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2章 脇役と不死の王龍
脇役、逮捕される
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まだ名前の知らない世界にも、季節はある。
”地球”みたいに星の名前はあるはずなんだ。
だけど……その音は、聞き取れない。発音したいのに、うまくできないんだ。
(よっぽど、独特な発音なのかな…?)
なにか理由はあるのかもしれないけど、星の名前なんて普段の会話で困ることはない。
それより、俺と真里亜が来たのが「夏」で、今は「秋」にあたるらしい。
まだ薄着でも昼間を出歩けるくらいの気温だけど、ゆっくりと木々が色づいていくのは日本と変わらない。
落ちていたイチョウの葉に似た緑の若葉を、くるくると指先で回すシオウ。
「これは、確かマイの……や、ちょっと違う」
「それはララの葉だ。下痢止めや腸を整える薬になる」
「へぇ……俺にはどこにでもある葉っぱにしか見えないのになぁ。オズさんは博識ですね」
「貴様に褒められても、嬉しくないわ!」
ふん!と鼻を鳴らす仕草。
けれど慣れてくると、それもどこか照れ隠しのように見えてしまう。
―――――― 一人で旅立っていい。
あの夜。シオウは提案して、オズグもうなずいたように見えた。
しかし、翌朝になって態度が急変した。
『同行してやる』
オズグは鼻を鳴らし、腕を組んで見下ろすように言った。
しかもその理由が―――
『私は唐揚げの妖精様と取引している。精霊王に会える機会を逃すものか』……らしい。
シオウが何度も何度も確認したが、オズグは「しつこい」とだけ吐き捨て撤回はしなかった。
何が彼の心を動かしたのかは、いまだ謎のままだ。
ただ、あれほど忌々しげに呼んでいた“魔の者”という言葉を、オズグはもう口にしなくなっていた。
(……ちょっとくらい、打ち解けてくれたのかな?)
それを言ったって、本人は「違う」って否定だ。
”よろしくお願いいたします。”と、ほんのり温かくなった。
ヒューバートの飛行は驚くほど安定していた。
風を裂き、雲を抜け、急な突風にも微動だにせず、西へ。
途中の町や村で、休憩や旅の糧を補給する。
そして、そのたびに―――
「おばあちゃん、大丈夫?荷物、手伝おうか?」
「ええっ、友達が迷子になった!?探すの手伝うよ!」
「傷薬…!?あ、これでよければ…!」
シオウは、なぜか道草を食う。
◇ ◇ ◇
夕暮れ前。
町の片隅の食堂で、オズグは腕を組みふんぞり返っていた。
「おい。お前は、本当に西の塔を目指す気があるのか?」
「はい!もちろんです!」
「嘘を吐け!!」
叱るオズグの声だった。
「オズグ、ママは困ってる人を放っておけないのじゃ。それにママが手伝った礼に、ここの食事は無料ときた」
「はぁ……そうですが……」
オズグは額を押さえた。
飛竜を借りた意味がない!あれをうまく使えば、今ごろ砦付近には着いていた。
それなのにシオウは、夕方には飛竜を休ませて、町で困っている誰かがいれば首を突っ込む。
「これでは遠回りばかりだ。私は、やはり選択を間違えたかっ……」
「オズさん、すみません。あと今日も助かりました」
「…っ!貴様はいい加減、文字を覚えろ。何度怪しげな書類にサインを迫られている!?」
さらに叱られて、しょんぼりと身を小さくする。
でも俺が「エルナ語が読めないんです……」と困っていれば、いつの間にか横からオズさんが現れて書類を取り上げる。
「全く、貴様は子どもか」と呆れながらも助けてくれた。
「俺は、じいちゃんが『恩は売れるだけ売っとけ!』って口癖の人で、俺はリスペクトしてるんです」
「リスぺ……?意味は知らないが、そんなことを続けていると面倒に――」
―――バンッ!
