はどうすることもできなかった。
誠一はおかしくなりそうだった。
11
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?
山咲莉亜
ファンタジー
ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。
だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。
趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?
ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。
※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます
わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。
一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します!
大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜
犬型大
ファンタジー
神様にいっぱい希望を出したら意思疎通のズレから竜人になりました。
異世界を救ってほしい。
そんな神様からのお願いは異世界に行った時点でクリア⁉
異世界を救ったお礼に好きなように転生させてくれるっていうからお酒を飲みながらいろいろ希望を出した。
転生しても人がいい……そんな希望を出したのに生まれてみたら頭に角がありますけど?
人がいいって言ったのに。
竜人族?
竜人族も人だって確かにそうだけど人間以外に人と言われている種族がいるなんて聞いてないよ!
それ以外はおおよそ希望通りだけど……
転生する世界の神様には旅をしてくれって言われるし。
まあ自由に世界を見て回ることは夢だったからそうしますか。
もう世界は救ったからあとはのんびり第二の人生を生きます。
竜人に転生したリュードが行く、のんびり異世界記ここに始まれり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる