少女王とその奴隷

阿波野治

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初めての狩り⑥

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 やらなければいけないことは分かっている。
 武器だ。壊れた槍と弓矢の代わりになる、なにか。それを調達しないことには始まらない。
 頭で考え、目で探した結果、石が一番無難だと結論する。

 手ごろな大きさのものを拾い集めているうちに、一羽の鳥が僕の近くの地面に降り立った。全体が茶色っぽい、地味な見た目の小鳥だ。
 狙いを定め、素早く放つ。
 身体能力が許す限り敏速に動いたつもりだ。しかし、僕が振りかぶった時点で、鳥はすでに回避行動に移っていた。
 小石は枝に命中し、地に落ちた。

「……駄目だ」
 シンプルだが深い絶望がのしかかり、小石を放った手の形のまま、しばらくは身じろぎ一つできなかった。

 金縛りがとけ、手中に武器を補充した直後、新たな一羽が樹の枝にとまった。
 すぐさま攻撃に移った。なるべく素早く投げたつもりだが、狙いがずれた。三羽目の鳥は、澄んだ声で鳴きながら飛び立っていった。

 四羽目はなかなか現れてくれない。人間の都合に合わせてくれないのは分かっているつもりだが、続けざまに二羽来たあとだけに、いらいらした。
 しかし、その感情も長続きせず、自分という人間が惨めに思えてきた。目の前に獲物が現れてもすぐには反応できないのでは、と思うくらい気持ちが沈んだ。

 いつまで経っても生き物は姿を見せない。
 ただ時間だけが流れていく。


* * *


 獲物をどこまで追いかけようが、狩りにどれだけ集中していようが、視界から外さないように心がけていた光の領域が、心なしか陰りはじめた。
 日没が近づきつつあるのだ。
 それでいながら外気が温暖であり続けていることに、僕の肉体が違和感を覚えている。多分、僕がこの島に流れ着く前に住んでいた土地はこの島よりも寒冷で、日が暮れると気温が下がっていたのだろう。
 僕の故郷は、この島からずっと離れた場所にあるのだろうか? 海を渡れば気候はがらりと変わる気もするし、なんとも言えない。

 僕の故郷。島に流れ着く以前の生活。
 それよりも今をどう生き抜いていくかのほうに、関心の重点を置くべきなのだろうが……。


* * *


 結局、獲物は一羽もしとめられなかった。
 あと一歩、というところまで迫ることすらないまま、タイムリミットを迎えてしまった。
 悔しいとかもどかしいとかではない。疲れすぎてなにも考えたくないのとも違う。ただだだ、シルヴァーの反応が恐ろしくてならない。
 勝ち目のない勝負とはいえ、シロに負けた。その汚名を返上するために設けられた、絶好の機会だったのに。女王は呆れるのを通り越して、怒りをぶつけてくるかもしれない。

「……どうしよう」
 生き物の代わりに果物をもいで持って帰る。世界が真っ暗になって帰れなくなるぎりぎりまで粘る。
 案は複数浮かんだが、ただちに小屋に帰って、「なにも獲れませんでした」と正直に告白するのが、結局は最善だという気がする。

「……帰ろう」
 壊れもしなかったが、使い道もなかった矢をまとめて掴み、道を引き返した。
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