巻き込まれた脇役は砂糖と塩と共に

田舎

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2章 脇役と不死の王龍

唐揚げの妖精さんとユリア

瘴気に怯えてもどうすることもできなかった人々は、”聖女降臨”という大魔法を編み出した。
それは、『救済』という数多の願いを叶えるために、世界だけでなく宇宙をも駆け巡り、「聖女」として相応しい人物を探す。

そして今回、”日本”という国で「彼女」という人間を見つけた。
――――しかし、聖女を招こうとした時、あろうことか異物がくっついてきた。


「その異物って……もしかして俺、だよね?」
「……我らは異物を虚無に落とそうとした。しかし、できなかった。我らの一部を…身内と間違えて、ずっと手を握っていたから」

”絶対に、妹を離さない”と強く願う、純粋な気持ちだ。
異物シオウを排除しなければならないと判断する一方、無垢な感情が希望に湧いた。

誰かに救われたい願望の手前にあった、”誰かを救いたかった”、”守りたい”。どんな困難にだって立ち向かいたい。
――とっくの昔に挫折していた想いが、動いた。

「我らは、嬉しかった。嬉しくて嬉しくて…、サトシオウの中に入ったの。そうすれば、アナタという存在が虚無に落とされないと判断した」
「つまり、君が… 君たちが、俺をこの世界に連れてきたって事でいいんだよな?」
「うん。でもね、問題もあったの」

選ばれたのではなく、強引に連れてきたせいだ。
シオウは魔力がゼロになっただけでなく、言葉も理解できなくなってしまった。

「……それで? 俺を連れてきて、どうしてほしかったんだ?」
「何も」

聖女降臨を終えたことで本体は還った。このまま消えるまでシオウの中で眠るつもりだった。
しかしある日、強い力によって弾かれた。
マクミランでやったステータス鑑定。その魔石の力によって、シオウの中から追い出された。
「ソレ」は、最も小さな”微精霊”として新たに誕生した。

『おはよう、ママ』

微弱すぎて誰にも感知されない。
装置としての記憶もない。
唐揚げが大好きな存在として、ただシオウのそばにいたくて…。

「唐揚げの妖精さんなんて変な名前だと思うけど、大好きな名前」
「……」
「ずっと傍にいるつもりだったの。なのに悪者がママを、死の森の深層部に転送しようとした。二度と戻ってこられないように」

そして転移魔法の光を見たとき、シオウにしてしまった自分の”罪”を思い出した。
転移魔法の発動を止める魔力はなくとも、ありったけの力で転送先の位置と少しの時間をずらした。

僅かな調整でも……シオウが、助かるように願い

その後は、再びシオウの体の中で眠りについた。

「まってよ、罪だなんて…!全部、俺を助けようとしてくれたのに!」
「ちがう…っ、我は自我のない精霊だ。それに…娘なんて、嘘じゃ、嘘なのよ。すべてが、…模倣じゃ!」

首を振って否定する。
ユリアの嘆く声に、心臓が止まりそうだった。

――――模倣だと、繰り返す。

オルベリオンの眷属になり、大精霊として顕現できる力を得たユリアは、シオウの記憶を参考にして「自分」を作ったのだ。

シオウが大切にした肉親が妹だったから、”女”。
髪と目の色は、シオウが最も尊敬する人のものを選んだ。
ママとパパと呼ぶのは、幼い頃にそう呼びたい気持ちを抑えていた記憶から。
性格が高飛車なのも、”妹ならそうでもいい”と願っていたから。
――「健やかで、元気であってほしい」という願い。

すべてが、
再会したとき、シオウに親近感を持ってもらうために。


「我は、アナタたちの友でも家族や娘でもなく、なんでもないのに…っ!ただ…欲した。家族になりたい、欲しいって思っちゃった……」
「っ、いいんだよ!精霊でも妖精でも、当たり前に家族を願ったって悪くないじゃんか!?それにユリアが俺の境遇に合わせなくたって、俺はッ」

どうか、罪なんて感じなくていい!
強引だったとかも思わなくていい!

どうか、悲しい顔をしないでほしい。
泣かないでほしいんだ。

「涙が、止まらないの。我は、精霊…。構造もなにもかもが、人間とは違うのに…。ぱ…、ゼアロルドを、許せなくて、くるしいのっ」
「――――っ」
「なんで、我らを捨てたのか…!」

精霊は”感情を持たない”、”気まぐれで動く”――そう教えられてきた。
けれど違うんだ。
ユリアは唐揚げの妖精さんになってから、ずっと人間と暮らしてきた。

「人の気持ちに触れて、感情を覚えて、それが複雑すぎて分かんなくなっちゃったんだよな?」

ゼアロンさんが突然いなくなったことで、ユリアは”寂しさ”と”怒り”を学んだ。
マイナスの感情に触れて、怖くなってしまったんだ。
だから、前から抱えていた罪悪感や悲しみが、いま一気に溢れている。
だったら、俺は……。

「ありがとう。……俺を助けてくれて」

ありがとう。って伝えたい。

「君の中にたくさんの人の気持ちがあるんなら、俺はその全員に感謝するよ」
「―――っ、でも」
「大丈夫、怖くないよ。その感情はあっていいものだ」

だって、俺も同じこと思ってるし!
ほんとは、ゼアロンさんに枕でも投げつけてやりたいよ。

「君は俺の恩人で最高の友達"唐揚げの妖精さん"で、自慢のユリア”娘”だ!」

ゼアロンさんも同じことを言ってくれたと思うんだ。

そうだよ。俺がこの世界で一番尊敬した、あの人が

ユリアの存在を受け入れてた。


「……ほんと?我に力が足りなくて、ママに…いっぱい、いっぱい嫌な想いをさせちゃったのに…?」
「ううん、そんなことない」

いくらでも否定してやる。

「どこにも俺を傷つけた君はいないんだよ。いつも弱い俺を守ってくれて、助けてくれて本当にありがとう」
「ママッ」
「大好きだよ。俺もゼアロンさんも、君たちが大好きだ。絶対嫌ったりしない」

強く、抱きしめてくれる。

ゼアロンさんも、俺によくこうしてくれた。

俺は、そこまで大きな存在じゃないけど、ユリアくらいの体なら包みこんで抱きしめるくらい出来る。



「…う゛んっ、――――ママ!、わたしも、だいすき……」



鼻水と涙を浮かべながらも、

そこには、きれいに笑う少女がいてくれた。






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