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1巻
1-2
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チェリたちの報告によれば、子爵家や男爵家の妃たちは比較的静かに過ごしているらしい。中には、自身が正妃になるなんてありえないと考えている者もいるようだ。そういう妃たちは後宮内で目立たず過ごしつつ、お互いに交流しているという。後宮で得たつながりは、ここを出てからも役に立つことが多いからだ。
そして現状、陛下には特に気に入っている妃はいないらしい。
妃が全員揃っていない段階で正妃を選ぶことはできないから、まだ様子見しているのだろうか。もう陛下の心を射止めた妃がいる可能性はあるが、その場合も表向きはきちんと全員に接してから決められるはずだ。
そんな中でやるべきことは……
「伯爵家のお二人が馬鹿な真似をしないように、事前に対処する必要があるわね。お忙しい陛下の手を後宮のごたごたで煩わせるのは、できる限り避けたいわ」
火種になりそうな伯爵令嬢の二人には、目を光らせておくべきだ。
「ディアナ様に関しては、向こうに悟られない程度に探ってちょうだい。難しいかもしれないけれど、陛下が彼女のもとへ通わない理由を知っておいたほうが動きやすいもの」
そしてなにより、陛下のことを知らなければ。
「陛下の好みや、どの妃に興味を持っておられるのかも探ってほしいわ」
国王の結婚ともなれば、政治的メリットが優先され、個人的な感情はあまり考慮されない。最終的な正妃の決定権を持っているのは陛下だけど、実際には政治的な力関係や、有力貴族の意向が強く影響する。そのため、一般的に正妃として認められるのは、伯爵家以上の地位を持つ妃だ。
けれど私は、身分にかかわらず、陛下が心から愛する方に正妃になってほしいと思う。
人を愛しいと思う幸せは、他の何にも代えがたく、きっと陛下の人生を豊かにしてくれるだろう。
陛下をそんな風に幸せにできる女性が、あの方を傍で支えられるような、賢くて能力の高い妃であれば一番いい。
私は侯爵令嬢だから、正妃になれるだけの身分ではある。けれど陛下が私を愛してくださる未来など想像できない。いくら身分があっても、陛下が私を望んでくださるなんて、そんな都合のいいことが起こるとは思えない。
私は陛下が幸せであればいいのだ。
「レナ様、後宮の見取り図を描き終えました。それと考え込むのは結構ですが、新しい侍女たちがもうすぐ戻ってくるでしょうし、なにより初夜の準備をしなければなりません」
「え?」
「ですから、初夜ですわ、レナ様。ディアナ様は例外ですが、他の妃たちが後宮入りした初日には、陛下がその妃のもとを訪れておられます。本日、レナ様のもとへ陛下がお渡りになるのは間違いないでしょう」
カアラから告げられた事実に、私は固まった。
「……あああっ、忘れてたわ!」
思わずそう叫んで、慌てて椅子から立ち上がる。
「そ、そうだったわ。私も今日後宮入りしたんだから、よっぽどのことがない限り、あの方がおいでになるのよ……っ」
あの方の妃になれたことがどうしようもなく嬉しくて、どうすれば役に立てるだろうと計画ばかり立てているうちに、すっかりそのことを忘れていた。
なんということ……っ。私馬鹿だわ。そんな重要なことを忘れるなんてっ!
自分で恥ずかしくなってしまう。
「レナ様ったら、お渡りのことは頭になかったのですわね」
「ど、どうしよう。あの方が私のもとへいらっしゃるだなんて……。それって前に勉強したような、男女の営みをするんでしょう……?」
貴族の令嬢として、子供の作り方については習っている。男女の営みがどういう風に行われるかも知っている。それでも……好きな人とそういう行為をするとなったら、緊張するのは当たり前でしょう?
