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2章 脇役と不死の王龍
シオウとゼアロルド
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『遊んでくる!』と、ユリアは夜でもお構いなしに飛び出していった。
「遅くならないようにね」って言ったけど、きっとロインさんのところだ。
今日も忙しかったみたいだし、迷惑かけてないといいけど……。
こうしてユリアを任せられるおかげで――俺とゼアロンさんの二人きりだ。
ゼアロンさんは机に向かって、書類仕事の真っ最中。
俺はベッドの上で正座中だ。
(忙しい?今、話しかけていいのかな……)
普段なら迷わないのに、ユリアが妙なこと言うから、もう落ち着かない。
……えぇい、迷ってもしょうがない!反応見て決めよう!
「ひ、久しぶりだね。二人っきりなんて」
「そうだね。ユリアがいないと静かだ」
返事があった!
それに、わざわざ手を止めずに話してくれる。優しい。
「ゼアロンさん、ずっと忙しいんじゃない? 隊長の仕事って……すっごく大変だよな? ユリアが、俺も、その――」
「……シオウ?」
「う、うぅっ。なんでもありません!」
――あっれぇ?おっかしいなぁ。
もっと話したいのに、俺の語彙力が足りなすぎる。
これで……会話終了?
「いやいやっ!あの、ゼアロンさんっ!」
「はい」
返事はあっても俺に続く言葉がない。
今までなら、もっと会話が続いたのに。
こんな気まずさとも、無縁で……。
『――パパがいじけてる』
ユリアの言葉がよぎる。
ゼアロンさんがいじける?拗ねている?そんな風に感じたことはない。
仮にそうでも、その理由はなに?
ユリアに聞いたけど教えてくれなかった。ママが聞いてと。
「あ、あの…」
ああ゛~~!詰んだ…!
名前を呼んでおきながら、何も言えない。
ユリアが来る前、俺ってこの人とどうやって過ごしてたっけ……?
「シオウ?なにかあるなら」
「……ゆ、ユリアが変なこと言うんだ」
「ユリアが?」
「そう。ゼっ、ゼアロンさんが……さ、寂しいって!」
「はあ!?」
最悪だ……。
"拗ねてる"ってエルナ語が分かんなくて"寂しい"の表現を使ってしまった。
うん、絶対違うね。間違えた。
心配してくれたのか、ゼアロンさんが椅子から立ち上がって、俺の方へ近づいてくる。
「えっと……な、なにかできることない?俺に!」
「それなら」
「あ、いつもの手伝いじゃなくて!ゼアロンさんに!」
頼む!分かりやすく指差したんだから伝わってくれ!
……が、沈黙。
ゼアロンさんは腕を組んで、真剣に考え始めてしまったよぉ。ごめんなさい……。
ズンっと沈みそうだ。
俺がゼアロンさんにしてあげられることって、探す方が難しいよね。
「ゼアロンさん」
「シオウ。すまないが、膝を貸してくれないか?」
「貸す……って、俺の膝を?」
「あぁ」
うなずかれた!
”膝”、貸す…”貸して”―――なるほど、膝枕かな!?
「はい!どうぞ!」
いそいそとベッドの頭元まで移動してウェルカム!!!
招くと大正解だった。
さっそくゴロンって、ゼアロンさんが寝転がってきた。
はは、なんか大型犬みたいだな。
(………って、なんで???)
つい嬉しくって疑問に思わなかったけどさ?
ゼアロンさんを膝枕している。
誰がって、俺が………。
ゴクリと喉が鳴る。
ちらっと下を見れば、甘栗色の髪。長い睫毛。凛々しい横顔。
すっんごいイケメンを前に、俺は身動き一つとれない。
「あー…かなり、疲れてる?」
「あぁ」
「ですよねぇ、隊長さんって大変だもんな。みんなの面倒を見て、俺とユリアの世話もして……」
好きな子にも会えないくらい、毎日忙しいんだろう。
(……俺がいるせい?とかってある?)
せいまでいかなくても、要因の一つになってる可能性はある。
まいったなぁ……。
けど、頃合いなのかもしれない。
品質保証してもらったおかげで、塩と砂糖が売れることが分かったんだ。俺はそろそろ自立を優先するべきだと思う。
ずっと騎士舎にはいられない。
それに、いつかこの国を出て妹と再会する目的があるんだ。
「……シオウ。大丈夫か?」
「はい…!ありがとうございます!ゼアロンさんは大丈夫?」
「ああ、ありがとう」
そっと伸ばされた手が、俺の頬を優しく撫でる。
(ゼアロンさんの手って、ちょっと硬いんだ)
きっと、鍛錬を含めて普段から剣を握っているせいだな。
けど、あったかい。
安心感しかない。
俺はこの人の手に、何度だって頼りたくなる。
「触れることを許してほしい」
「これくらい、いつでも」
言葉の先は、出せなかった。
だって――貴方を癒す役目は、俺じゃないから。
言葉の代わりに、そっとその頭を撫でてみた。
「もっと……ここにいたいなぁ」
ゼアロンさんには通じない日本語で、ぽつりと呟く。
「シオウ。俺もだ」
「ん? ゼアロンさんも?」
「あぁ。少し、疲れたらしい」
”疲れる”の単語は、はっきりと聞き取れた。
初めて聞いたゼアロンさんの、小さな弱音だ。
それは誰だって使うのに……
ゾワっと、背中に小さな寒気が走った。
なんでだ?
