5 / 5
現パロ(レオルオ目線)
バンリ目線
しおりを挟む
「ん、……」
寒いのかそれとも抱き締める腕が強すぎて寝苦しいのか、もぞもぞと身動ぐ小さな姿。
気を遣い少し体を離せばそれは求めてなかったらしい、レオルオは追いかけるようにバンリに擦り寄ってきた。
「寝てる時は素直なんだな、お前は」
満足気に微笑みを浮かべながら再びレオルオの小さな体を腕の中に招く。
(目元は、あとで冷やしてやらなきゃな…)
泣き腫らしたレオルオに胸が痛まないほど冷徹じゃないと自身でも思うが、よほど"バンリと別れたい"。そんなくだらない意思が強かったのか、今日のコイツは随分と強情だった。
それでも最終的には悔しさを殺し、「寝たくない、最後までして」と懇願してきた。
『ーーーあ゛、あぁあ…♡! んん~~、っ、あ゛、♡♡』
ローターでぐずぐずになった中は最高で、焦らせるだけやったかいがあった。
きもちいい♡♡もっと、してほしい♡♡
早々に快楽に負けたレオルオははしたなく嬌声を上げ、目で訴えていた。
「やっと手に入れたんだ。誰が別れてやるかよ…」
もっと素直に落ちればいい。
そんなほの暗い事を考えながら、大きな涙を浮かべつつ何度もメスイキを繰り返していたレオルオを見下ろした。
実のところ、レオルオが置き去りに遭うより前。バンリは彼の事を知っていた。
(今日は失敗だったな…)
取引先との商談が終われば、息抜きに近くのバーで一人酒を嗜むのが趣味だった。
大学生らしき連中のぎゃぁぎゃあ声は耳障りで、せっかく仕事上がりでゆっくり酒をたしなむつもりが台無しになったとイラつきもしていた。
しかし、一人だけ。あきらかに場に馴染めていない小柄な男がいた。
大ジョッキを片手に真っ赤な顔でヘラヘラと笑い、周りの連中にいいように言われ玩具にされているようだった。
その彼が顔を上げた瞬間、離れた席にいたバンリと目が合った。
黒い髪に、透き通るような蒼い瞳。
あどけないが酒で上気した表情には不思議な色気があり、思わずごくりと唾をのんだ。
いや、まてまて。いくらなんでも守備範囲外だろ、アレは…。
付き合いや結婚になどには興味がない。従順でおしとやかなタイプよりも、金目的のサバサバとした肉食系美女が多かった。
後腐れのないさっぱりとした関係が好ましい。
あれは見るからに垢抜けないガキが、イキって酒を飲んでキャパオーバーしてるだけだ。
「…………」
そう何度も思い直したが、気になり始めると一度は抱かないと満足できないのがバンリの悪癖だった。
場をわきまえない声量のおかげで個人情報がどんどん手に入ってくる。
○○大学、サイトウ、タナカ、そして……。
(レオルオ……ねぇ……)
あの蒼い瞳が怯え白い肌を差し出す。
心の中に飼っている獰猛な獣が、いい獲物を見つけたことに歓喜した。
その後は実に簡単なことだった。
金に困っている可哀想な先輩君に声を掛け、全てを仕込んでもらうだけだ。
そして作戦は決行された。
置いていかれ青ざめるレオルオと作り上げられた事実を述べるオーナー。
場所とやり方は任せると言っていたが、店ごとグルだったのだろう。優しい顔とは裏腹に中々したたかなオーナーだった。
(まぁいい)
高い買い物にはなったが、確実にレオルオはバンリに傾く。そして今までのセフレたち同様、金目的でバンリを慕い可愛らしく媚びを売るだろう。
『ありがとうございます、このお礼は必ずしますので…!』
甲斐甲斐しく介抱した翌朝。酔いから覚めたレオルオは想定内の反応をした。
この世の中の汚れを知らない純情さが俗物に消えて行くのは勿体ない気がするが、欲しいものは何でも俺が買い与える。
それが飽きるまでの期間だとしてもレオルオは不自由のない、むしろいい思いをするのだから不満はないはずだ。
そう、思っていた。
(…………なんでだ)