だ、だってあの方が私に話しかけて、私に触れて、そういう営みをするだなんて……考えただけで、もうどうしたらいいかわからなくなる。そもそも教育を受けているとはいっても、上手くできるかどうかわからないし……
「そうです。本日、陛下とレナ様は男女の営みをするのです。戸惑う姿も可愛らしいですが、隙を見せるのは私たちの前だけにしてくださいね?」
「わかっているわよ、カアラ。それより私に変なところはないわよね?」
私はおそるおそる四人に向かって問いかける。
陛下を好きになってから、できる限り外見を磨いたつもりだ。肌の手入れや髪の手入れは毎日しているし、流行にも乗り遅れないようにしてきた。
でも、あの方にじっくり見られても大丈夫なのか、今更ながら、その……初夜を思うと不安になってきたのだ。
「安心してください。レナ様は十分綺麗で可愛いですわ」
くすくす笑ってチェリが言う。
「それに、陛下がお越しになる前に、私たちがレナ様の体をきっちり磨いて差し上げますから」
メルはお任せくださいと言って笑った。
「陛下にお気に召していただけるよう、レナ様をより魅力的に見せる夜着も用意いたしましたわ。レナ様はただ習った通りになさればよろしいのです!」
自信を持ってください、とフィーノが励ましてくれる。
「ええ、私、陛下から嫌われないように頑張るわ!」
後宮入りして初めての夜は重要だ。もし失敗して陛下に嫌われるなんてことになったら、どうしようもなく落ち込んでしまう。
なにかやらかしてしまったらどうしましょう……
心配だけど、女は度胸よ! やれるだけやってみせるわ。
そう意気込んだ私は、部屋に戻ってきた三人も含めた七人の侍女たちにしっかり体を洗われ、身支度を整えてもらったのだった。
もし愛する人がいたとして、その人と二人きりで会話ができて、触れ合える。
それを想像した時、人はどんな反応をするだろうか。照れるだろうか、心躍るだろうか。その機会に相手の心を手に入れようとするだろうか。それは人それぞれだと思う。
そして、私の場合は――
「ようこそおいでくださいました。陛下」
あてがわれたばかりの自室で、私は胸の高鳴りを抑えながら、陛下――アースグラウンド様を笑顔で迎えていた。
嫌われないように初夜を遂げようと、完璧な妃として振る舞いつつ、扉から入ってきたアースグラウンド様を見る。
私の心強い味方である侍女たちは、部屋の外で待機している。いま、この場には私と陛下だけだ。
夜空を思い出させるような漆黒の髪は、相変わらず美しかった。
この国に黒髪の人はあまりいない。昔、黒眼と黒髪を持つ珍しい女性を妃に迎えた王がいて、陛下の黒髪はその遺伝なのだと聞く。
そして、鋭く細められた青色の目もとっても美しい。王族として生まれ、王となった彼の仕草は一つひとつが洗練されている。陛下を愛している私は、余計にその姿に魅了される。
だって、いまこうして見ているだけで、胸いっぱいにときめきが広がるのだ。
「ああ」
陛下はただうなずいて、私を見つめる。他には一言も喋らず、なにも感じていないような態度で私に近づいてきた。
初めて会った時、陛下の雰囲気はもっと優しかった。けれどいまは、あの時の穏やかな笑みの代わりに、冷めた表情を浮かべている。
人伝てに聞いた話だけれど、彼は王太子として過ごすうちに簡単に人を信用しなくなり、人に対して冷たくなっていったという。この国のただ一人の王位継承者というのは、それだけ人を疑わなければならない立場なのだろう。
そんな冷徹な態度にさえ、私の鼓動は速まる。
黒色のレースがついた夜着に身を包んだ私は、どうしようもなく緊張していた。恥ずかしくて、思わずうつむいてしまう。
だ、だって陛下に見つめられてるのよ。あの陛下が、大好きな陛下が私を見てると思うと、もうどうしたらいいかわからなくなってしまう。
それに、いま私が着ている夜着は、薄くて露出が多い。チェリは『レナ様はスタイルがよろしいので、自信を持って着てください』なんて言ってたけど、それでも恥ずかしいに決まってるでしょう!