なんで急に……貴方が小さく見えてしまうのか。
不安で、胸の奥が苦しい。
「ゼアロンさんっ、これお守りです!」
「………これは、魔石?」
咄嗟にポケットの中に入れていた”空白の魔石”を差し出してしまった。
ハズレ魔石と言われて悩んだけど、
「俺にはゼアロンさんを守れないし、そんな力もない。だけどこの石はミンデさんが磨いてくれて、なによりユリアのお墨付きだ!貴方を守ってくれるよ!た、たぶん~だけど!」
「はは、ミンデの真似かい?」
俺の言葉が伝わんなくてもゼアロンさんは楽しげに笑ってくれる。
俺だって…… はじめてこの魔石を見たとき
――――ピンときた。
ゼアロンさんに、渡したいって。
「ありがとうございます、シオウ」
「へへへ」
「シオウ」
「は、はいっ!」
――な、なんだろ。ドキドキする。
だけど……あの、その……。
「シオウ、俺は――」
コンコン、と外からノックの音が響いた。
「ひゃいっ!」と返事してしまったのは俺だ。
こんな夜に珍しい。
ゼアロンさんが呼ばれるなんて……。
「すまない、少し出てくる」
「あっ……いってらっしゃい!」
静かになった部屋で、俺は軽くなった膝をじっと見つめていた。
「……び、びっくりした…!」
心臓が、まだバクバクしてる。
(い、今……キスされるかと思った……!!)
や、やだ!そんなわけないだろ!!
はーーやだやだ!俺が女の子だったら確実に勘違いしてたよ!!
まったく、これだからイケメンは罪深い……!
「それより、何を言おうとしたんだろ……」
ま、戻ってきたら聞こう。
そう思って――待っていた。
……けれど、ゼアロンさんは
戻ってこなかった。
「遅くならないようにね」って言ったけど、きっとロインさんのところだ。
今日も忙しかったみたいだし、迷惑かけてないといいけど……。
こうしてユリアを任せられるおかげで――俺とゼアロンさんの二人きりだ。
ゼアロンさんは机に向かって、書類仕事の真っ最中。
俺はベッドの上で正座中だ。
(忙しい?今、話しかけていいのかな……)
普段なら迷わないのに、ユリアが妙なこと言うから、もう落ち着かない。
……えぇい、迷ってもしょうがない!反応見て決めよう!
「ひ、久しぶりだね。二人っきりなんて」
「そうだね。ユリアがいないと静かだ」
返事があった!
それに、わざわざ手を止めずに話してくれる。優しい。
「ゼアロンさん、ずっと忙しいんじゃない? 隊長の仕事って……すっごく大変だよな? ユリアが、俺も、その――」
「……シオウ?」
「う、うぅっ。なんでもありません!」
――あっれぇ?おっかしいなぁ。
もっと話したいのに、俺の語彙力が足りなすぎる。
これで……会話終了?
「いやいやっ!あの、ゼアロンさんっ!」
「はい」
返事はあっても俺に続く言葉がない。
今までなら、もっと会話が続いたのに。
こんな気まずさとも、無縁で……。
『――パパがいじけてる』
ユリアの言葉がよぎる。
ゼアロンさんがいじける?拗ねている?そんな風に感じたことはない。
仮にそうでも、その理由はなに?
ユリアに聞いたけど教えてくれなかった。ママが聞いてと。
「あ、あの…」
ああ゛~~!詰んだ…!
名前を呼んでおきながら、何も言えない。
ユリアが来る前、俺ってこの人とどうやって過ごしてたっけ……?
「シオウ?なにかあるなら」
「……ゆ、ユリアが変なこと言うんだ」
「ユリアが?」
「そう。ゼっ、ゼアロンさんが……さ、寂しいって!」
「はあ!?」
最悪だ……。
"拗ねてる"ってエルナ語が分かんなくて"寂しい"の表現を使ってしまった。
うん、絶対違うね。間違えた。
心配してくれたのか、ゼアロンさんが椅子から立ち上がって、俺の方へ近づいてくる。
「えっと……な、なにかできることない?俺に!」
「それなら」
「あ、いつもの手伝いじゃなくて!ゼアロンさんに!」
頼む!分かりやすく指差したんだから伝わってくれ!
