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635.神堕ちの儀11
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「やめろやめろ、やめてくれ」
誠一の叫びは次第に小さくなり、次第に呻き声になった。
「もしかして啓示に抗っているの」
サリナが悲鳴をあげて、首飾りに手をかけた。
「サリナ、それは絶対ないから心配しないで。
それより周囲の警戒をして。
今の叫び声で魔物や魔獣がこちらに近づいてくるかも」
シエンナの誠一に啓示を下す神への信頼は揺らぎなかった。
誠一は四つ這いになり、両手は地面の土を握り掴んでいた。
キャロリーヌが心配そうに寄り添っていた。
「わっわたしも」
シエンナも誠一に寄り添うために近づこうとした矢先だった。
「シエンナ、俺らはどうすればいい?」
「ちょっ、そんなこと、ってか」
チラチラと誠一とキャロリーヌの方へシエンナは
目を向けていた。
シエンナの心の中で『貧乏くじ』の称号が輝いていた。
「あー全く!くそっくそったれ」
シエンナらしからぬ口汚い言葉で何かを罵った。
「ヴェルは焚き火を絶やさないようにしながら、
体力・魔力回復液が直ぐに使えるようにしといて。
アミラはサリナが索敵で見つけた魔物を倒して。
それと必ず魔石は確保。
くうううっキャロリーヌはそのままアルの容態を看て。
私は魔石を各種準備」
『貧乏くじ』の称号によりシエンナの思考は冴えわたっていた。
考え得る最悪の状況に対処するためにシエンナは
矢継ぎ早に指示と行動を起こした。
「流石はシエンナだ。すげーな。
大した参謀だよ。俺なんて混乱の極致だったぞ」
終わりそうにないヴェルの賛辞を中断させて、
シエンナは一喝した。
「無駄口を叩かずにさっさと作業する」
「へいへいっと」
軽口を叩くヴェルにシエンナはイラっとした。
そして、たまに目に入る誠一とキャロリーヌの距離が
シエンナのイラっとした気分に拍車をかけた。
「やめろやめろ、やめてくれ」
誠一は同じこと再び呻いた。
誠一の心には間断なく天啓が送られて来た。
俺は一体、何を言われているのだろうか。誠一には理解できなかった。
普段、千晴は文語体で天啓を送ってくるが、今は口語体であった。
安ぽいAVでも流しっぱなしで『ヴェルトール王国戦記』の設定が
音声入力になっているのだろうか。
それにしては女性の叫ぶ言葉が真に迫るように誠一の心へ刻まれた。
『ほほう、嫌がっている割に身体は
やる気があるようだな』
安ぽい男の台詞。
『いや。誰か助けて助けて、お願い助けて』
かつてアルフレートのメイドであったマリアと同じ叫び声。
『あああ、佐藤。もっと叫べ叫べ。朝まで十分に時間はある』
かつて誠一がマリアに向かって言った言葉。
そして聞こえる肌と下着や服をずらす音。
佐藤、その言葉が心に刻まれた時、
誠一は千晴に危機が迫っていることを悟った。
誠一は千晴のいる世界に直接、干渉をする手段を
持っていなかった。
つまり千晴の悲痛な叫びが一方的に誠一の心に
流れ込むだけだった。
耳を塞ごうともその声は誠一の心に訴えて来た。
誠一はどうすることもできなかった。
誠一はおかしくなりそうだった。
誠一の叫びは次第に小さくなり、次第に呻き声になった。
「もしかして啓示に抗っているの」
サリナが悲鳴をあげて、首飾りに手をかけた。
「サリナ、それは絶対ないから心配しないで。
それより周囲の警戒をして。
今の叫び声で魔物や魔獣がこちらに近づいてくるかも」
シエンナの誠一に啓示を下す神への信頼は揺らぎなかった。
誠一は四つ這いになり、両手は地面の土を握り掴んでいた。
キャロリーヌが心配そうに寄り添っていた。
「わっわたしも」
シエンナも誠一に寄り添うために近づこうとした矢先だった。
「シエンナ、俺らはどうすればいい?」
「ちょっ、そんなこと、ってか」
チラチラと誠一とキャロリーヌの方へシエンナは
目を向けていた。
シエンナの心の中で『貧乏くじ』の称号が輝いていた。
「あー全く!くそっくそったれ」
シエンナらしからぬ口汚い言葉で何かを罵った。
「ヴェルは焚き火を絶やさないようにしながら、
体力・魔力回復液が直ぐに使えるようにしといて。
アミラはサリナが索敵で見つけた魔物を倒して。
それと必ず魔石は確保。
くうううっキャロリーヌはそのままアルの容態を看て。
私は魔石を各種準備」
『貧乏くじ』の称号によりシエンナの思考は冴えわたっていた。
考え得る最悪の状況に対処するためにシエンナは
矢継ぎ早に指示と行動を起こした。
「流石はシエンナだ。すげーな。
大した参謀だよ。俺なんて混乱の極致だったぞ」
終わりそうにないヴェルの賛辞を中断させて、
シエンナは一喝した。
「無駄口を叩かずにさっさと作業する」
「へいへいっと」
軽口を叩くヴェルにシエンナはイラっとした。
そして、たまに目に入る誠一とキャロリーヌの距離が
シエンナのイラっとした気分に拍車をかけた。
「やめろやめろ、やめてくれ」
誠一は同じこと再び呻いた。
誠一の心には間断なく天啓が送られて来た。
俺は一体、何を言われているのだろうか。誠一には理解できなかった。
普段、千晴は文語体で天啓を送ってくるが、今は口語体であった。
安ぽいAVでも流しっぱなしで『ヴェルトール王国戦記』の設定が
音声入力になっているのだろうか。
それにしては女性の叫ぶ言葉が真に迫るように誠一の心へ刻まれた。
『ほほう、嫌がっている割に身体は
やる気があるようだな』
安ぽい男の台詞。
『いや。誰か助けて助けて、お願い助けて』
かつてアルフレートのメイドであったマリアと同じ叫び声。
『あああ、佐藤。もっと叫べ叫べ。朝まで十分に時間はある』
かつて誠一がマリアに向かって言った言葉。
そして聞こえる肌と下着や服をずらす音。
佐藤、その言葉が心に刻まれた時、
誠一は千晴に危機が迫っていることを悟った。
誠一は千晴のいる世界に直接、干渉をする手段を
持っていなかった。
つまり千晴の悲痛な叫びが一方的に誠一の心に
流れ込むだけだった。
耳を塞ごうともその声は誠一の心に訴えて来た。
誠一はどうすることもできなかった。
誠一はおかしくなりそうだった。
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