蓋を開けてみればどうしたことか。レオルオはバンリを慕いはした、がアプローチに靡くどころか気付く気配がない。
プレゼントは喜ぶものの『なくしたりしたくないので大事な時につけますね』と申し訳なさそうな反応をして、いつも奢ってもらうのが忍びないと手料理を差し入れにくる。
『あんまりおいしくないと思いますが…』
『ありがとう。嬉しいよ』
何が特に美味いわけでもなんでもない、ただただ素人が作る手料理の味だ。
けれどバランスはいい。旨いの一言だけでパァっと顔を明るくさせ、純粋にバンリに喜んでもらいたかったという表情が垣間見えた時、”これを骨の髄まで自分に依存させたい”、そんな欲求が芽生えた。
大切に、大事にしよう。
レオルオが上辺の、優しい「バンリさん」を望むならばそうしようとも思った。
レオルオが、バンリから離れようとするまでは――――…
「…………ば、り……さ……ん」
「どうした?」
「………、…」
レオルオのことはすべて調べ上げた。
施設育ちのレオルオは小学校に上がる前に片田舎で惣菜屋を営む夫妻に引き取られる…も、その数年後に妹ができた。
家族・兄妹仲の良は近所でも評判らしいが、それは甘え下手なレオルオが自分の居場所を一生懸命作るための演技だったのだろう。
実家が経営する店の状況、ほとんど記憶はないだろうが育った施設の老朽化。
美味しいことにレオルオの心に付け入る隙はいくらでもあった。
どんなに俺からの愛情を拒んだところで、最終的に彼は自分自身のためにお前はバンリを受け入れざる得ない。
『別れてください…』
レオルオは自分の身の丈にあっちゃいないからと、決してバンリを受け入れはしない。
本当、振り回されて敵わないと失笑してしまうが悪い気はしない。
あの夜。本当はレオルオとバンリが愛人契約などしていなかったとしても…誰も知らない事実だ。
「安心しろ。嫌ってほど愛してやる」
骨の髄まで愛される。
分からないならば分からせるまでだ。
寒いのかそれとも抱き締める腕が強すぎて寝苦しいのか、もぞもぞと身動ぐ小さな姿。
気を遣い少し体を離せばそれは求めてなかったらしい、レオルオは追いかけるようにバンリに擦り寄ってきた。
「寝てる時は素直なんだな、お前は」
満足気に微笑みを浮かべながら再びレオルオの小さな体を腕の中に招く。
(目元は、あとで冷やしてやらなきゃな…)
泣き腫らしたレオルオに胸が痛まないほど冷徹じゃないと自身でも思うが、よほど"バンリと別れたい"。そんなくだらない意思が強かったのか、今日のコイツは随分と強情だった。
それでも最終的には悔しさを殺し、「寝たくない、最後までして」と懇願してきた。
『ーーーあ゛、あぁあ…♡! んん~~、っ、あ゛、♡♡』
ローターでぐずぐずになった中は最高で、焦らせるだけやったかいがあった。
きもちいい♡♡もっと、してほしい♡♡
早々に快楽に負けたレオルオははしたなく嬌声を上げ、目で訴えていた。
「やっと手に入れたんだ。誰が別れてやるかよ…」
もっと素直に落ちればいい。
そんなほの暗い事を考えながら、大きな涙を浮かべつつ何度もメスイキを繰り返していたレオルオを見下ろした。
実のところ、レオルオが置き去りに遭うより前。バンリは彼の事を知っていた。
(今日は失敗だったな…)
取引先との商談が終われば、息抜きに近くのバーで一人酒を嗜むのが趣味だった。
大学生らしき連中のぎゃぁぎゃあ声は耳障りで、せっかく仕事上がりでゆっくり酒をたしなむつもりが台無しになったとイラつきもしていた。
しかし、一人だけ。あきらかに場に馴染めていない小柄な男がいた。
大ジョッキを片手に真っ赤な顔でヘラヘラと笑い、周りの連中にいいように言われ玩具にされているようだった。
その彼が顔を上げた瞬間、離れた席にいたバンリと目が合った。
黒い髪に、透き通るような蒼い瞳。
あどけないが酒で上気した表情には不思議な色気があり、思わずごくりと唾をのんだ。