いままでずっと陛下一筋だったから、親しい男性なんてお父様とお兄様と、後は幼馴染くらい。私は男性に免疫がないのだ。こんな格好で男性の前に、それも昔から恋い焦がれていた陛下の前に出るだなんて……
でも陛下に迷惑をかけたくはない。だから緊張する心を必死に落ち着かせて、笑みを浮かべたまま陛下を見た。
すると、陛下を見返す形になって、その……陛下と目が合ってしまった。
たったそれだけで、私の平常心はどこかへ行ってしまう。
鼓動も驚くほど激しくなった。私の胸をこんなに高鳴らせ、こんな気持ちにさせるのは、この世で陛下だけだ。
陛下が私のほうに近づいてくる。そして私の手を取り、ベッドへと連れていき――そのまま押し倒した。
緊張しすぎてなにもできない私に、陛下がゆっくりと覆いかぶさってくる。
すぐ目の前に陛下の美しい顔があった。その青い瞳に見つめられるだけで、頭の芯がしびれたようにぼうっとなる。
そうしてただ見惚れていると……口づけをされた。
他の妃にもしているのだろうけれど、陛下にファーストキスを捧げられたことが私は嬉しかった。
唇が触れた一瞬で、心臓が破裂するのではないかというぐらい、バクバクした。
その気持ちを表に出さないように、貴族の令嬢としての笑みを浮かべる。他の令嬢たちが夜にどうしているかなんてわからないけど、大体こんな感じだろうと想像力を働かせて同じように振る舞おうとした。
ああ、もう、本当にこの人が好きだ。好きで好きでたまらなくて胸が熱い。そんな溢れんばかりの気持ちは悟らせないようにしなければ。
私は陛下の前では、故意に仮面をかぶっていた。だって素のままでいたら、私は嬉しくてだらしない顔をしてしまう。そんな情けない姿、見せたくない。
一言も交わさないまま、夜着を脱がされていく。内心では恥ずかしくて、自分に変なところがないかと不安になってもいたけれど、絶対に表に出さないようにした。
そんな私に陛下が触れる。
そうして、その……陛下とつながったのだ。
初めてだったから緊張したし、怖かった。
だけど、それよりも幸せな気持ちが胸いっぱいに広がっていた。
だってずっと恋い焦がれていた陛下の顔を、間近で見られたのだ。その瞳に見つめられて、その手に触れてもらえた。
政略結婚が当たり前の貴族社会で、好きな人の妃になることができた。そして愛はなくても、こうして触れてもらえる。これほど幸せなことはないと思う。
陛下は私のことを、妃の一人としてしか認識していないだろう。
彼にとって妃のもとへ通うのは、きっとただの義務なのだ。
陛下は好きでもない女性を抱かなければならない。私がもし男だったら、そんなの嫌だ。
彼も進んでその義務を果たしたいわけではないのだと、その顔や態度を見ればわかる。煩わしいとさえ思っているかもしれない。
だから私は、できる限り陛下の手を煩わせない妃になろう。陛下と過ごす夜の間、陛下に安らぎを……というのは無理かもしれないが、せめて陛下の負担にならないように務めたい。
そうして精一杯頑張って、気づけば朝だった。
目が覚めた時には、もちろん陛下はいなかった。
陛下と一夜を過ごせたなんて夢のようだけれど、確かに感じる腰の痛みが、それを現実だと私に実感させる。
「……私、陛下に抱かれたんだわ」
そう口にしたと同時にぼっと顔が熱くなった。昨夜のことを思い出して、枕に顔を埋める。
陛下がさっきまでここにいたのだとか、ここであの方とそういう行為をしたのだとか、考えれば考えるほど嬉しさと恥ずかしさが胸に広がった。
昨夜はあの方に嫌われないようにと必死で、そういう感情を全部胸にしまい込んでいた。それが一気に溢れ出して、どうしていいかわからない。
もう死んでもいいと思うくらい幸せ。いや、やっぱり死んでは駄目。死んでしまったら、あの方のために、なにもできなくなってしまう。枕に顔を埋めて足をばたばたさせる。
「レナ様、おはようございます。……って、なにをしていらっしゃるのですか?」
私が恥ずかしさと幸福感に身悶えていると、部屋に入ってきたカアラに呆れた声を出されてしまった。
その後、他の侍女たちも入ってきたので、恥ずかしさと幸せを胸の内にしまった。そして体を綺麗にしてもらって、新しい衣装を着付けてもらう。ディアナ様と会うためだ。
