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1章 脇役は砂糖と塩と共に
落騎士一行とエンカウント
しおりを挟む一体、どれくらいの距離を歩いたんだろ…………
「ほんと立派だけど、君たち何百歳なの?」
返事などあるものか、話し相手は俺の身長の倍以上ある高い樹木だ。まるで俺が小人にでもなったような感覚だ。
お城の台所にはいたけど森の妖精さんはいないのか…と、しょんぼり落ちる肩。
高い樹木たちは立派な枝をこれでもかと天高く伸ばし、生やした緑色の葉は空の光を覆い隠す。そのせいで森全体が鬱蒼としていて、どっちに行っても正しい方角などない気がした。
【時間の感覚がない】.
――――――――ゾッと、味わったことのない恐怖に鳥肌が立つ。
(そもそも俺がいる場所は… …?)
それもシオウには分からない、知らない。
聖女として基礎教養を学び出した妹の真里亜とは違い、シオウはこの世界の地図すら見たことがない。
さらに仕組みは謎だが、この世界には地球から二人を誘拐してきた魔法技術が存在している。もしもその転送魔法を多用できるのなら、どこぞの山奥にシオウだけを置き去りにすることくらい可能だろう。
無事に城に帰れるかってことよりも、森を抜け出せるかも分からない。
その不安でいっぱいになっていた。
(……おれ、恨まれるようなことした覚えないのに…)
ダメだ……、心細いと弱気になってしまう、歩けなくなる。
ぶんぶんと頭を振って、いったんこの場から動くことにした。
ざっ、ざっ…
足音は俺の一つだけ。
不気味なことに、こんなに緑に満ちているのに鳥の鳴き声一つない。野生動物と遭遇することもない。あるのは静けさと、どこを歩いても似た景色。
せめて川を見つけられたらと思うのに………… 完全に俺を遭難させるのが誘拐犯の目的だったのか。陰湿すぎる。
?
体感にして一時間くらい歩いたところで、足を止めた。
(なんだ、向こうで何か、光ったような気がする……?)
それは気のせいではなかった。少し離れた先でキラッ、チカッと僅かな太陽の光に反射する物体が見える。
そろそろ余計な体力を消耗しない方がいいと思うが、気にはなる。
ゆっくりと光を追うように近づけば、それは
ひ、人だ―――!
(…………!)
しかし助けを求めるよりも先にパシッと口を手で覆い、木の陰に隠れた。
な、なんだ…………?
遭遇したのは森に住まうエルフでも山賊でもなかった。
銀色の鎧を着た十人以上はいそうな大人達が、ぐったりとしている現場だった。
返り血に汚れた鎧、地面に寝かせられた重症者らしき人、頭に鎧を被っていない何人かは生気の失せた顔色をしているが、腰には鞘に納めた剣がある。
どうやらチカチカ光っていたのは太陽の光に反射していた剣か鎧だった。
「ーーーーっ、」
バクバクと冷え切った心臓がうるさい。
………偽物だと思いたいけど
あんな…、大きな剣に突き刺されてみろ。確実に死ぬ。
ゆっくり、ゆっくりと… 後ずさる足腰。
「xxx、…xxx…」
「あぁ、…分かった」
ポソポソと聞こえてくる会話。
どうやらここはまだあの異世界のようだけど、安心とは程遠い。
大丈夫…、休憩中の彼らは俺に気づいていない。
(落武者なのか…?風貌は騎士っぽいけど)
いやいや、単なる和か洋の違いだ。
助けを求めたいけど俺の語彙も足りないし、声をかけるのは避けた方がいい、絶対に
ーーー落ち着け、いったん離れよう… 慎重に、落ち、
パキッ、
踏んだ枯れ枝が音を立てた。
(……俺の、ばか)
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