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何故、妹は姉をざまぁするに至ったか①
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幼い頃の私、イエルノ・カプラッドは姉であるアクノール・カプラッドの事が本当に大好きだった。お姉様はいつだって私に優しくて、キツイ性格だと思われがちだけれどもいつだって私に対して、優しい笑みを浮かべてくれていた。
私とお姉様は、カプラッド公爵家の邸宅の中で、大好きなお父様とお母様に愛されて育った。あの頃の私は、とても幸せだったのを今でも覚えている。
――だけど、そんな日々は壊れてしまうのだ。
突然にして。
きっかけはなんだったか。あれから十年も経った今でもよく覚えている。
「お姉様……」
お母様が亡くなった。
元々病弱だったお母様は儚くなってしまった。
悲しくて仕方がなかった。
お母様は「愛しているわ」と私たち、姉妹に告げて亡くなった。
私は涙をこらえながらお姉様を見る。私の二つ上のお姉様。お姉様に抱きしめて欲しかった。一緒に泣きたかった。だけど、見上げたお姉様の表情は私が思っていたものと違った。
「……まさか、そんな」
何か信じられない事に気づいてしまったとでもいうような顔をしていた。お母様が、目の前で亡くなったというのに。その事とは別の事を考えているように見えた。
「お姉……様?」
なんで。どうして。そんな目をしているの。
お母様の事を見ていない瞳。
「……イエルノ・カプラッド」
私の名を呼ぶ。他人事のように。妹の私を呼ぶ声ではない。――親しみなどない声で、私の名を呼ぶ。目の前にいるお姉様が、別の何かに変わってしまったかのような恐怖心が芽生えた。
そして、私がお母様が亡くなった悲しみとお姉様の変わりように泣きわめきそうになった時、お姉様は私の目の前で倒れた。
お父様たちが「アクノール!」と声をあげて、お姉様を運んでいく。
お姉様が倒れた事に驚いて、茫然としてしまった私は見ているだけしか出来なかった。
それから、お母様のお葬式が行われている間、お姉様は目を覚まさなかった。
お母様が亡くなった事が悲しい。お母様に会えない事が悲しい。お母様が棺っていう箱の中におさめられてしまったのが悲しい。お母様……とそう思うと涙が出た。
それと同時に、お姉様の事が気にかかった。
お姉様は倒れる寸前、まるで別人のようだった。お父様たちはお姉様の方を見ていなかったから気づかなかったかもしれないけれど、私には少なくとも別人に見えた。倒れたお姉様が心配と同時に、何かが変わる気がして怖かった。目が覚めたお姉様が私の大好きなお姉様であることを願った。
「お父様……」
お葬式が終わってから、数日が経ってもお姉様は目を覚まさなかった。お父様の元へお姉様の事を聞きたくて言った。けど、お父様はお母様が大好きだったから落ち込んでいて私の話を聞ける状況ではなかった。
話を聞いて欲しかった。お姉様の様子がおかしかったことも。お母様が亡くなって悲しかったことも。沢山の感情を、私は誰かに話したかった。
私が赤ちゃんの頃から傍にいてくれる侍女にだけ少し零してしまったけれど、お姉様が倒れてお父様があんな状況で私まで泣き喚いたら皆大変だと思った。だから、泣くのは一人の、自室の中でだけにすることにした。
お姉様が目を早く覚ませばいい。――不安はあるけど、優しいお姉様であればいい。私の大好きなお姉様のままでいてくれたらそれでいい。そしたらお父様にお姉様の相談をする必要もなくなる。
お父様が早く元気になってくれたらいい。――私は笑っているお父様が大好きだから。お父様はお母様が大好きだったから悲しくて仕方がないと思うけど、元気になってほしい。
お姉様が目を覚ましたらお父様を一緒に元気づけにいこうって言いに行こう。皆で笑い合えたら私は今が悲しくても、きっと家族で笑い合えたら私は幸せだから。
そんな風に考えながら、私は必死だった。お父様が元気になるように過ごそうって。そして眠ったままのお姉様のお見舞いにいって、目を早く覚ましますようにって祈った。
そして、お姉様は目を覚ました。
「お姉様!! 良かった。目を覚まして」
私は嬉しかった。お姉様が目を覚ましてくれたと聞いて。
だけど、声をあげて駆け寄った私の事をベッドに座り込んだお姉様は前とは違う目で見ていた。
「イエルノ……心配してくれたのね、ありがとう」
お姉様はそう言って笑っている。笑っているけれども——前とは違う。お姉様が大好きで、近くにいたからこそ違和感があった。
どうしたんだろう。
お姉様はどうしてしまったんだろう。
お姉様……、お母様が亡くなって、ショックだから? そう結論付けて、私はお姉様に話しかける。
お姉様とお母様が亡くなったショックを共有したかった。一緒に泣きたかった。お姉様と私しかいない空間だったら私は泣いてもいいと思ったから。――気を利かせて侍女たちが二人っきりにしてくれたけど、お姉様はまるで他人事のように、表面上は優しい言葉をかけてくる。
お姉様……?