さて、体のだるさは感じるけれど、気合いを入れましょう。
「ごきげんよう、ディアナ様。昨日後宮に入りました、レナ・ミリアムと申します。これからよろしくお願いしますわ」
昼の一時に、私はディアナ様のもとを訪れた。実家から連れてきた侍女のうち、三人を伴っている。他の侍女たちには、別の用事を頼んであった。
「ようこそおいでくださいました、レナ様。どうぞ、こちらにおかけになってください」
ディアナ様はにこやかに微笑んで、椅子に腰かけたまま私を迎えた。その綺麗な笑みには、とても好感が持てる。
同性の私から見ても、ディアナ様は美しい方だ。腰まで伸びた長い髪はまばゆいばかりの銀色で、瞳の色はルビーのように煌めく赤。
胸が大きいのに、腰は驚くほど細く、ドレスを着ていてもそのスタイルのよさがわかる。胸元の開いた紺色のドレスは、ディアナ様の美しさを強調していた。
こんな美しい方と知り合えるなんて、本当に嬉しい。
「失礼しますわ」
私はそう告げて、ディアナ様の向かいの椅子に腰かけた。
ディアナ様の部屋は、この後宮で唯一の公爵令嬢に相応しく、広くて華やかだ。
彼女の後ろには十人ほどの侍女が控えている。私よりは多いけれど、公爵令嬢としては少ないほうだった。
私は向かいのディアナ様を見る。ここからが肝心だ。
侮られないように、それでいて嫌われないように。彼女を敵にまわしたくはない。
私は慎重に口を開いた。
「こうして二人でお会いするのは初めてですわね。社交界でも有名なディアナ様とお話しできることを嬉しく思いますわ」
「そうですわね。レナ様とお話しできて、私も嬉しいですわ」
私もディアナ様も笑みを浮かべている。でもこれは、貴族としての処世術。貴族なんて笑顔の裏でなにを考えているかわからないものだ。
だから、私は目の前で笑うディアナ様のことも、まだ信用はしていない。
でも、陛下の幼馴染である彼女がどんな人間なのか、私はちゃんと知りたい。そして仲良くなれたら嬉しいし、ディアナ様から陛下の話を聞けたら、とも思う。
ディアナ様付きの侍女が、私たちの前にカップを置く。テーブルの中央には、お菓子の入った皿も置かれた。
私はカップを取り上げて紅茶を口に含む。
「あら、これはダーカス領のものですわね」
私がそうつぶやくと、ディアナ様が驚いたように言った。
「まぁ、わかりますの?」
「ええ、もちろんですわ」
私はこの国のことをひたすら学んできた。歴史や制度だけではなく、各地の特産物などについてもだ。
ディアナ様が出してくださった紅茶は、彼女の実家が治めるゴートエア領の隣、ダーカス領で生産されているものである。
紅茶は、生産地によって茶葉の味が異なるのだ。
私は有名な紅茶を片っ端から取り寄せて味わい、その違いがきちんとわかるようにしている。おそらく、これはディアナ様が実家から持ってきたものなのだろう。
「レナ様は紅茶にお詳しいのですね」
「少々嗜む程度ですわ。それよりディアナ様のほうがよくご存知なのでは?」
「そんなことありませんわ。ただ好きなだけですわよ」
しばらくそんな会話が続く。互いにまだ心を許していない者同士、当たり障りのない会話だ。もちろん、本心を口にしてはいるけれど、相手の気分を害さないように言葉を選んでいる。
私はまた紅茶を口にし、お菓子に手を伸ばしながら、ふと視線を本棚に向けた。そしてその中にあるものを発見して、思わず声を上げる。
「まぁ、ディアナ様はティーンの小説をお持ちなのですね」
ティーンは有名な恋愛小説家だ。正体不明の覆面作家で、年齢はおろか性別すらも明かされていない。ただその作風から、読者の間では二十代の女性ではないかと噂されている。
貴族の女性の間でも評判で、もちろん私も愛読している。ディアナ様もティーンの小説を読んでいるのだと思うと、なんだか急に親近感がわいた。
「ええ。レナ様もお読みになるのですか?」
「読みますわ。私は『扉の中の世界』が一番好きですの。ディアナ様は?」
「まぁ、私もその作品は何度も読み返すほど好きですわ。でも、一番は『薔薇姫』ですの。主人公のローズが好きなのですわ」
「私もローズは好きですわ。あの気品ある振る舞いには憧れますわよね。それに親友であるカーヴィナへの思いには共感します」