「あの、すみません!この店に凄腕の薬師様がいると聞いたのですが、お心当たりのある方はいませんか!?」
乱暴に扉が開き、若い女性の悲痛な声が響いた。
―― そして現在。
俺はいま、警察の取調室みたいな部屋にいる。
(ん~~~~、オズさんの言う通りだったなぁ)
【面倒に巻き込まれるぞ】
息子が原因不明の高熱でうなされていると泣いて訴えた母親。
俺たちのいた飯屋に該当の薬師はいなかったけど、ちょうど風邪薬なら持っていた。
まだ食事中のユリアとオズさんに「すぐ戻るから!」と言い残して飛び出した。
薬を渡して、落ち着いた容態を見守って……。
問題は諸々あっての、帰りだ。
『――――――――そこの少年、薬師ならば証を持っているな?一体どこの所属だ』
はい、ブラックジャックだ……。
自警団に職質され、無免許があっさりバレてしまった。
(ん~~~~~~、まぁそうだよね!?)
俺も思う。
薬の知識も資格もない男が、勝手に薬を配ってるんだ。
………違法ドラッグをバラまいてる。売人と思われたって、しょうがない。
そして、取り調べだ。
「なるほど。薬草は旅の間に森で採取していると。で――聖水と塩、砂糖はどこで?」
「え? 聖水というか、水は綺麗な湧水で……塩と砂糖は、加護の」
「ふざけるな!!そんなもので、回復薬ができるわけがないだろ!!」
「――!? す、すみませんっ!」
バンッと机を叩かれ、心臓が跳ね上がった。
尋問官の鋭い視線に、背中が冷たくなる。
うっ、うっ…怖い。
嘘は吐いてないのに、人生初の取調べに恐怖と混乱で涙が出そうだ。
「取り調べ中に失礼します」
その時、扉が開き、ひとりの男が入ってきて耳打ちをした。
「な!?それ、は……!」
「?」
空気が一変した。
誤解が解けた?
釈放か? やった!と思ったのに、
「…………貴様を、“緑の監獄”に送る」
ではなかった。
”地球”みたいに星の名前はあるはずなんだ。
だけど……その音は、聞き取れない。発音したいのに、うまくできないんだ。
(よっぽど、独特な発音なのかな…?)
なにか理由はあるのかもしれないけど、星の名前なんて普段の会話で困ることはない。
それより、俺と真里亜が来たのが「夏」で、今は「秋」にあたるらしい。
まだ薄着でも昼間を出歩けるくらいの気温だけど、ゆっくりと木々が色づいていくのは日本と変わらない。
落ちていたイチョウの葉に似た緑の若葉を、くるくると指先で回すシオウ。
「これは、確かマイの……や、ちょっと違う」
「それはララの葉だ。下痢止めや腸を整える薬になる」
「へぇ……俺にはどこにでもある葉っぱにしか見えないのになぁ。オズさんは博識ですね」
「貴様に褒められても、嬉しくないわ!」
ふん!と鼻を鳴らす仕草。
けれど慣れてくると、それもどこか照れ隠しのように見えてしまう。
―――――― 一人で旅立っていい。
あの夜。シオウは提案して、オズグもうなずいたように見えた。
しかし、翌朝になって態度が急変した。
『同行してやる』
オズグは鼻を鳴らし、腕を組んで見下ろすように言った。
しかもその理由が―――
『私は唐揚げの妖精様と取引している。精霊王に会える機会を逃すものか』……らしい。
シオウが何度も何度も確認したが、オズグは「しつこい」とだけ吐き捨て撤回はしなかった。
何が彼の心を動かしたのかは、いまだ謎のままだ。
ただ、あれほど忌々しげに呼んでいた“魔の者”という言葉を、オズグはもう口にしなくなっていた。
(……ちょっとくらい、打ち解けてくれたのかな?)