私はお姉様が分からなかった。分からなくて、お姉様の前でも泣かなかった。
「お姉様、あのね——」
「お姉様——」
私はただ、お姉様に元気になって欲しいと思って沢山話しかけたけど、お姉様は前のようにやさしい瞳で私を見る事はなかった。
私とお姉様は、カプラッド公爵家の邸宅の中で、大好きなお父様とお母様に愛されて育った。あの頃の私は、とても幸せだったのを今でも覚えている。
――だけど、そんな日々は壊れてしまうのだ。
突然にして。
きっかけはなんだったか。あれから十年も経った今でもよく覚えている。
「お姉様……」
お母様が亡くなった。
元々病弱だったお母様は儚くなってしまった。
悲しくて仕方がなかった。
お母様は「愛しているわ」と私たち、姉妹に告げて亡くなった。
私は涙をこらえながらお姉様を見る。私の二つ上のお姉様。お姉様に抱きしめて欲しかった。一緒に泣きたかった。だけど、見上げたお姉様の表情は私が思っていたものと違った。
「……まさか、そんな」
何か信じられない事に気づいてしまったとでもいうような顔をしていた。お母様が、目の前で亡くなったというのに。その事とは別の事を考えているように見えた。
「お姉……様?」
なんで。どうして。そんな目をしているの。
お母様の事を見ていない瞳。
「……イエルノ・カプラッド」
私の名を呼ぶ。他人事のように。妹の私を呼ぶ声ではない。――親しみなどない声で、私の名を呼ぶ。目の前にいるお姉様が、別の何かに変わってしまったかのような恐怖心が芽生えた。
そして、私がお母様が亡くなった悲しみとお姉様の変わりように泣きわめきそうになった時、お姉様は私の目の前で倒れた。
お父様たちが「アクノール!」と声をあげて、お姉様を運んでいく。
お姉様が倒れた事に驚いて、茫然としてしまった私は見ているだけしか出来なかった。
それから、お母様のお葬式が行われている間、お姉様は目を覚まさなかった。
お母様が亡くなった事が悲しい。お母様に会えない事が悲しい。お母様が棺っていう箱の中におさめられてしまったのが悲しい。お母様……とそう思うと涙が出た。
それと同時に、お姉様の事が気にかかった。
お姉様は倒れる寸前、まるで別人のようだった。お父様たちはお姉様の方を見ていなかったから気づかなかったかもしれないけれど、私には少なくとも別人に見えた。倒れたお姉様が心配と同時に、何かが変わる気がして怖かった。目が覚めたお姉様が私の大好きなお姉様であることを願った。
「お父様……」
お葬式が終わってから、数日が経ってもお姉様は目を覚まさなかった。お父様の元へお姉様の事を聞きたくて言った。けど、お父様はお母様が大好きだったから落ち込んでいて私の話を聞ける状況ではなかった。
話を聞いて欲しかった。お姉様の様子がおかしかったことも。お母様が亡くなって悲しかったことも。沢山の感情を、私は誰かに話したかった。
私が赤ちゃんの頃から傍にいてくれる侍女にだけ少し零してしまったけれど、お姉様が倒れてお父様があんな状況で私まで泣き喚いたら皆大変だと思った。だから、泣くのは一人の、自室の中でだけにすることにした。
お姉様が目を早く覚ませばいい。――不安はあるけど、優しいお姉様であればいい。私の大好きなお姉様のままでいてくれたらそれでいい。そしたらお父様にお姉様の相談をする必要もなくなる。
お父様が早く元気になってくれたらいい。――私は笑っているお父様が大好きだから。お父様はお母様が大好きだったから悲しくて仕方がないと思うけど、元気になってほしい。
お姉様が目を覚ましたらお父様を一緒に元気づけにいこうって言いに行こう。皆で笑い合えたら私は今が悲しくても、きっと家族で笑い合えたら私は幸せだから。
そんな風に考えながら、私は必死だった。お父様が元気になるように過ごそうって。そして眠ったままのお姉様のお見舞いにいって、目を早く覚ましますようにって祈った。
そして、お姉様は目を覚ました。
「お姉様!! 良かった。目を覚まして」
私は嬉しかった。お姉様が目を覚ましてくれたと聞いて。
だけど、声をあげて駆け寄った私の事をベッドに座り込んだお姉様は前とは違う目で見ていた。
「イエルノ……心配してくれたのね、ありがとう」
お姉様はそう言って笑っている。笑っているけれども——前とは違う。お姉様が大好きで、近くにいたからこそ違和感があった。
どうしたんだろう。
お姉様はどうしてしまったんだろう。
お姉様……、お母様が亡くなって、ショックだから? そう結論付けて、私はお姉様に話しかける。
お姉様とお母様が亡くなったショックを共有したかった。一緒に泣きたかった。お姉様と私しかいない空間だったら私は泣いてもいいと思ったから。――気を利かせて侍女たちが二人っきりにしてくれたけど、お姉様はまるで他人事のように、表面上は優しい言葉をかけてくる。
お姉様……?
私はお姉様が分からなかった。分からなくて、お姉様の前でも泣かなかった。
「お姉様、あのね——」
「お姉様——」
私はただ、お姉様に元気になって欲しいと思って沢山話しかけたけど、お姉様は前のようにやさしい瞳で私を見る事はなかった。
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