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1章 脇役は砂糖と塩と共に
この過酷なサバイバルを生き抜く
しおりを挟む全員に警戒された。
まぁそうだよねぇ、この見た目じゃ"白い粉"で怪しさ満点だ。
なので俺は砂糖をお湯に溶かして自ら飲む。無害だと証明するために。
あぁ… この口の中に広がる優しくてほどよい甘さよ。器の鉄臭さを包み隠し、疲れ切った体を癒して……って、危ない!つい一気飲みしそうになっていた!!
「あ、甘くて美味しいよ?」
「甘いのか…?」
うんうんと必死に頷く。片言の異世界言葉でもコミュニケーションはとってきたんだ、とくに食事に関することは。
「お願いだ、誰か一人でいいから口をつけて欲しい」
真っ直ぐに差し出す器。
言った言葉も意味も伝わらなくていい、せめて懇願する俺の姿を理解しようとしてくれたなら…
俺は、彼らの素性なんて知らないけど、助けたいと心から思っている。
だって彼らは迷子の俺を見捨てなかった、この森の植物が毒だと教えてくれた。
なにより貴重な食事(水分)を分け与えてくれたんだ。
そっと器を手に取ったのは隊長さんだったが、それを体格の一番いい男が制止させ、代わりにグイッと……
「ーーーーーー!!!」
この俺の一風変わった調味料体質(加護)は、限界だった状況に奇跡を起こした。
それからも俺はひたすらジェスチャーを繰り返して火を起こしてもらった。
少量の水だけでいい、あとは砂糖を入れてグツグツと煮込むと水飴とベッコウ飴の完成だ。つまり食べものが出来たのだ。
「XXX…!!ありがとう!!」
「―――――っ、俺も、ありがとう、ありがとう!」
何度も何度も繰り返された感謝の言葉。
俺もオウム返しみたいになったけど、心の底から異世界の言葉で返した。
そして、砂糖だけじゃ足りない。
今の俺は突然現れた怪しい人間から、奇跡を起こした恩人となった。今がチャンスなんだ。
(俺は生き残る)
まだ続くであろうサバイバルにおいて、調味料を出せる俺を彼らは守ってくれる。少なくとも森を抜けるまでは絶対に。
………なら、加護の出し惜しみなんてしていられない。
「右手からは塩も作れますがどうですか、お兄さんたち?今なら安くしておきますよ!?」
人間にはミネラルも必要だよね!?と塩を出した事で、彼らの顔色が変わった。
「え゛!?」
予想外だった。彼らはそれが塩だと分かると、さっき毒だと言っていた緑色の草を引きちぎった。
そして、俺が出したたくさんの塩を水に入れてブクブクと熱湯になったところで毒草を投入。すると見る見るうちに草が溶けて……
「え、なんか急に紫色になったけど大丈夫なの!?」
「はは」
いま俺の慌てぶりを笑うところじゃないよな!?
そこに水飴を入れると、今度は透き通るマスカット色へと変わった。こうして完成したのは、どろっどろした不思議な液体。
「XXX…!イーリエ」
「え、それ、え??」
出来上がった謎の液体を冷ますと、隊長さんは優しい動作で一人の男を抱き起こした
華奢なその人は一番の重症人で、火傷なのか病気なのか全身に包帯を巻かれて常に担架で運ばれている。
「イーリエ」
「ぅ、ゔぅ…、」
緊張の中、俺には見守るしかないけど、他にもいるぐったりとした人には液体を飲ませて、動ける人は傷口にそれを塗る。
どうやら俺の加護により回復薬兼傷薬ができたらしい。
え、本当??毒薬転じて薬となるって耳にしたことはあるけど、材料が砂糖と塩だけでいいの??
「だ、大丈夫??本当に大丈夫なのか?」
「XXX、大丈夫、ありがとう」
心配ないよ。その声にはさっきまであった緊張や固さはない。
それに隊長さんの、顔まで覆うヘルメットの隙間から見える不思議な色をした瞳に優しく微笑まれた。
「………うん。よかった」
俺も安心して微笑みを浮かべられた。
こんな状況なのに、はじめて人に役立てたことが嬉しくて、少しだけ自分を誇らしいと思えた。
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