巻き込まれた脇役は砂糖と塩と共に

田舎

文字の大きさ
53 / 90
2章 脇役と不死の王龍

擬似家族②

しおりを挟む
絵本を読み終えて、めでたしめでたし。


「……ねぇ、ママ」
「ん?」
「ママは、言えないことが多い… そんな我を役に立たないと思っておるか?」
「ええ!?そんなことない!」

なんてこと言うんだ!?
びっくりして、即答でユリアの言葉を否定した。
ま、まぁ…確かに聞きたいことは山ほどあるよ?
だけど、俺には制約とか制限とか分かんないけど、全部をユリアに聞いてしまうと情報だって偏ってしまう気がした。

「むっ、我を信じないのか?」
「信じるよ!けどさ、俺の知りたいことってすっごく難しいことばっかりでしょ?教えてもらったところで俺が混乱するオチだよ」

マクミランにいた頃、ちゃんと理解できてた真里亜が偉いよ、マジで。

「あと俺がみんなの言葉を理解できないのって、ユリアのせいでも誰のせいでもないし」

驚くユリアの顔を見て、「当たり前だよ」って笑う。
ふと思い出した、オルベリオンさんの『運だった。シオウはいつ死んでもおかしくなかった』の言葉。
ーーーーそうだよ。俺は、脇役だ。
主人公なんて器じゃないって分かってるし、度胸もゼロ。
誰かの先頭に立って「みんなで頑張ろう!」って率先できるようなタイプでもない。

だけど不貞腐れて出来ないままでいるのは、もっと嫌だ。


「最初の声は上げられなくたって…、みんなと一緒なら大岩だって動かせるよ」
「あの貧弱な騎士たちにか?」
「仲間だよ。それにユリアも」

言ってから俺は、「あ!」と閃いた。
「ユリア。俺と一緒に勉強しない?」って提案をして。

「勉強?大精霊の我にそんなもの必要などない」
「必要だし大事なことだ。特に言葉は遣いを直さないと、ユリアが友達や将来の恋人を作るのに困るだろ?」
「ふん!我に友達など必要ない!結婚もママとする!!」
「えぇ!?」

女の子に見つめられてのプロポーズは、二回目だ。
一度目は真里亜。
で、二回目が今日なんて――――光栄だなぁ。

「ふふ。だったら俺は、俺以上にユリアを大切にしてくれる人を探さないとだ」
「む゛ぅう~~~!!我は冗談など言っておらぬ!」
「あ、そうだ!カイルって男の子が俺の友達にいるんだ。一緒に遊んであげてよ」
「いーやーじゃ!ただのニンゲンなどに我を楽しませられるものか!」
「コラコラ、遊ぶ前から否定しない」

ね?と、シオウが微笑めば、ユリアは可愛らしい顔をちょっとだけ悩ます。
そのとき、ガチャっと部屋の扉が開いた。



「あ、おかえりなさい」
「おかえり、パパ!」

シオウの膝の上を降りて、真っ先にぎゅっとゼアロルドに飛びつくユリア。
そして、優しく頭を撫でるゼアロンさんの姿。

「ただいま………えっと、いい子だったかい?」
「うむ!パパは我にこの絵本を読むのじゃ!」

ユリアが手にとっているのは、まだ俺には難しい絵本だった。
あはは…。まぁ慣れないよね、ゼアロンさんの気持ちは分かるよ。
だけど、追い出そうとしたり邪険に扱ったりしない。

なにより、「ユリア」の名付け親はゼアロンさんなんだ。




こうして、今夜も色んな話をして
二台のベッドを合わせて作った大きな寝床の真ん中で、ユリアが嬉しそうに転がっていた。

いつもの、ゼアロンさんユリア……俺の並び。
ユリアは嬉しそうにパパ……んん゛っ、本当に恥ずかしいんだけどゼアロンさんに引っ付いている。

「シオウ、君も」
「………!」

君もおいで?と手を伸ばされると、失笑しちゃいそうになる。

(だって、ゼアロンさんには想い人がいるのに…)

よくはないと分かってても断れない雰囲気だ……。
ゼアロンさんは、あれだもんね。すっごく空気を読むタイプだから……ユリアのわがままに答えてあげなきゃ。


「ん゛、んんっ、… しょうがないなぁ」

分かってて、やっぱり俺は、ずるいんだ。
ユリアの無邪気さに甘えるように、寄り添って目を閉じる。


「おやすみ」


やさしく重なる、夜の挨拶。

とてつもない安心感があった。



しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

贖罪公爵長男とのんきな俺

侑希
BL
異世界転生したら子爵家に生まれたけれど自分以外一家全滅という惨事に見舞われたレオン。 貴族生活に恐れ慄いたレオンは自分を死んだことにして平民のリオとして生きることにした。 一方公爵家の長男であるフレドリックは当時流行っていた児童小説の影響で、公爵家に身を寄せていたレオンにひどい言葉をぶつけてしまう。その後すぐにレオンが死んだと知らされたフレドリックは、以降十年、ひたすらそのことを悔いて生活していた。 そして十年後、二人はフレドリックとリオとして再会することになる。   ・フレドリック視点は重め、レオン及びリオ視点は軽め ・異世界転生がちょいちょい発生する世界。色々な世界の色々な時代からの転生者の影響で文明が若干ちぐはぐ。 ・世界観ふんわり 細かいことは気にしないで読んでください。 ・CP固定・ご都合主義・ハピエン ・他サイト掲載予定あり

処理中です...