爆裂令嬢(ボンバーガール)は、あきらめない~科学チートで乙女ゲームを攻略するの! アタシを追放した悪徳貴族は後悔しても、もう遅い!!~

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第3章 エルフ大公国を襲う悪意!

第35話(累計・第116話) クーリャ108:始まる会議。迫りくる国難にどう対処するの、わたし!?

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「一体、この大変な時期に国内の貴族、領主に市長を集めるとは、大公殿は何をお考えなのだ?」

「ああ、ただでさえ改革派と保守派がにらみ合うのに、それを一堂に集めるとは不可思議な事よ」

 魔族姫襲撃事件から3日後、大公から各国内有力者達へ魔法通信を使った通達が送られてきた。
 国内問題を解決すべく、急遽ながら会議を行うとの事。
 ゴブリン騒ぎに忙しい辺境、そして政権争いに勤しむ都市部。
 それぞれに住まう権力者エルフ達は、ぶつくさと文句を言うも大公へ直接文句を言うべく、首都へと馳せ参じた。

「忙しい中、皆には集まっていただき、感謝しておる。今回、急に会議を行うことになったのには、国内に現在問題がありふれており、それに対する緊急対抗策を練るためだ。一同、身分の上下には拘らず忌憚きたん無き意見を言って欲しい!」

 大公エルウェ・マイアールは、議会壇上から大きな声で議会開始を宣言した。

  ◆ ◇ ◆ ◇

「父さん、ミスしなきゃ良いけど……」

「エル君、大公様はあれでも長年国を治めていらしたのですから、大丈夫ですの」

「ああ、その通りだ、クーリャ嬢ちゃん。我が孫エルロンドよ、エルウェを信じてやれ。子が信じずに、誰が父を信じてやるのだ!」

「おうおう、シルヴァや。お前も言う様になったな」

「エフゲニーよ。私も只人の真似をして家族を大事に思ってみただけさ。確かに息子が発表をしているのを見るのはドキドキするな。自分が壇上にいる方が楽な気もする」

 わたし達は、議場の端っこにある貴賓室から議会を眺めている。
 エル君は大公様を心配するけど、それをシルヴァリオ様はたしなめめ、そこに学院長先生が突っ込む。

 ……わたしには子供の応援をする親の気持ちは、まだよく分からないけど、自分でやった方が気が楽ってのは分かるの。後輩が怪しげな手つきで実験しているの見ていて、ハラハラしたもん。

 エル君の心配を他所に、大公様は本題を話し出した。

「さて、既に皆は知っていると思うが、国内の辺境部。特にロマノヴィッチ王国との国境付近でゴブリン共の大繁殖が見られる。これに対して国は国防事案と認定し、討伐部隊を結成しようと思う。ひいては、皆に兵士の貸出を願いたい」

「大公殿。それには現在襲われている地域も兵士供与をせねばらなぬのか?」

「いや、現在襲われておる地域については、まず住民防衛を優先して欲しい。兵士供与は、主に現在襲われておらぬ地域からを優先して欲しい。もちろん、私の兵も大半を参加させる」

 討伐部隊結成の議案に議会内はざわつく。
 今襲われていない地域の兵士を沢山送れと言うことは、その地域の防衛が甘くなるからだ。

 ……今、積極的に襲われていない地域ってのに、敵の仲間が居そうだものね。まさか、自滅覚悟で自己領を襲わせる馬鹿は居ない……かな?

 暗黒神の教義が今一つ分からないので、敵の思考が読みにくい。
 普通に宗教国家の立国、世界制覇とか、国教化を願うとかの、普通の宗教的考えなら自らの勢力を削るのは考えにくい。
 ただ、虚無な神、全てを無に戻すとかいう邪神信仰なら、自らの破滅も計算ずくになる。

 ……確か金色のシリコン生命体とか、ドラマタ魔法少女の世界の悪魔は虚無を目指していたっけ? 全部破滅しろって願う馬鹿も居ないでもないからねぇ。

「それは、領内を無視して他領地を守れということか、大公殿!」

「まさか! 領内を無視せよとは言わぬ。領内防衛をした上で余剰兵力を貸してくれという事だ。まさか、自分の領地以外はどうなろうとも構わぬとでもいうのですかな、ノルドール伯爵ガラドリエル殿?」

「そ、それは……」

 保守派重鎮と聞いているノルドール伯は、大公に正論を言われて口ごもる。

 ……保守派も油断ならないよね。結局、大公様から国を奪いたい連中も居るし。

 保守派にも大公派、反大公派、精霊王国派が存在し、改革派にも大公派、反大公派が混在している。
 大公国を守るのか、東方精霊王国に国を売るのかでも派閥は分かれている。

 ……3人いたら、派閥が生まれるって言うしね。わたしの処でも、エル君と3人の女の子は微妙に派閥違うし。というか、ただただエル君が男の子でエッチというだけね。

「それぞれ言いたいこともあろう。しかし、このままゴブリン共を放置しておれば、不幸な事案も増え、国内産業も衰退する。それは誰も望まぬ結果、友や子達が死ぬという不幸をもたらすのだ。この国難、大公国が一丸となって国を守るのだ!」

「おぉ! 我らの手で民を守るのだ!」

 議会でも改革派に近い者、そして保守派でも愛国派閥の者達から賛同の声が多数上がる。

 ……これ、反対するのは国や民を裏切るって意味だものね。敵でも、表向きはイヤイヤでも賛成するしかないんじゃないの?

「そ、それでは、しょうがあるまい。ただ、兵を多数送る領地には、後から経済的補填は欲しいと思うが……」

「ああ、それは今すぐには無理だが、考えている。今回、魔族帝国の姫がゴブリンに襲われたというのもある。ゴブリン討伐には我が国の他、ロマノヴィチ王国のみならず魔族帝国、ドワーフ王国からも協力の声が聞こえている。技術供与や経済支援も行うとも聞いているので安心して欲しい」

 しぶしぶ賛成したノルドール伯に対して、「飴」を見せる大公様。
 損しないぞと言われては、もう反対も出来ないだろう。

 ……ぜーんぶ、わたしがする事だけどね。技術供与と商品販売ルートの斡旋で、損はさせないよ。

 わたしが持つ農地改革技術、これを与えるだけで何処も食糧問題は改善される。
 流石に工業的・化学的な技術供与は簡単には行わないものの、民衆が飢えなくなるのには、わたしも賛成だ。

 ……そりゃ、食料は兵士の兵糧にもなるから軍事能力向上にもなるけどね。

 議会は、どの領地がどのくらいの兵を送るかで賑やかになっていった。
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