私は大好きなお姉様をざまぁする

池中織奈

文字の大きさ
13 / 60

何故、妹は姉をざまぁするに至ったか⑫

しおりを挟む
 私のお姉様が、ウーログと同じ転生者。前世の記憶を持っていて、そして異世界から来た。
 そんな重要な情報をウーログの口から聞かされた私はとてもじゃないけれど、すぐには頭が追い付かなかった。混乱している、というのが正しい。私は茫然とした顔をしていると思う。こんな風に感情を外に出してしまうのは、貴族の令嬢としてはいけないことだと正しくわかっている。だけれどもーー私は茫然とせずにはいられなかった。
「イエルノの話を聞く限り、おそらくお姉さんであるアクノール・カプラッド様はそのおかしくなった時期に記憶を思い出したんじゃないかな。僕は生まれた時から前世の記憶というのがあったから折り合いをつけることができたけれど、お姉さんは思い出して、混乱しているのかもしれない。イエルノ、いつ、お姉さんはおかしくなったんだい?」
「……お母様が亡くなった時から。その時にお姉様はおかしくなった。お母様が亡くなって、別人のようになった。お母様が亡くなったのに、お母様が亡くなったことを悲しんでなくて、別のことを考えているようだった。お母様が亡くなってからお姉様は私を見なくなった。なんだか別の何かを見ているみたいで。それは私だけじゃなくてほかの人にもそうだった。表面上は優しいお姉様のままだけど、何だか変なの。それでいて、どこか未来を知っているようなそんな発言をしたりするの。前世の記憶があったからって、お姉様が何でああなっているの? ウーログなら分かる?」
 混乱しているけれど、私はウーログの問いにしっかり答えた。感情のままに言葉を言い放ってしまって、正直言って、本当に取り乱しすぎだと反省してしまう。だけど、私はどうしてもお姉様の事が知りたかった。お姉様がどうしてああなったのか知りたかった。お姉様に昔のように優しいお姉様に戻ってほしかった。
 私は、私を、お姉様に見てほしかった。
 本当に子どものような我儘な感情かもしれない。だけど私はお姉様に元のように笑ってほしかった。
「イエルノのお母さんが亡くなったっていうと、二年前か。二年前からずっとそのまま? 二年で転生したという折り合いがついてないだけか。それとも、元の人格をつぶしてしまったとか……その可能性もあるか。性格自体は変わってる?」
「ううん……確かにお姉様はおかしくなっているけれど、お姉様のままだわ。……というか、元の人格をつぶしてしまったとかって、何?」
 なんだか恐ろしい発言で、思わず聞き返してしまった。元の人格をつぶしてしまったって、そんな可能性もあったのだろうか。
「前世では転生物の創作物って結構あったんだよ。小説とかで。その場合、転生物でーー僕の感覚だと憑依って形なんだけれど、前世の記憶と性格が元の性格を塗りつぶしてしまうものっていくつかあったんだ。僕はあまり憑依型の転生って好きじゃないから生まれた時から記憶があって安心したよ。突然思い出しても元の性格をちゃんと維持できているならありだと思うけれど、前世の記憶と性格しか残らず、元の記憶も一切ないパターンとかも創作物の中ではあったからね。正直そういうのは僕嫌だったから。だって元の性格を殺して、体を奪ったみたいに思えるからさ。それに気づいたら知っている誰かが知らない誰かになっているって周りは怖いだろうし。
 でもイエルノがおかしくなっていてもお姉さんはそのままだっていうのならば、元の性格は少なからず残っているって事だろうね。ならよかったよ」
 ウーログの話を聞きながら私はなんて恐ろしい話だろうと戦慄した。だってもしその性格をつぶしてしまうというものが本当にあったならば、大好きな誰かが突然違う誰かに体を乗っ取られて別人になるということだもの。そんなことが周りで起きたら私は怖い。
 もし前世の記憶なんて信じられないものがあっても、その大好きな人が大好きな人のままなら私は受け入れられる。お姉様はおかしいけれど今までのお姉様を感じられるもの。だから、きっと私の大好きなお姉様は、確かにいるはず。……違ったら悲しい。
「でもそれにしても、二年もずっとそのままというのは気になる。それにどこか未来を知っているようなっていうのも……。うーん、イエルノ。お姉さんが書いているノートの中身、僕が見る事って出来る?」
「ノートの中身を?」
「うん。多分それを読めばお姉さんのことがいろいろとわかると思うんだ」
 ウーログはあの不可解な文字を読むことができるのだから、確かにお姉様の謎が解明できるかもしれない。でもあのノートの中身がお姉様が知られたくない事だったら。そう思うとノートは信頼できる人にしか見せられない。ウーログが信頼出来るかというと、私は信頼できるーーううん、信頼したいと思う。
 前世の記憶の話も、異世界の記憶があるのも信じられないような話だけど、私は目の前にいるウーログが嘘をついているようには見えないから。
 だから、
「わかったわ。ノートの中身をどうにかウーログに見せるわ」
 私はそういった。


しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。

婚約破棄ですか?構いませんわ。ですがその契約、すべて我が家のものです

ふわふわ
恋愛
王太子ユリウスは、王立学園の卒業舞踏会で突然宣言した。 「カリスタ・ヴァレリオンとの婚約を破棄する!」 隣には涙を流す義妹ルミレア。 彼女は「姉に虐げられてきた可哀想な令嬢」を演じ、王太子はそれを信じてしまう。 だが――王太子は知らなかった。 ヴァレリオン公爵家が 王国銀行の資金、港湾会社の株式、商人組合の信用保証―― 王国経済の中枢を支える契約のほとんどを握っていたことを。 婚約破棄と同時に、カリスタは静かに言った。 「では契約を終了いたします」 その瞬間、王国の歯車は止まり始める。 港は停止。 銀行は資金不足。 商人は取引停止。 そしてついに―― 王宮大広間で王太子の公開断罪が始まる。 「私は悪くない!」 「騙されたんだ!」 見苦しく喚き暴れる王太子は、衛兵に取り押さえられ、床を引きずられるようにして連行されていく。 王太子、義妹、義父母。 すべてが破滅したとき、カリスタはただ静かに告げる。 「契約は終わりました」

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

処理中です...