少女王とその奴隷

阿波野治

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家と食事③

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 屋内は淡い花の香りに満ちていた。微かに食料品の匂いも混じっているが、そう強い主張ではない。床には藁と草花が敷き詰められていて、芳香の源泉のようだ。
 それなりに値が張る二人用の客室、といった広さだ。ただし、ベッドは部屋の隅に一人用の一台のみ。他に家具類は一切置かれていない。革袋や木箱などが部屋の隅に固められている。
 壁には大きな窓が二か所あり、どちらも開いている。そこから外の空気が入ってきているので、蒸し暑さは感じない。

「どうだ? 我が城は」
「美しいですね。床に花を敷き詰めているのは初めて見た気がします」
「とってつけたような、面白味のない感想だな」
 冷ややかな目で僕を一瞥し、室内の一隅に目を転じる。小屋の出入り口の対角にあたる角には、大量の荷物が固められている。

「そんなことよりも、食事だ。お前だって腹が減っているだろう。あそこに置いてある中から適当に選んで持ってきてくれ」
 シルヴァーはそう告げて、ベッドに腰を下ろした。すかさず脚にまとわりついて甘えてきたシロを、柔和な表情で見下ろしながら撫でる。
 もう少し具体的な指示が欲しかったが、突っ立ったままでいると怒鳴られそうだ。

 僕は移動を開始する。藁に混じった花を踏まないように気をつけながらの歩行だ。
 歩くたびにペニスが揺れ、内腿に当たる。その感触に、自分が全裸であることを思い出す。
 僕が裸で食事をするのは、まあいい。でも、シルヴァーは不快には思わないのだろうか?
 確かに彼女は、僕の服の心配はしていない。裸を見ても全く慌てていなかった。とはいえ、食事中だと、裸に対する心の持ちようも違ってくるのでは?

 正解が遠くにある問題を、主人の顔色を窺いながら、頼りない知恵を巡らせながら解き明かさなければならない。これが奴隷として生きるということなのか。
 初めての生きかたのはずなのに、妙にしっくりくるのは、それも仕方がないとすんなり割り切れているのは、なぜなのだろう。

 シルヴァーが指し示したのは食料置き場だった。目を惹くのは、人が入れそうなくらい大きな土製の甕。それをいくつもの革袋が取り囲み、用途不明な板が甕と壁の間に挟まっている。甕の中には水がなみなみと湛えられていて、蓋の上には木製のコップが伏せられている。
 革袋を開けると、多種多様な食料が目に飛び込んできた。ソーセージや魚の塩漬けなどの、保存がきく肉類。キャベツやオレンジなどの、野菜と果物。あとはパンと調味料の類だ。少女一人の数日分の食事としては充分な量で、栄養バランスもとれているが、女王の食事らしい豪勢さはない。 
 コップに水を汲み、左腕に食料を抱えられるだけ抱えてベッドまで行く。
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