ティーンの書く物語は、個性的で格好いい女性主人公が多い。私もそんな女性になりたいと思いながら読んでいる。
「ですわよね。あんな女性になりたいものです」
「ディアナ様は、もうローズのような気品をお持ちではありませんか」
「それを言うなら、レナ様もですわ」
こんな風に好きなものの話をするのは楽しい。
話が弾んで、気づけばあっという間に時間が経っていた。
「もうこんな時間だわ。私はそろそろ失礼します。またお会いできれば嬉しいですわ」
そろそろお暇しようと立ち上がり、微笑みながらそう告げた。
「ええ、もちろん。またティーンの小説についてお話ししましょうね」
ディアナ様も微笑んでそう言った。
ディアナ様の部屋を辞し、自分の部屋に戻りながら、交わした会話を思い返す。今日話してみた限り、彼女は素晴らしい方だった。
どうして陛下は幼馴染で、心を許しているはずのディアナ様のもとに通わないのか。その謎は私の中でますます大きくなっていた。
そして現状、陛下には特に気に入っている妃はいないらしい。
妃が全員揃っていない段階で正妃を選ぶことはできないから、まだ様子見しているのだろうか。もう陛下の心を射止めた妃がいる可能性はあるが、その場合も表向きはきちんと全員に接してから決められるはずだ。
そんな中でやるべきことは……
「伯爵家のお二人が馬鹿な真似をしないように、事前に対処する必要があるわね。お忙しい陛下の手を後宮のごたごたで煩わせるのは、できる限り避けたいわ」
火種になりそうな伯爵令嬢の二人には、目を光らせておくべきだ。
「ディアナ様に関しては、向こうに悟られない程度に探ってちょうだい。難しいかもしれないけれど、陛下が彼女のもとへ通わない理由を知っておいたほうが動きやすいもの」
そしてなにより、陛下のことを知らなければ。
「陛下の好みや、どの妃に興味を持っておられるのかも探ってほしいわ」
国王の結婚ともなれば、政治的メリットが優先され、個人的な感情はあまり考慮されない。最終的な正妃の決定権を持っているのは陛下だけど、実際には政治的な力関係や、有力貴族の意向が強く影響する。そのため、一般的に正妃として認められるのは、伯爵家以上の地位を持つ妃だ。
けれど私は、身分にかかわらず、陛下が心から愛する方に正妃になってほしいと思う。
人を愛しいと思う幸せは、他の何にも代えがたく、きっと陛下の人生を豊かにしてくれるだろう。
陛下をそんな風に幸せにできる女性が、あの方を傍で支えられるような、賢くて能力の高い妃であれば一番いい。
私は侯爵令嬢だから、正妃になれるだけの身分ではある。けれど陛下が私を愛してくださる未来など想像できない。いくら身分があっても、陛下が私を望んでくださるなんて、そんな都合のいいことが起こるとは思えない。
私は陛下が幸せであればいいのだ。
「レナ様、後宮の見取り図を描き終えました。それと考え込むのは結構ですが、新しい侍女たちがもうすぐ戻ってくるでしょうし、なにより初夜の準備をしなければなりません」
「え?」
「ですから、初夜ですわ、レナ様。ディアナ様は例外ですが、他の妃たちが後宮入りした初日には、陛下がその妃のもとを訪れておられます。本日、レナ様のもとへ陛下がお渡りになるのは間違いないでしょう」
カアラから告げられた事実に、私は固まった。
「……あああっ、忘れてたわ!」
思わずそう叫んで、慌てて椅子から立ち上がる。
「そ、そうだったわ。私も今日後宮入りしたんだから、よっぽどのことがない限り、あの方がおいでになるのよ……っ」
あの方の妃になれたことがどうしようもなく嬉しくて、どうすれば役に立てるだろうと計画ばかり立てているうちに、すっかりそのことを忘れていた。
なんということ……っ。私馬鹿だわ。そんな重要なことを忘れるなんてっ!
自分で恥ずかしくなってしまう。
「レナ様ったら、お渡りのことは頭になかったのですわね」
「ど、どうしよう。あの方が私のもとへいらっしゃるだなんて……。それって前に勉強したような、男女の営みをするんでしょう……?」
貴族の令嬢として、子供の作り方については習っている。男女の営みがどういう風に行われるかも知っている。それでも……好きな人とそういう行為をするとなったら、緊張するのは当たり前でしょう?
