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たなばた
しおりを挟む――――憂鬱だ。
どんよりとした雲が空を覆い隠している。
クラスの女子が「今年も天の川が見えないね」なんて言っていた気がする。
どうしてだろう?
最近、クラスメイトと目が合うとスッと向こうから逸らされてしまうのは。
過ごしやすくはなったけれど逆に違和感しかない。
前のようにワザとぶつかられたり、聞こえる様な嫌味を言われたりもなくなった。
(けど、俺にそんなこと確かめられるような友達なんか…いないし…)
淡い期待は先輩の事だったけれど、あの人は…そんなことしてはくれない。
それくらい痛いほど分かっていた
『今日、家にいってもいい?』
気が付いたら菊池にメッセージを送っていた。
そんな自分に腹が立つけれど、色んなモヤモヤや憤りを全ての元凶である彼へとぶつけたかった。
「いらっしゃい」
「……お邪魔、します」
築10年以上の物件。ひとり暮らしの菊池は普段ならバイトに出かけているはずなのに、チャイムを鳴らす前に自然と扉が開いた。
驚いた顔をすると、しれっとした顔で「今日は休んだよ」と笑う彼。
なんだよ。はじめて使う合鍵を握りしめていた俺が情けないじゃないか…
手は少し震えていたけど。
「歩から会いたいなんて初めてだね。嬉しいなぁ」
ニコニコと笑っているはずなのに、内心はきっと俺がどういう心境で此処へ来ているのか分かっているらしい。
さっきから少しも目が笑っていない。
「バイト…よかったの?」
「うん。連絡来た時、体調悪いから休むって連絡しといた」
「……ごめん」
これはただの社交辞令。
別に彼にたいして悪いなんて一つも思っていない…けど、
「他の人に、迷惑かかったんじゃ…」
普段は真面目にバイトに行っている菊池だ。まさか仮病を使うなんて予想はしていなかった。
俺は一人でバイトが終るまで待つつもりだったのに…。
「恋人が頼ってきてくれたのに無視する理由なんかある?」
「………」
「大丈夫。ちゃんとバイト先には謝るし、今度誰かの埋め合わせをすればいいだけだから。ね?」
「あ、そう…」
誰が誰の彼氏だ、恋人だ。
やっぱり彼は頭がおかしい。
そんなことを考えていると、いきなりタオルを頭からかぶせられた。
「っ、ちょっ…なにっ?」
「なにって雨降り始めたんだろ?髪の毛と肩、濡れてるし」
「っ、」
「寒くない?」
最近の彼はちょっと前までと違っておかしい。
俺が自分自身を傷つけてから、まるで壊れ物を扱うかのように優しくなった。と、同時にまるで…
俺に怯えているかのような目の色をする。
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