……が、沈黙。
ゼアロンさんは腕を組んで、真剣に考え始めてしまったよぉ。ごめんなさい……。
ズンっと沈みそうだ。
俺がゼアロンさんにしてあげられることって、探す方が難しいよね。
「ゼアロンさん」
「シオウ。すまないが、膝を貸してくれないか?」
「貸す……って、俺の膝を?」
「あぁ」
うなずかれた!
”膝”、貸す…”貸して”―――なるほど、膝枕かな!?
「はい!どうぞ!」
いそいそとベッドの頭元まで移動してウェルカム!!!
招くと大正解だった。
さっそくゴロンって、ゼアロンさんが寝転がってきた。
はは、なんか大型犬みたいだな。
(………って、なんで???)
つい嬉しくって疑問に思わなかったけどさ?
ゼアロンさんを膝枕している。
誰がって、俺が………。
ゴクリと喉が鳴る。
ちらっと下を見れば、甘栗色の髪。長い睫毛。凛々しい横顔。
すっんごいイケメンを前に、俺は身動き一つとれない。
「あー…かなり、疲れてる?」
「あぁ」
「ですよねぇ、隊長さんって大変だもんな。みんなの面倒を見て、俺とユリアの世話もして……」
好きな子にも会えないくらい、毎日忙しいんだろう。
(……俺がいるせい?とかってある?)
せいまでいかなくても、要因の一つになってる可能性はある。
まいったなぁ……。
けど、頃合いなのかもしれない。
品質保証してもらったおかげで、塩と砂糖が売れることが分かったんだ。俺はそろそろ自立を優先するべきだと思う。
ずっと騎士舎にはいられない。
それに、いつかこの国を出て妹と再会する目的があるんだ。
「……シオウ。大丈夫か?」
「はい…!ありがとうございます!ゼアロンさんは大丈夫?」
「ああ、ありがとう」
そっと伸ばされた手が、俺の頬を優しく撫でる。
(ゼアロンさんの手って、ちょっと硬いんだ)
きっと、鍛錬を含めて普段から剣を握っているせいだな。
けど、あったかい。
安心感しかない。
俺はこの人の手に、何度だって頼りたくなる。
「触れることを許してほしい」
「これくらい、いつでも」
言葉の先は、出せなかった。
だって――貴方を癒す役目は、俺じゃないから。
言葉の代わりに、そっとその頭を撫でてみた。
「もっと……ここにいたいなぁ」
ゼアロンさんには通じない日本語で、ぽつりと呟く。
「シオウ。俺もだ」
「ん? ゼアロンさんも?」
「あぁ。少し、疲れたらしい」
”疲れる”の単語は、はっきりと聞き取れた。
初めて聞いたゼアロンさんの、小さな弱音だ。
それは誰だって使うのに……
ゾワっと、背中に小さな寒気が走った。
なんでだ?
なんで急に……貴方が小さく見えてしまうのか。
不安で、胸の奥が苦しい。
「ゼアロンさんっ、これお守りです!」
「………これは、魔石?」
咄嗟にポケットの中に入れていた”空白の魔石”を差し出してしまった。
ハズレ魔石と言われて悩んだけど、
「俺にはゼアロンさんを守れないし、そんな力もない。だけどこの石はミンデさんが磨いてくれて、なによりユリアのお墨付きだ!貴方を守ってくれるよ!た、たぶん~だけど!」
「はは、ミンデの真似かい?」
俺の言葉が伝わんなくてもゼアロンさんは楽しげに笑ってくれる。
俺だって…… はじめてこの魔石を見たとき
――――ピンときた。
ゼアロンさんに、渡したいって。
「ありがとうございます、シオウ」
「へへへ」
「シオウ」
「は、はいっ!」
――な、なんだろ。ドキドキする。
だけど……あの、その……。
「シオウ、俺は――」
コンコン、と外からノックの音が響いた。
「ひゃいっ!」と返事してしまったのは俺だ。
こんな夜に珍しい。
ゼアロンさんが呼ばれるなんて……。
「すまない、少し出てくる」
「あっ……いってらっしゃい!」
静かになった部屋で、俺は軽くなった膝をじっと見つめていた。
「……び、びっくりした…!」
心臓が、まだバクバクしてる。
(い、今……キスされるかと思った……!!)
や、やだ!そんなわけないだろ!!
はーーやだやだ!俺が女の子だったら確実に勘違いしてたよ!!
まったく、これだからイケメンは罪深い……!
「それより、何を言おうとしたんだろ……」
ま、戻ってきたら聞こう。
そう思って――待っていた。
……けれど、ゼアロンさんは
戻ってこなかった。
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