だ、だってあの方が私に話しかけて、私に触れて、そういう営みをするだなんて……考えただけで、もうどうしたらいいかわからなくなる。そもそも教育を受けているとはいっても、上手くできるかどうかわからないし……
「そうです。本日、陛下とレナ様は男女の営みをするのです。戸惑う姿も可愛らしいですが、隙を見せるのは私たちの前だけにしてくださいね?」
「わかっているわよ、カアラ。それより私に変なところはないわよね?」
私はおそるおそる四人に向かって問いかける。
陛下を好きになってから、できる限り外見を磨いたつもりだ。肌の手入れや髪の手入れは毎日しているし、流行にも乗り遅れないようにしてきた。
でも、あの方にじっくり見られても大丈夫なのか、今更ながら、その……初夜を思うと不安になってきたのだ。
「安心してください。レナ様は十分綺麗で可愛いですわ」
くすくす笑ってチェリが言う。
「それに、陛下がお越しになる前に、私たちがレナ様の体をきっちり磨いて差し上げますから」
メルはお任せくださいと言って笑った。
「陛下にお気に召していただけるよう、レナ様をより魅力的に見せる夜着も用意いたしましたわ。レナ様はただ習った通りになさればよろしいのです!」
自信を持ってください、とフィーノが励ましてくれる。
「ええ、私、陛下から嫌われないように頑張るわ!」
後宮入りして初めての夜は重要だ。もし失敗して陛下に嫌われるなんてことになったら、どうしようもなく落ち込んでしまう。
なにかやらかしてしまったらどうしましょう……
心配だけど、女は度胸よ! やれるだけやってみせるわ。
そう意気込んだ私は、部屋に戻ってきた三人も含めた七人の侍女たちにしっかり体を洗われ、身支度を整えてもらったのだった。
もし愛する人がいたとして、その人と二人きりで会話ができて、触れ合える。
それを想像した時、人はどんな反応をするだろうか。照れるだろうか、心躍るだろうか。その機会に相手の心を手に入れようとするだろうか。それは人それぞれだと思う。
そして、私の場合は――
「ようこそおいでくださいました。陛下」
あてがわれたばかりの自室で、私は胸の高鳴りを抑えながら、陛下――アースグラウンド様を笑顔で迎えていた。
嫌われないように初夜を遂げようと、完璧な妃として振る舞いつつ、扉から入ってきたアースグラウンド様を見る。
私の心強い味方である侍女たちは、部屋の外で待機している。いま、この場には私と陛下だけだ。
夜空を思い出させるような漆黒の髪は、相変わらず美しかった。
この国に黒髪の人はあまりいない。昔、黒眼と黒髪を持つ珍しい女性を妃に迎えた王がいて、陛下の黒髪はその遺伝なのだと聞く。
そして、鋭く細められた青色の目もとっても美しい。王族として生まれ、王となった彼の仕草は一つひとつが洗練されている。陛下を愛している私は、余計にその姿に魅了される。
だって、いまこうして見ているだけで、胸いっぱいにときめきが広がるのだ。
「ああ」
陛下はただうなずいて、私を見つめる。他には一言も喋らず、なにも感じていないような態度で私に近づいてきた。
初めて会った時、陛下の雰囲気はもっと優しかった。けれどいまは、あの時の穏やかな笑みの代わりに、冷めた表情を浮かべている。
人伝てに聞いた話だけれど、彼は王太子として過ごすうちに簡単に人を信用しなくなり、人に対して冷たくなっていったという。この国のただ一人の王位継承者というのは、それだけ人を疑わなければならない立場なのだろう。
そんな冷徹な態度にさえ、私の鼓動は速まる。
黒色のレースがついた夜着に身を包んだ私は、どうしようもなく緊張していた。恥ずかしくて、思わずうつむいてしまう。
だ、だって陛下に見つめられてるのよ。あの陛下が、大好きな陛下が私を見てると思うと、もうどうしたらいいかわからなくなってしまう。
それに、いま私が着ている夜着は、薄くて露出が多い。チェリは『レナ様はスタイルがよろしいので、自信を持って着てください』なんて言ってたけど、それでも恥ずかしいに決まってるでしょう!
