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初めての狩り⑧
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「蜂蜜、ですね」
「そうだ。ついうっかり、こぼしてしまってな。シロに掃除を手伝ってもらっていたのだが、犬は舌が小さいからいつまで経っても終わらんのだよ。というわけでクロ、お前が舐めるんだ」
シルヴァーは口笛を吹いてシロの注目を惹き、手を払う仕草をした。
シロはすぐさま二メートルほど主人から遠ざかり、彼女のほうを向いておすわりをする。行為のさなかよりも激しく振り動かされるしっぽが、今現在の彼の心境を如実に表している。
僕はさっきまでシロがいた場所に四つん這いになり、顔を低くした。陰部は蜂蜜の助けを借りて妖しく輝いている。
「さあ、早く」
顔を近づけると、嫌な匂いが鼻孔に押し寄せた。物理的に鼻を押し返してくるような濃密さだ。蜂蜜の匂いと、シロの唾液の臭いと、シルヴァーの股間の臭いが混合した、おぞましい臭気。
なんという臭さだろう。
なんという甘美さだろう。
「なにをぼさっとしておる。さあ、早く!」
僕は奴隷から犬へと成り下がって、一心不乱に舐めた。
* * *
全ての蜂蜜が胃の腑に消えた。
シルヴァーはしばし肩で息をしていたが、やがて大儀そうに立ち上がった。少し離れた場所で待機しているシロを手招きし、いっしょに小屋に入った。
一人取り残された僕は、しばし四つん這いの姿勢を維持したのち、両脚を投げ出して地面に座り込んだ。奇しくも、行為を及ぼされているさなかのシルヴァーと同じ座りかただ。
唇の上と口の中には、匂いが染みついている。甘味と苦味と酸味がいっしょくたになった、オリジナルの蜂蜜の匂いが。
* * *
「クロよ。言うまでもなく、お前は食事抜きだからな」
いきなりドアが開いてシルヴァーが告げた。彼女はすっかり元のような衣装に着替えている。どんな魔法を使ったのか、蜂蜜の残り香すらもまとっていない。
「なに不満そうな面をしておる。あたしへの奉仕は当たり前の義務なのだから、できて当然。報酬をもらいたければ、必要とされている以上の働きを見せろ。自分が奴隷だということを忘れるんじゃないぞ。一瞬たりともな」
ドアの隙間からシロがこちらを見ている。漏れてくるのは彼の規則的な息づかいと、食べ物の匂い。準備は彼女がしたのだろうか?
無慈悲にドアが閉ざされた。
* * *
島の女王を名乗る少女・シルヴァーは、僕から記憶を奪い、奴隷にした。
横柄で、人づかいと言葉づかいが荒く、思いやりがない。
そのような人物に隷属して生きていかなければならない、という理解が深まるにつれて、絶望感は濃度を増した。
しかし、蜂蜜を舐めさせられた一件が、一方的だった流れに変化をもたらした。
あの体験は、屈辱的な罰であると同時に、甘美なる報酬でもあった。シルヴァーがどんなつもりで命じたのかは神のみぞ知るが、少なくとも僕はそう感じた。
これさえあるならば、仕える主人が横柄だろうが、人づかいと言葉づかいが荒かろうが、思いやりがなかろうが、なんとか生き抜いていけるのでは?
「そうだ。ついうっかり、こぼしてしまってな。シロに掃除を手伝ってもらっていたのだが、犬は舌が小さいからいつまで経っても終わらんのだよ。というわけでクロ、お前が舐めるんだ」
シルヴァーは口笛を吹いてシロの注目を惹き、手を払う仕草をした。
シロはすぐさま二メートルほど主人から遠ざかり、彼女のほうを向いておすわりをする。行為のさなかよりも激しく振り動かされるしっぽが、今現在の彼の心境を如実に表している。
僕はさっきまでシロがいた場所に四つん這いになり、顔を低くした。陰部は蜂蜜の助けを借りて妖しく輝いている。
「さあ、早く」
顔を近づけると、嫌な匂いが鼻孔に押し寄せた。物理的に鼻を押し返してくるような濃密さだ。蜂蜜の匂いと、シロの唾液の臭いと、シルヴァーの股間の臭いが混合した、おぞましい臭気。
なんという臭さだろう。
なんという甘美さだろう。
「なにをぼさっとしておる。さあ、早く!」
僕は奴隷から犬へと成り下がって、一心不乱に舐めた。
* * *
全ての蜂蜜が胃の腑に消えた。
シルヴァーはしばし肩で息をしていたが、やがて大儀そうに立ち上がった。少し離れた場所で待機しているシロを手招きし、いっしょに小屋に入った。
一人取り残された僕は、しばし四つん這いの姿勢を維持したのち、両脚を投げ出して地面に座り込んだ。奇しくも、行為を及ぼされているさなかのシルヴァーと同じ座りかただ。
唇の上と口の中には、匂いが染みついている。甘味と苦味と酸味がいっしょくたになった、オリジナルの蜂蜜の匂いが。
* * *
「クロよ。言うまでもなく、お前は食事抜きだからな」
いきなりドアが開いてシルヴァーが告げた。彼女はすっかり元のような衣装に着替えている。どんな魔法を使ったのか、蜂蜜の残り香すらもまとっていない。
「なに不満そうな面をしておる。あたしへの奉仕は当たり前の義務なのだから、できて当然。報酬をもらいたければ、必要とされている以上の働きを見せろ。自分が奴隷だということを忘れるんじゃないぞ。一瞬たりともな」
ドアの隙間からシロがこちらを見ている。漏れてくるのは彼の規則的な息づかいと、食べ物の匂い。準備は彼女がしたのだろうか?
無慈悲にドアが閉ざされた。
* * *
島の女王を名乗る少女・シルヴァーは、僕から記憶を奪い、奴隷にした。
横柄で、人づかいと言葉づかいが荒く、思いやりがない。
そのような人物に隷属して生きていかなければならない、という理解が深まるにつれて、絶望感は濃度を増した。
しかし、蜂蜜を舐めさせられた一件が、一方的だった流れに変化をもたらした。
あの体験は、屈辱的な罰であると同時に、甘美なる報酬でもあった。シルヴァーがどんなつもりで命じたのかは神のみぞ知るが、少なくとも僕はそう感じた。
これさえあるならば、仕える主人が横柄だろうが、人づかいと言葉づかいが荒かろうが、思いやりがなかろうが、なんとか生き抜いていけるのでは?
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