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現パロ(レオルオ目線)

バンリ目線

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「ん、……」

寒いのかそれとも抱き締める腕が強すぎて寝苦しいのか、もぞもぞと身動ぐ小さな姿。
気を遣い少し体を離せばそれは求めてなかったらしい、レオルオは追いかけるようにバンリに擦り寄ってきた。

「寝てる時は素直なんだな、お前は」

満足気に微笑みを浮かべながら再びレオルオの小さな体を腕の中に招く。

(目元は、あとで冷やしてやらなきゃな…)

泣き腫らしたレオルオに胸が痛まないほど冷徹じゃないと自身でも思うが、よほど"バンリと別れたい"。そんなくだらない意思が強かったのか、今日のコイツは随分と強情だった。
それでも最終的には悔しさを殺し、「寝たくない、最後までして」と懇願してきた。

『ーーーあ゛、あぁあ…♡! んん~~、っ、あ゛、♡♡』
ローターでぐずぐずになった中は最高で、焦らせるだけやったかいがあった。
きもちいい♡♡もっと、してほしい♡♡
早々に快楽に負けたレオルオははしたなく嬌声を上げ、目で訴えていた。

「やっと手に入れたんだ。誰が別れてやるかよ…」

もっと素直に落ちればいい。
そんなほの暗い事を考えながら、大きな涙を浮かべつつ何度もメスイキを繰り返していたレオルオを見下ろした。



実のところ、レオルオが置き去りに遭うより前。バンリは彼の事を知っていた。


(今日は失敗だったな…)
取引先との商談が終われば、息抜きに近くのバーで一人酒を嗜むのが趣味だった。
大学生らしき連中のぎゃぁぎゃあ声は耳障りで、せっかく仕事上がりでゆっくり酒をたしなむつもりが台無しになったとイラつきもしていた。

しかし、一人だけ。あきらかに場に馴染めていない小柄な男がいた。
大ジョッキを片手に真っ赤な顔でヘラヘラと笑い、周りの連中にいいように言われ玩具にされているようだった。
その彼が顔を上げた瞬間、離れた席にいたバンリと目が合った。

黒い髪に、透き通るような蒼い瞳。
あどけないが酒で上気した表情には不思議な色気があり、思わずごくりと唾をのんだ。

いや、まてまて。いくらなんでも守備範囲外だろ、アレは…。
付き合いや結婚になどには興味がない。従順でおしとやかなタイプよりも、金目的のサバサバとした肉食系美女が多かった。
後腐れのないさっぱりとした関係が好ましい。
あれは見るからに垢抜けないガキが、イキって酒を飲んでキャパオーバーしてるだけだ。


「…………」

そう何度も思い直したが、気になり始めると一度は抱かないと満足できないのがバンリの悪癖だった。
場をわきまえない声量のおかげで個人情報がどんどん手に入ってくる。
○○大学、サイトウ、タナカ、そして……。

(レオルオ……ねぇ……)

あの蒼い瞳が怯え白い肌を差し出す。
心の中に飼っている獰猛な獣が、いい獲物を見つけたことに歓喜した。


その後は実に簡単なことだった。
金に困っているに声を掛け、全てを仕込んでもらうだけだ。

そして作戦は決行された。
置いていかれ青ざめるレオルオと作り上げられた事実を述べるオーナー。
場所とやり方は任せると言っていたが、店ごとグルだったのだろう。優しい顔とは裏腹に中々したたかなオーナーだった。

(まぁいい)

高い買い物にはなったが、確実にレオルオはバンリに傾く。そして今までのセフレたち同様、金目的でバンリを慕い可愛らしく媚びを売るだろう。


『ありがとうございます、このお礼は必ずしますので…!』

甲斐甲斐しく介抱した翌朝。酔いから覚めたレオルオは想定内の反応をした。
この世の中の汚れを知らない純情さが俗物に消えて行くのは勿体ない気がするが、欲しいものは何でも俺が買い与える。
それが飽きるまでの期間だとしてもレオルオは不自由のない、むしろいい思いをするのだから不満はないはずだ。

そう、思っていた。



(…………なんでだ)

蓋を開けてみればどうしたことか。レオルオはバンリを慕いはした、がアプローチに靡くどころか気付く気配がない。
プレゼントは喜ぶものの『なくしたりしたくないので大事な時につけますね』と申し訳なさそうな反応をして、いつも奢ってもらうのが忍びないと手料理を差し入れにくる。

『あんまりおいしくないと思いますが…』
『ありがとう。嬉しいよ』

何が特に美味いわけでもなんでもない、ただただ素人が作る手料理の味だ。
けれどバランスはいい。旨いの一言だけでパァっと顔を明るくさせ、純粋にバンリに喜んでもらいたかったという表情が垣間見えた時、”これを骨の髄まで自分に依存させたい”、そんな欲求が芽生えた。

大切に、大事にしよう。
レオルオが上辺の、優しい「バンリさん」を望むならばそうしようとも思った。



レオルオが、バンリから離れようとするまでは――――…



「…………ば、り……さ……ん」
「どうした?」
「………、…」

レオルオのことはすべて調べ上げた。
施設育ちのレオルオは小学校に上がる前に片田舎で惣菜屋を営む夫妻に引き取られる…も、その数年後に妹ができた。
家族・兄妹仲の良は近所でも評判らしいが、それは甘え下手なレオルオが自分の居場所を一生懸命作るための演技だったのだろう。

実家が経営する店の状況、ほとんど記憶はないだろうが育った施設の老朽化。

美味しいことにレオルオの心に付け入る隙はいくらでもあった。
どんなに俺からの愛情を拒んだところで、最終的に彼は自分自身のためにお前はバンリを受け入れざる得ない。


『別れてください…』

レオルオは自分の身の丈にあっちゃいないからと、決してバンリを受け入れはしない。


本当、振り回されて敵わないと失笑してしまうが悪い気はしない。
あの夜。本当はレオルオとバンリが愛人契約などしていなかったとしても…誰も知らない事実だ。



「安心しろ。嫌ってほど愛してやる」


骨の髄まで愛される。
分からないならば分からせるまでだ。


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