いや、まてまて。いくらなんでも守備範囲外だろ、アレは…。
付き合いや結婚になどには興味がない。従順でおしとやかなタイプよりも、金目的のサバサバとした肉食系美女が多かった。
後腐れのないさっぱりとした関係が好ましい。
あれは見るからに垢抜けないガキが、イキって酒を飲んでキャパオーバーしてるだけだ。
「…………」
そう何度も思い直したが、気になり始めると一度は抱かないと満足できないのがバンリの悪癖だった。
場をわきまえない声量のおかげで個人情報がどんどん手に入ってくる。
○○大学、サイトウ、タナカ、そして……。
(レオルオ……ねぇ……)
あの蒼い瞳が怯え白い肌を差し出す。
心の中に飼っている獰猛な獣が、いい獲物を見つけたことに歓喜した。
その後は実に簡単なことだった。
金に困っている可哀想な先輩君に声を掛け、全てを仕込んでもらうだけだ。
そして作戦は決行された。
置いていかれ青ざめるレオルオと作り上げられた事実を述べるオーナー。
場所とやり方は任せると言っていたが、店ごとグルだったのだろう。優しい顔とは裏腹に中々したたかなオーナーだった。
(まぁいい)
高い買い物にはなったが、確実にレオルオはバンリに傾く。そして今までのセフレたち同様、金目的でバンリを慕い可愛らしく媚びを売るだろう。
『ありがとうございます、このお礼は必ずしますので…!』
甲斐甲斐しく介抱した翌朝。酔いから覚めたレオルオは想定内の反応をした。
この世の中の汚れを知らない純情さが俗物に消えて行くのは勿体ない気がするが、欲しいものは何でも俺が買い与える。
それが飽きるまでの期間だとしてもレオルオは不自由のない、むしろいい思いをするのだから不満はないはずだ。
そう、思っていた。
(…………なんでだ)
蓋を開けてみればどうしたことか。レオルオはバンリを慕いはした、がアプローチに靡くどころか気付く気配がない。
プレゼントは喜ぶものの『なくしたりしたくないので大事な時につけますね』と申し訳なさそうな反応をして、いつも奢ってもらうのが忍びないと手料理を差し入れにくる。
『あんまりおいしくないと思いますが…』
『ありがとう。嬉しいよ』
何が特に美味いわけでもなんでもない、ただただ素人が作る手料理の味だ。
けれどバランスはいい。旨いの一言だけでパァっと顔を明るくさせ、純粋にバンリに喜んでもらいたかったという表情が垣間見えた時、”これを骨の髄まで自分に依存させたい”、そんな欲求が芽生えた。
大切に、大事にしよう。
レオルオが上辺の、優しい「バンリさん」を望むならばそうしようとも思った。
レオルオが、バンリから離れようとするまでは――――…
「…………ば、り……さ……ん」
「どうした?」
「………、…」
レオルオのことはすべて調べ上げた。
施設育ちのレオルオは小学校に上がる前に片田舎で惣菜屋を営む夫妻に引き取られる…も、その数年後に妹ができた。
家族・兄妹仲の良は近所でも評判らしいが、それは甘え下手なレオルオが自分の居場所を一生懸命作るための演技だったのだろう。
実家が経営する店の状況、ほとんど記憶はないだろうが育った施設の老朽化。
美味しいことにレオルオの心に付け入る隙はいくらでもあった。
どんなに俺からの愛情を拒んだところで、最終的に彼は自分自身のためにお前はバンリを受け入れざる得ない。
『別れてください…』
レオルオは自分の身の丈にあっちゃいないからと、決してバンリを受け入れはしない。
本当、振り回されて敵わないと失笑してしまうが悪い気はしない。
あの夜。本当はレオルオとバンリが愛人契約などしていなかったとしても…誰も知らない事実だ。
「安心しろ。嫌ってほど愛してやる」
骨の髄まで愛される。
分からないならば分からせるまでだ。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる