転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた

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812. ジェルミラ領進撃4

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「何をしている。ここは敵地で戦場だぞ。
少しは周囲を警戒しないか!」
誠一にしては珍しく大声で声を荒げていた。
声は青空に響き渡った。
無論、率いる兵の全てに届いた訳ではなかったが、
何事かと声の聞えた兵たちは歩みを止めた。
そして、兵士たちは次々に立ち止まった。

 普段、穏やかで声を荒げることなどなかった誠一に
多く兵士たちが目を向けた。
多くの兵士たちの面前で怒鳴られた兵士たちは
不貞腐れたような表情で俯いていた。
注目された誠一は言葉に詰まってしまった。
多くの人に注目されることにいつまでたっても
慣れることは無さそうであった。
誠一は動悸の激しさを感じながら、サリナの様子を窺った。
先ほどと違って、サリナはホッとした表情だった。
そして嬉しそうに見えた。

 話を続けない誠一に周囲の兵士たちはざわつき始めた。
そのざわつきの声が誠一にも聞こえてきた。

「アルフレート様にしては珍しいな」

「おいおい、キャロリーヌ様、シエンナ様だけでなく
サリナもアルフレート様の女なのかよ」

「確かに軍だし、ちょっと気が緩み過ぎだったかな」

誠一は軍全体を見渡す様に見た。
ねめつけるような視線を感じ、その視線の主を探した。
バッシュの手の者かそれとも間者か誠一には
見当もつかなかった。 
その視線は誠一を見つめる多くの視線の中へ巧妙に
隠されていた。

「痛っ、ちょっと何するのよ!」

突如、女性の悲鳴が聞こえた。
声の主はキャロリーヌであった。
両手で頭を押さえる仕草は可愛かったが、
その隣に何故かいる剣豪の顔は険しかった。
そして何故かキャロリーヌの首根っこを
押さえつけていた。

「先生、一体、何事ですか?」
誠一は彼らに駆け寄った。

「いやなにアルフレート様に何やら不快で
胡散臭い視線を送る者をひっ捕らえたでござる」

誠一は先程の視線の持ち主が誰であったか理解した。
それにしても職種が弓兵にも関わらず、
盗賊や暗殺者の如き隠密スキルをキャロリーヌが
発揮するとは誠一は夢にも思わなかった。

「キャロ、どうして?後で説明して」
誠一は小さい声で伝えると、一応、緊張感を取り戻した軍へ
行軍を再開するように伝えた。

その夜、夜営の警戒の当番をキャロリーヌと同じにした。
パチパチパチパチと焚き火が燃え盛っている前で
誠一はキャロリーヌに尋ねた。

「キャロ、一体、何故あんな目で僕を見ていたの?」

火はゆらゆらと燃えていた。
キャロリーヌの白い肌が少し赤みかかっているようだった。
それは火の色を反映してかそれともキャロリーヌの
感情の昂りの為か誠一には分からなかった。

「そんなこと、自分の心に聞いてみれば。
いや、自分のだらしない下半身にでも聞けばわかるでしょ」

誠一は一瞬で鼻白んでしまった。
キャロリーヌとは反対に誠一の顔は真っ青であった。
心当たりがあり、何をどう話しても
詭弁にしか受け取られないとしか思えなかった。

故に沈黙。

「ふーん、弁解もしないんだ。
黙っているだけとか卑怯よね」

キャロリーヌの顔に赤みが増したように誠一には見えた。
逆にキャロリーヌが言葉を紡げば紡ぐほど誠一の顔は青みを増した。
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