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敗残
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気が付いたら、俺は富士山丸の船倉に寝かされていた。
隣に近藤さんと山崎が寝ていた。
山崎は瀕死の重傷らしく、呻きっぱなしだった。
近藤さんの右肩は厚く包帯が巻かれている。
右腕はまったく使えないようだった。
激痛に耐えているが、寝返りも打てない。
俺はどうしてここに居るんだ!
広い船倉は負傷兵で足の踏み場もない。
すべて重傷者ばかりである。
ほとんど傷の手当ても受けていない。
気が付いた俺に近藤さんが言った。
「気が付いたか」
「戦いは、どうなったんです!」
俺の口から最初について出た言葉がこれだった。
「幕府軍の惨敗だ!」
衝撃だった!
伏見では形勢不利だったが・・・まさか、惨敗とは!!
「この船には将軍慶喜公と守護職容保公、御老中の板倉勝静、酒井忠淳御両名も乗船しておられる」
「幕府軍の主力一万五千はどうなったんです!」
「まだ淀と大阪で戦っている」
俺は仰天した。
将軍と重臣たちが、こともあろうに兵を捨てて逃げだしたのか!
俺は起き上がろうともがいたが、だめだった。
どこも傷を受けた様子はないが、すでに立つ体力がなかった。
それでも刀にすがって、必死で体を起こした。
「戻ります!!」
「馬鹿を言うな!」
近藤さんが怒鳴った。
「だってまだ味方が戦っている!」
「船は天保山を出て半日になる。間もなく紀州沖だ」
「将軍、守護職自らが敵前逃亡ですか」
「逃亡ではない。戦線を立て直し、再起を計るんだ」
「どこへ向かってるんですか」
「江戸だ!江戸で慶喜公は軍を再編する。軍勢を立て直せば、まだ勝機はある!」
「主力一万五千を見殺しにしておいて、勝機もないでしょう!!まだ戦う気があるなら、即刻引き返して陣頭に立つべきです!」
「遅い!敵に錦の御旗が立った!これに向かえば朝敵だ!」
俺は思わず唇を噛んだ。
「土方さんや他の隊士はどうしたんです」
「井上は昏倒したお前を助けようと出撃したが、十二名の隊士もろとも全滅した!」
絶句した!
井上源三郎さんが俺のために戦死!!
そうか、俺が昏倒している間に様々なことがあったんだ。
山崎の辛い呻きに耐えかねて俺は言った。
「医者はいないんですか!」
「御典医松本良順は、兵とともに大坂に残った」
なぜ俺を運んできた!なぜ俺を船に乗せた!!
俺は伏見で死にたかった!
近藤さんに対しても土方さんに対しても、腹の底から怒りが込み上げてきた。
この船に乗っている者たち全員斬りたかった。
恥を知れ!!
武士として人間として、裏切り者の恥を知れ!!
「元気になったか」
声がして洋式軍装姿の土方さんが、階段を下りて来た。
俺は刀を引き付けてにらんだ。
殺気が土方さんに分かったようだ。
「近藤さんから聞いただろう。お前を前線から助け出すために、隊士十数名が戦死した。彼らはお前のために、自ら弾の嵐の中へ飛び込んで行った」
一言もなかった。
こんな体で出撃したことが仲間に多大な犠牲を強い、結果として俺も敵前逃亡となったのだ。
気が付いたら泣いていた。
熱い涙があふれた。
俺は生まれて初めて、その夜一晩泣いていた。
敗残の屈辱よりも、俺のために犠牲になった仲間と、置き去りにした味方に対して泣いた!
隣に近藤さんと山崎が寝ていた。
山崎は瀕死の重傷らしく、呻きっぱなしだった。
近藤さんの右肩は厚く包帯が巻かれている。
右腕はまったく使えないようだった。
激痛に耐えているが、寝返りも打てない。
俺はどうしてここに居るんだ!
広い船倉は負傷兵で足の踏み場もない。
すべて重傷者ばかりである。
ほとんど傷の手当ても受けていない。
気が付いた俺に近藤さんが言った。
「気が付いたか」
「戦いは、どうなったんです!」
俺の口から最初について出た言葉がこれだった。
「幕府軍の惨敗だ!」
衝撃だった!
伏見では形勢不利だったが・・・まさか、惨敗とは!!
「この船には将軍慶喜公と守護職容保公、御老中の板倉勝静、酒井忠淳御両名も乗船しておられる」
「幕府軍の主力一万五千はどうなったんです!」
「まだ淀と大阪で戦っている」
俺は仰天した。
将軍と重臣たちが、こともあろうに兵を捨てて逃げだしたのか!
俺は起き上がろうともがいたが、だめだった。
どこも傷を受けた様子はないが、すでに立つ体力がなかった。
それでも刀にすがって、必死で体を起こした。
「戻ります!!」
「馬鹿を言うな!」
近藤さんが怒鳴った。
「だってまだ味方が戦っている!」
「船は天保山を出て半日になる。間もなく紀州沖だ」
「将軍、守護職自らが敵前逃亡ですか」
「逃亡ではない。戦線を立て直し、再起を計るんだ」
「どこへ向かってるんですか」
「江戸だ!江戸で慶喜公は軍を再編する。軍勢を立て直せば、まだ勝機はある!」
「主力一万五千を見殺しにしておいて、勝機もないでしょう!!まだ戦う気があるなら、即刻引き返して陣頭に立つべきです!」
「遅い!敵に錦の御旗が立った!これに向かえば朝敵だ!」
俺は思わず唇を噛んだ。
「土方さんや他の隊士はどうしたんです」
「井上は昏倒したお前を助けようと出撃したが、十二名の隊士もろとも全滅した!」
絶句した!
井上源三郎さんが俺のために戦死!!
そうか、俺が昏倒している間に様々なことがあったんだ。
山崎の辛い呻きに耐えかねて俺は言った。
「医者はいないんですか!」
「御典医松本良順は、兵とともに大坂に残った」
なぜ俺を運んできた!なぜ俺を船に乗せた!!
俺は伏見で死にたかった!
近藤さんに対しても土方さんに対しても、腹の底から怒りが込み上げてきた。
この船に乗っている者たち全員斬りたかった。
恥を知れ!!
武士として人間として、裏切り者の恥を知れ!!
「元気になったか」
声がして洋式軍装姿の土方さんが、階段を下りて来た。
俺は刀を引き付けてにらんだ。
殺気が土方さんに分かったようだ。
「近藤さんから聞いただろう。お前を前線から助け出すために、隊士十数名が戦死した。彼らはお前のために、自ら弾の嵐の中へ飛び込んで行った」
一言もなかった。
こんな体で出撃したことが仲間に多大な犠牲を強い、結果として俺も敵前逃亡となったのだ。
気が付いたら泣いていた。
熱い涙があふれた。
俺は生まれて初めて、その夜一晩泣いていた。
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