それを言ったって、本人は「違う」って否定だ。
”よろしくお願いいたします。”と、ほんのり温かくなった。
ヒューバートの飛行は驚くほど安定していた。
風を裂き、雲を抜け、急な突風にも微動だにせず、西へ。
途中の町や村で、休憩や旅の糧を補給する。
そして、そのたびに―――
「おばあちゃん、大丈夫?荷物、手伝おうか?」
「ええっ、友達が迷子になった!?探すの手伝うよ!」
「傷薬…!?あ、これでよければ…!」
シオウは、なぜか道草を食う。
◇ ◇ ◇
夕暮れ前。
町の片隅の食堂で、オズグは腕を組みふんぞり返っていた。
「おい。お前は、本当に西の塔を目指す気があるのか?」
「はい!もちろんです!」
「嘘を吐け!!」
叱るオズグの声だった。
「オズグ、ママは困ってる人を放っておけないのじゃ。それにママが手伝った礼に、ここの食事は無料ときた」
「はぁ……そうですが……」
オズグは額を押さえた。
飛竜を借りた意味がない!あれをうまく使えば、今ごろ砦付近には着いていた。
それなのにシオウは、夕方には飛竜を休ませて、町で困っている誰かがいれば首を突っ込む。
「これでは遠回りばかりだ。私は、やはり選択を間違えたかっ……」
「オズさん、すみません。あと今日も助かりました」
「…っ!貴様はいい加減、文字を覚えろ。何度怪しげな書類にサインを迫られている!?」
さらに叱られて、しょんぼりと身を小さくする。
でも俺が「エルナ語が読めないんです……」と困っていれば、いつの間にか横からオズさんが現れて書類を取り上げる。
「全く、貴様は子どもか」と呆れながらも助けてくれた。
「俺は、じいちゃんが『恩は売れるだけ売っとけ!』って口癖の人で、俺はリスペクトしてるんです」
「リスぺ……?意味は知らないが、そんなことを続けていると面倒に――」
―――バンッ!
「あの、すみません!この店に凄腕の薬師様がいると聞いたのですが、お心当たりのある方はいませんか!?」
乱暴に扉が開き、若い女性の悲痛な声が響いた。
―― そして現在。
俺はいま、警察の取調室みたいな部屋にいる。
(ん~~~~、オズさんの言う通りだったなぁ)
【面倒に巻き込まれるぞ】
息子が原因不明の高熱でうなされていると泣いて訴えた母親。
俺たちのいた飯屋に該当の薬師はいなかったけど、ちょうど風邪薬なら持っていた。
まだ食事中のユリアとオズさんに「すぐ戻るから!」と言い残して飛び出した。
薬を渡して、落ち着いた容態を見守って……。
問題は諸々あっての、帰りだ。
『――――――――そこの少年、薬師ならば証を持っているな?一体どこの所属だ』
はい、ブラックジャックだ……。
自警団に職質され、無免許があっさりバレてしまった。
(ん~~~~~~、まぁそうだよね!?)
俺も思う。
薬の知識も資格もない男が、勝手に薬を配ってるんだ。
………違法ドラッグをバラまいてる。売人と思われたって、しょうがない。
そして、取り調べだ。
「なるほど。薬草は旅の間に森で採取していると。で――聖水と塩、砂糖はどこで?」
「え? 聖水というか、水は綺麗な湧水で……塩と砂糖は、加護の」
「ふざけるな!!そんなもので、回復薬ができるわけがないだろ!!」
「――!? す、すみませんっ!」
バンッと机を叩かれ、心臓が跳ね上がった。
尋問官の鋭い視線に、背中が冷たくなる。
うっ、うっ…怖い。
嘘は吐いてないのに、人生初の取調べに恐怖と混乱で涙が出そうだ。
「取り調べ中に失礼します」
その時、扉が開き、ひとりの男が入ってきて耳打ちをした。
「な!?それ、は……!」
「?」
空気が一変した。
誤解が解けた?
釈放か? やった!と思ったのに、
「…………貴様を、“緑の監獄”に送る」
ではなかった。
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