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充実した日々を唯一邪魔する存在が、姉の輝夜だ。彼女は一日に三回食事を持ってくるたびに、決まってドア越しに弟に話しかけた。
「ゲームやっているんだから、邪魔をするな。気が散るんだよ、ババア」
そう怒鳴りつけたものの、彼が言う「ゲーム」が、「新しく買ったばかりの面白いゲーム」だとは知らない輝夜は、普段どおりに粘り強く、他愛もない話題を弟に投げかける。
いくら怒りを露わにしても追い払えないなら、いっそ少しでも話し相手になってやったほうが早く引き下がってくれるかもしれない。
朔也はやがてそう発想を転換した。ドア越しの呼びかけに「帰れ」と怒鳴るのをぐっと堪え、意識はゲーム画面に注いだまま、なおかつ、なおざりながらも相槌を打つようにした。
しかし輝夜は、弟の態度を変化させた意味を勘違いしたらしく、食事の時間以外にも朔也の自室に足を運んでは、話を振ってくるようになった。しかも、一回あたりのしゃべる時間が長くなるおまけつきだ。
これはたまったものではないと、方針を再転換して怒声を浴びせると、話し相手になってくれていたのに急に怒り出したのはなぜ、という反応が返ってくる。その空とぼけたような態度が朔也の怒りをいっそう燃え上がらせる。
勘違いに気づいてくれればよかったのだが、輝夜は食事のとき以外も話しかけることも、なるべく会話時間を長引かせようとする姿勢も、彼女らしからぬ頑なさで改めようとはしなかった。
それに対抗して、朔也は姉が話しかけてきた瞬間から罵声を喚き散らす、という対応をとるようになった。結果、輝夜は話しかけてくる頻度をほんの少し減らしたが、思わぬ副作用が彼を苦しめることとなった。姉が去ったあと、コントローラーを操る指を動かせなくなるほどの、罪悪感と自己嫌悪に苛まれるようになったのだ。
僕は姉に対して酷い仕打ちをしている、態度を改めるのは僕のほうかもしれない――。
しかし、そんな反省の気持ちも、いざ輝夜の声を聞くと跡形もなくなり、気がついたときには姉を口汚く罵倒しているのだった。
『塔』が唯一の精神安定剤だった。自分を責める時間から抜け出すと、中断前よりもいっそう深くゲームの世界にのめり込んだ。彼はいつの間にか完全に『塔』に依存していた。
「ゲームやっているんだから、邪魔をするな。気が散るんだよ、ババア」
そう怒鳴りつけたものの、彼が言う「ゲーム」が、「新しく買ったばかりの面白いゲーム」だとは知らない輝夜は、普段どおりに粘り強く、他愛もない話題を弟に投げかける。
いくら怒りを露わにしても追い払えないなら、いっそ少しでも話し相手になってやったほうが早く引き下がってくれるかもしれない。
朔也はやがてそう発想を転換した。ドア越しの呼びかけに「帰れ」と怒鳴るのをぐっと堪え、意識はゲーム画面に注いだまま、なおかつ、なおざりながらも相槌を打つようにした。
しかし輝夜は、弟の態度を変化させた意味を勘違いしたらしく、食事の時間以外にも朔也の自室に足を運んでは、話を振ってくるようになった。しかも、一回あたりのしゃべる時間が長くなるおまけつきだ。
これはたまったものではないと、方針を再転換して怒声を浴びせると、話し相手になってくれていたのに急に怒り出したのはなぜ、という反応が返ってくる。その空とぼけたような態度が朔也の怒りをいっそう燃え上がらせる。
勘違いに気づいてくれればよかったのだが、輝夜は食事のとき以外も話しかけることも、なるべく会話時間を長引かせようとする姿勢も、彼女らしからぬ頑なさで改めようとはしなかった。
それに対抗して、朔也は姉が話しかけてきた瞬間から罵声を喚き散らす、という対応をとるようになった。結果、輝夜は話しかけてくる頻度をほんの少し減らしたが、思わぬ副作用が彼を苦しめることとなった。姉が去ったあと、コントローラーを操る指を動かせなくなるほどの、罪悪感と自己嫌悪に苛まれるようになったのだ。
僕は姉に対して酷い仕打ちをしている、態度を改めるのは僕のほうかもしれない――。
しかし、そんな反省の気持ちも、いざ輝夜の声を聞くと跡形もなくなり、気がついたときには姉を口汚く罵倒しているのだった。
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