いままでずっと陛下一筋だったから、親しい男性なんてお父様とお兄様と、後は幼馴染くらい。私は男性に免疫がないのだ。こんな格好で男性の前に、それも昔から恋い焦がれていた陛下の前に出るだなんて……
でも陛下に迷惑をかけたくはない。だから緊張する心を必死に落ち着かせて、笑みを浮かべたまま陛下を見た。
すると、陛下を見返す形になって、その……陛下と目が合ってしまった。
たったそれだけで、私の平常心はどこかへ行ってしまう。
鼓動も驚くほど激しくなった。私の胸をこんなに高鳴らせ、こんな気持ちにさせるのは、この世で陛下だけだ。
陛下が私のほうに近づいてくる。そして私の手を取り、ベッドへと連れていき――そのまま押し倒した。
緊張しすぎてなにもできない私に、陛下がゆっくりと覆いかぶさってくる。
すぐ目の前に陛下の美しい顔があった。その青い瞳に見つめられるだけで、頭の芯がしびれたようにぼうっとなる。
そうしてただ見惚れていると……口づけをされた。
他の妃にもしているのだろうけれど、陛下にファーストキスを捧げられたことが私は嬉しかった。
唇が触れた一瞬で、心臓が破裂するのではないかというぐらい、バクバクした。
その気持ちを表に出さないように、貴族の令嬢としての笑みを浮かべる。他の令嬢たちが夜にどうしているかなんてわからないけど、大体こんな感じだろうと想像力を働かせて同じように振る舞おうとした。
ああ、もう、本当にこの人が好きだ。好きで好きでたまらなくて胸が熱い。そんな溢れんばかりの気持ちは悟らせないようにしなければ。
私は陛下の前では、故意に仮面をかぶっていた。だって素のままでいたら、私は嬉しくてだらしない顔をしてしまう。そんな情けない姿、見せたくない。
一言も交わさないまま、夜着を脱がされていく。内心では恥ずかしくて、自分に変なところがないかと不安になってもいたけれど、絶対に表に出さないようにした。
そんな私に陛下が触れる。
そうして、その……陛下とつながったのだ。
初めてだったから緊張したし、怖かった。
だけど、それよりも幸せな気持ちが胸いっぱいに広がっていた。
だってずっと恋い焦がれていた陛下の顔を、間近で見られたのだ。その瞳に見つめられて、その手に触れてもらえた。
政略結婚が当たり前の貴族社会で、好きな人の妃になることができた。そして愛はなくても、こうして触れてもらえる。これほど幸せなことはないと思う。
陛下は私のことを、妃の一人としてしか認識していないだろう。
彼にとって妃のもとへ通うのは、きっとただの義務なのだ。
陛下は好きでもない女性を抱かなければならない。私がもし男だったら、そんなの嫌だ。
彼も進んでその義務を果たしたいわけではないのだと、その顔や態度を見ればわかる。煩わしいとさえ思っているかもしれない。
だから私は、できる限り陛下の手を煩わせない妃になろう。陛下と過ごす夜の間、陛下に安らぎを……というのは無理かもしれないが、せめて陛下の負担にならないように務めたい。
そうして精一杯頑張って、気づけば朝だった。
目が覚めた時には、もちろん陛下はいなかった。
陛下と一夜を過ごせたなんて夢のようだけれど、確かに感じる腰の痛みが、それを現実だと私に実感させる。
「……私、陛下に抱かれたんだわ」
そう口にしたと同時にぼっと顔が熱くなった。昨夜のことを思い出して、枕に顔を埋める。
陛下がさっきまでここにいたのだとか、ここであの方とそういう行為をしたのだとか、考えれば考えるほど嬉しさと恥ずかしさが胸に広がった。
昨夜はあの方に嫌われないようにと必死で、そういう感情を全部胸にしまい込んでいた。それが一気に溢れ出して、どうしていいかわからない。
もう死んでもいいと思うくらい幸せ。いや、やっぱり死んでは駄目。死んでしまったら、あの方のために、なにもできなくなってしまう。枕に顔を埋めて足をばたばたさせる。
「レナ様、おはようございます。……って、なにをしていらっしゃるのですか?」
私が恥ずかしさと幸福感に身悶えていると、部屋に入ってきたカアラに呆れた声を出されてしまった。
その後、他の侍女たちも入ってきたので、恥ずかしさと幸せを胸の内にしまった。そして体を綺麗にしてもらって、新しい衣装を着付けてもらう。ディアナ様と会うためだ。
さて、体のだるさは感じるけれど、気合いを入れましょう。
「ごきげんよう、ディアナ様。昨日後宮に入りました、レナ・ミリアムと申します。これからよろしくお願いしますわ」
昼の一時に、私はディアナ様のもとを訪れた。実家から連れてきた侍女のうち、三人を伴っている。他の侍女たちには、別の用事を頼んであった。
「ようこそおいでくださいました、レナ様。どうぞ、こちらにおかけになってください」
ディアナ様はにこやかに微笑んで、椅子に腰かけたまま私を迎えた。その綺麗な笑みには、とても好感が持てる。
