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642.神の名2

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「いやまあ、ほら、シエンナ一人だと
不測の事態になったとき、拙いからさ。
野営地の警戒は2人が基本だから、
まあ、そう言う事。
一言、釘を刺しておこうと思って」

誠一のしどろもどろの言葉と態度を胡散臭そうにヴェルは見た。
しかし、根が単純なヴェルは深く考えずに納得した様だった。
「ふーん、そう言うことか。それはそうだな。
リーダーは大変だよな。色々と考えないといけないし。
それよりアル、ほれ」

ヴェルの左手に持つ魔石を誠一の右手に握らせた。
誠一が魔石を握って魔力を吸収すると身体全体に
染み渡る様に魔力が広がったような気がした。
ほんの少しだが、身体が軽くなったような気がした。

「ヴェル、アミラ、それにサリナ、ありがとう」

「まあ、良いって。
確かに野営地を離れるのに不安も少しあったからな。
まあでも、俺もそれなりに考えてるんだぜ」

「4人で話して決めたのです。
まったく最初に小言を言う前にお礼を言うべきです」

「まあまあ、2人とも多分、シエンナの形相を見て、
リーダーは勘違いしたんでしょ」
サリナがシエンナをダシにして2人をなだめた。

シエンナは膨れっ面でそっぽを向いていたが、
それが彼等の追及を逃れるための方策であることを
誠一は容易に看破した。

「まあそれはもういいや。それよりアル、話せよ。
神様に何があった。大丈夫なのか?」

「そうね、どうでもいいことはここまでにして、
キャロリーヌが起きてから、アル、話せる範囲で説明して」

ヴェルとシエンナは真剣な表情であった。
先ほどと違い冗談の言える様な雰囲気は一瞬で消え去っていた。

「分かった。説明する。サリナ、キャロリーヌを起こしてきて」
誠一はキャロリーヌの寝顔から十分な睡眠が取れていると判断した。

「じゃあ、話すよ」
誠一は焚き火を囲むメンバーに向かって、話始めた。
雰囲気造りも大切と思い、一度、洞窟の天井を
見つめて詠嘆の声をあげた。

流石にそのものずばりを話すことはできず、
誠一は脚色して話を始めた。

「神の世界で争いがあったようで、それに千晴さん。
いや、我が神が巻き込まれたようだった。
そのため、神が助けを求めて来たんだ」

「神は非常に危険な状況に追い込ま、ってヴェル、何?」

「ちょっと待て、アル。
その話も非常に大切だが、その前に確認したいことがある。
啓示やアイテムを下賜してくれる神様は、女神様なのか?」

誠一はすっとぼけた。
「さっさあ、どうなのかな?」

「おいおい、旦那、ごまかしは無しだぜ。
俺は確かに聞こえた。千晴さんとな」

「千晴様、お怪我は無かったでしょうか?」
徐に祈り始めるシエンナ。
誠一は焦った。話がおかしな方へ向かっている。
軌道修正しないと大変なことになる。そう誠一の直感が伝えていた。
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