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 満月の夜から一週間。私は毎晩アデミル様を手で慰めている。
 はじめは心臓が弾けそうなくらい恥ずかしかったけれど今はちょっとだけ慣れてきた。
 けれどだからと他事を考えられるような余裕なんてなくていつも手のひらの感触に全神経を集中している。
 いつもベッドの中でするので未だに私はアデミル様のペニスそのものを見たことはない。
 あちらの世界にいた頃、興味半分で無修正の動画を見たことがある。その時はただただグロテスクな印象しか受けなくて興奮も何もなかったのだが。
 アデミル様のものはどうだろう。やはりグロテスクなのだろうか。形は人のそれと同じようだったが。
「アデミル様」
「なんだ、シオリ」
 その日も十分なキスで蕩けさせてくれたアデミル様のズボンに手を伸ばした私は意を決して言った。
「アデミル様のおちんちん、見たいです」
 私の言葉に彼は少しだけ躊躇うようなそぶりを見せたがそれでもわかった、とシーツを剥いだ。
 間接照明の柔らかい灯りの中でアデミル様は身を起こしてズボンの中からそれを取り出す。
 私とのキスで既に勃ち上がっているそれは動画で見たものより青白くて血管が浮いているのがよく見て取れた。
 触っていた時から気づいていたが雁首が高くてここが通る時がきっと一番痛いんだろうなと思った。
 グロテスクかそうでないかと聞かれたらグロテスクだ。
 でもこれがアデミル様のペニスなのだと思ったら不思議と平気というか、愛しさまで込み上げてくるから不思議だ。
「シオリ?!」
 アデミル様が驚きの声をあげる。
 私はアデミル様のペニスに唇を寄せていた。
 これを慈しみたい。愛したい。気持ち良くなってほしい。そんな思いに駆られていた。
「ん……」
 根本からべろーっと舐め上げて先端のつるつるしたところを舌先でくすぐる。
「シオリ……!」
 そうすると先端の穴からはちょっとしょっぱい粘液がじわじわと溢れ出してきて私はそれを舐めとった。
 くぷぷ、と口の奥へとその剛直を迎え入れるが大きすぎて半分ほどで喉の奥に当たった。
 もっとオエッてなるかなって思ったけど喉をこくりこくりと鳴らしていれば平気なのに気づいた。
 じゅぷじゅぷと頭を上下させて口に入りきらないところは手で扱いてみる。ぐるる、とアデミル様が喉を鳴らすのが分かった。気持ちいいみたい。良かった。
「はあ……」
 アデミル様が熱い息を吐いて私の髪を優しく梳いてくれる。気持ちがいい。
 私は頑張って一ミリでも奥へ飲み込めるように喉の奥を開いてアデミル様のペニスを咥え込んだ。
 喉の奥で先端をきゅうっと締め付けるとぐう、とアデミル様の低い唸り声が聞こえる。
 それに気をよくした私は締め付けたまま頭を上下させた。
「シオリ、だめだ、出てしまう……!」
「んーん」
 私を引き剥がそうと頭を掴んでくるアデミル様の手を振り払って私はじゅぽじゅぽと先端を吸いながら頭を振った。
「くっ……!」
 一際深く咥え込んだその時、びゅるるっとアデミル様の精液が喉の奥を叩いた。
「んっ」
 喉の奥に注ぎ込まれたので私はそれを勢いのまま飲み下してしまう。
 決して美味しいものではなかったけれどこれもアデミル様の一部だと思えば苦でもなかった。
「ん、う」
 こくんと喉を鳴らして飲み下してアデミル様のペニスから口を離すと飲んだのか!と肩を掴まれた。
「はい。飲んじゃいました。だめ、でしたか?」
「不味かっただろう。口を濯いでこい」
「はい」
 ベッドを降りて洗面台で口を濯ぐ。口の中の粘っこい感じは薄れたがなんとも言えない風味は残ったままだった。
「何か飲み物でも持って来させるか?」
 アデミル様の言葉に私は平気です、と答えた。
「慣れれば大丈夫そうです」
「慣れ……きみは慣れるまでする気なのか」
 呆れたような声にダメでしたか?と小首を傾げるといいや、と苦笑した。
 それもいいが、と彼は私を抱き上げてあぐらをかいた膝の上に座らせる。
「はやくここで私を受け入れてほしいものだ」
 下腹部を撫でられてかあっと赤くなる。ひとのペニスを咥えておいてなんだがこれはこれでまた別問題なのだ。
 だって、それをするということは彼の前で裸にならねばならないと言うことだ。
 私は細身ではあるがどちらかというと細身というより貧弱だ。
 胸も普通サイズで特段大きいわけではない。それらをアデミル様に晒さなくてはならないというのは恥ずかしいものなのだ。
「アデミル様……」
 見つめると優しくも激しい口付けが降ってくる。
 舌を絡めながら彼の太い首に腕を巻き付けるとアデミル様の手が私の体を弄って夜着越しに胸に触れた。
「ん……う」
 胸を揉まれながら私が甘い声を漏らせばアデミル様の手は下へ下へと伸びていき布越しにその指が入り口を押し上げる。
「んっ」
 ぴくりと震えるとその指はぐっぐっと早く入りたいと言うように押し上げられ、刺激してくる。
 それに満足するとアデミル様は今度はその少し上、花芯のあるところを布越しで見えていないはずなのにピンポイントで責めてくる。
「ぁ、あっ」
 口付けから解放された私がその爪の先で弾くような刺激に震えているとアデミル様はぐりっとそこを押し潰した。
「あんんっ」
 腰の奥がずしりと重くなってきて奥に刺激が欲しいと体が疼き出す。本能がアデミル様を求めている。
 けれど私はそれをなけなしの理性で押さえ込んでもうダメです、とアデミル様の手をそっと押さえ込むのだ。
 そうするとアデミル様は素直にやめてくれる。それが今宵の終わりの合図だと知っているのだ。
「……おやすみ、シオリ」
「おやすみなさい、アデミル様」
 私たちはいつものように触れるだけのキスを交わして眠りにつくのだった。



(続く)
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