同性の私から見ても、ディアナ様は美しい方だ。腰まで伸びた長い髪はまばゆいばかりの銀色で、瞳の色はルビーのように煌めく赤。
胸が大きいのに、腰は驚くほど細く、ドレスを着ていてもそのスタイルのよさがわかる。胸元の開いた紺色のドレスは、ディアナ様の美しさを強調していた。
こんな美しい方と知り合えるなんて、本当に嬉しい。
「失礼しますわ」
私はそう告げて、ディアナ様の向かいの椅子に腰かけた。
ディアナ様の部屋は、この後宮で唯一の公爵令嬢に相応しく、広くて華やかだ。
彼女の後ろには十人ほどの侍女が控えている。私よりは多いけれど、公爵令嬢としては少ないほうだった。
私は向かいのディアナ様を見る。ここからが肝心だ。
侮られないように、それでいて嫌われないように。彼女を敵にまわしたくはない。
私は慎重に口を開いた。
「こうして二人でお会いするのは初めてですわね。社交界でも有名なディアナ様とお話しできることを嬉しく思いますわ」
「そうですわね。レナ様とお話しできて、私も嬉しいですわ」
私もディアナ様も笑みを浮かべている。でもこれは、貴族としての処世術。貴族なんて笑顔の裏でなにを考えているかわからないものだ。
だから、私は目の前で笑うディアナ様のことも、まだ信用はしていない。
でも、陛下の幼馴染である彼女がどんな人間なのか、私はちゃんと知りたい。そして仲良くなれたら嬉しいし、ディアナ様から陛下の話を聞けたら、とも思う。
ディアナ様付きの侍女が、私たちの前にカップを置く。テーブルの中央には、お菓子の入った皿も置かれた。
私はカップを取り上げて紅茶を口に含む。
「あら、これはダーカス領のものですわね」
私がそうつぶやくと、ディアナ様が驚いたように言った。
「まぁ、わかりますの?」
「ええ、もちろんですわ」
私はこの国のことをひたすら学んできた。歴史や制度だけではなく、各地の特産物などについてもだ。
ディアナ様が出してくださった紅茶は、彼女の実家が治めるゴートエア領の隣、ダーカス領で生産されているものである。
紅茶は、生産地によって茶葉の味が異なるのだ。
私は有名な紅茶を片っ端から取り寄せて味わい、その違いがきちんとわかるようにしている。おそらく、これはディアナ様が実家から持ってきたものなのだろう。
「レナ様は紅茶にお詳しいのですね」
「少々嗜む程度ですわ。それよりディアナ様のほうがよくご存知なのでは?」
「そんなことありませんわ。ただ好きなだけですわよ」
しばらくそんな会話が続く。互いにまだ心を許していない者同士、当たり障りのない会話だ。もちろん、本心を口にしてはいるけれど、相手の気分を害さないように言葉を選んでいる。
私はまた紅茶を口にし、お菓子に手を伸ばしながら、ふと視線を本棚に向けた。そしてその中にあるものを発見して、思わず声を上げる。
「まぁ、ディアナ様はティーンの小説をお持ちなのですね」
ティーンは有名な恋愛小説家だ。正体不明の覆面作家で、年齢はおろか性別すらも明かされていない。ただその作風から、読者の間では二十代の女性ではないかと噂されている。
貴族の女性の間でも評判で、もちろん私も愛読している。ディアナ様もティーンの小説を読んでいるのだと思うと、なんだか急に親近感がわいた。
「ええ。レナ様もお読みになるのですか?」
「読みますわ。私は『扉の中の世界』が一番好きですの。ディアナ様は?」
「まぁ、私もその作品は何度も読み返すほど好きですわ。でも、一番は『薔薇姫』ですの。主人公のローズが好きなのですわ」
「私もローズは好きですわ。あの気品ある振る舞いには憧れますわよね。それに親友であるカーヴィナへの思いには共感します」
ティーンの書く物語は、個性的で格好いい女性主人公が多い。私もそんな女性になりたいと思いながら読んでいる。
「ですわよね。あんな女性になりたいものです」
「ディアナ様は、もうローズのような気品をお持ちではありませんか」
「それを言うなら、レナ様もですわ」
こんな風に好きなものの話をするのは楽しい。
話が弾んで、気づけばあっという間に時間が経っていた。
「もうこんな時間だわ。私はそろそろ失礼します。またお会いできれば嬉しいですわ」
そろそろお暇しようと立ち上がり、微笑みながらそう告げた。
「ええ、もちろん。またティーンの小説についてお話ししましょうね」
ディアナ様も微笑んでそう言った。
ディアナ様の部屋を辞し、自分の部屋に戻りながら、交わした会話を思い返す。今日話してみた限り、彼女は素晴らしい方だった。
どうして陛下は幼馴染で、心を許しているはずのディアナ様のもとに通わないのか。その謎は私の中でますます大きくなっていた。
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