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2章 脇役と不死の王龍
初給料だよ!シオウくん
「シオウ。これを、貴方に」
「へ?」
授業の終わりにアルタイルがシオウへ差し出したのは、小さな茶色の袋だった。
手のひらほどの大きさなのに、ずっしりと重い。袋を開けると、中には銀貨と銅貨がきらりと光っている。
「え、これって……?」
「シオウは働いています。これは、その報酬です」
「……ほうしゅう?」
まだ習っていないエルナの単語に、シオウは首をかしげる。
その様子にアルタイルはやわらかく微笑み、言い方を変えた。
「失礼。ご褒美と言えば分かりやすいですね」
「――!つまり、給料ってこと!?もらっていいの!?こんなに!?」
にこにこと笑うアルタイルさんを見て、ようやく実感が湧く。
何かおつかいを頼まれたのかと思ったら違った!
(これって……ステータス鑑定の結果、かな?)
最近では、俺の加護で作った塩や砂糖を秤にかけてそれをアルタイルさんやアデルさんが丁寧に包んでいた。
塩も砂糖も回復薬の材料で、シュヴァルでは貴重な品だ(とシオウは思っている)。
ステータス鑑定した結果、品質には問題ないことが証明されたのか。
ははん?なるほど。だからあの場にいた全員が喜んだんだな?
と、俺は勝手に納得していた。
(まぁ、得体の知れない塩と砂糖なんて、普通は使えないもんな。でも、いいのかな……?これって加護のおかげだし、俺自身は大したことしてないのに)
けれど――お金は、大切だ。
今までずっと一文無しだった俺が、ようやく手に入れた初めての給料。
その重みが、じんわりと胸に染みていく。
これは有り難く、受け取ることにした。
「むっふっふ~♪」
思わず口からこぼれる鼻歌。
無駄遣いはしたくないけれど、使い道はもう決まっている。
「ゼアロンさん! 俺、買い物に行きたい!!」
◇ ◇ ◇
そして、再びやってきたのは――
鼻を惹きつける香辛料の匂いと鍛冶屋の槌音が入り混じる、活気あふれる通り。
色とりどりの布や魔石、果実が並び、行き交う声と笑いがあふれている。
――城下町の大市だ!
目立たぬようフードを深く被るシオウ。
その隣には、重い鎧を脱ぎ、“認識阻害”の効果を持つ同じフードを被ったゼアロルドがいた。
「じゃあ、まずは―――!」
真っ先に向かったのは、お世話になった狼獣人ドランさんの青果店だった。
そこで、
「お兄ちゃん!」
「あ、君は!」
いたのは、あの時ゴロツキに絡まれていた少年。
「‥‥‥ そっか!カイルっていうんだ、元気そうでよかった」
「はい!また聖人様に会えて嬉しいです!」
「??うん、うれしい、ありがとうな!」
まだ言葉は十分に通じない。それでも笑顔があれば気持ちは伝わる。
胸の中が、ほんのり温かくなった。
そんな二人を少し離れて見守りながら、ドランが豪快に笑う。
「ハハハ! 俺も年のせいか腰をなぁ痛めがちでよ。カイルには助けられてるよ。真面目でよく働く子だ」
「それは良かった。カイルを派遣した、アデルも喜ぶ」
「……しっかし、あの坊主が神子様か?あの調子じゃ、オタクも苦労するねぇ」
獣人達は特異体質に恵まれる。相手の微かな情報を頼りに、おおよその私生活だけでなく、鋭いと感情までを察してしまうらしい。
いくら認識阻害のフードを被っていても、“人狼”の鼻はごまかせない。
ゼアロルドも、よく知っていた。
「シオウに救われているのは、俺達の方だ」
「………そうか」
ドランは鼻で笑う。
仮にも神子の護衛騎士が、なんてだらしない顔をしているのか。
それに、安心しきったシオウもだ。
――――――― 読むまでもない。
(ん~!マンドフルーツのいい匂い~♪)
たくさんのオマケをもらい、シオウはすっかりご満悦だ。
果物は今夜のデザートに使おう。パンケーキにのせてもいいかもしれない。
――――だけど、せっかく街まで来たんだ。
真っすぐ騎士舎に帰るのは惜しい。
「ゼアロンさん、もう少し付き合ってください!」
―――――――――――――――――――――
補足:シオウの加護
「純粋な塩と砂糖」を生成できる。
“純粋”とは、瘴気の穢れを一切含まないという意味である。
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