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役人来島②
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『事前に連絡も寄越さずに島にやってきたお前に、本来与えるべき食料などない。腹いっぱい食いたければ、自力で食料を調達してくることだな』
これまでに何度か、奴隷契約書に署名してからは頻繁に、シルヴァーからそんな言葉をかけられた。
現在のところ動物は一匹もしとめられていないが、ジャングルに踏み込めばいくらでもなっていて、採集も簡単な果物にはよく世話になっている。他にも、キノコ、野草。今のところ口に入れたことはないが、いざという場合には昆虫も選択肢に入るだろう。
食料をシルヴァーはどこから入手しているのだろう、という疑問は前々から抱いていた。
パン、ソーセージ、チーズ。そのどれもが、島では調達不可能な食材から作られている。つまり、外部から持ち込まれた。
シルヴァーがこの島で暮らしている理由は定かではないが、彼女はなにか事情があってこの島までやってきた人間で、食料はそのさいに持ち込んだのだろう。
これまで僕は漠然とそう考え、それ以上の考察はしてこなかったが、シルヴァーがとうとう真実を告げた。
「安心しろ。今日、役人がこの島に食料を持ってくることになっている。だから慌てる必要はない」
「役人……。食料……」
「驚いているな。まあ、無理もない。記憶を失ったお前にとって、出会った人間は今のところあたし一人なのだからな」
女王の口角に笑みが滲む。僕を憐れんでいるのか、微笑ましさに起因するものなのか、判然としない笑みだ。
「きちんとした役職名があるのだろうが、あたしはただ『役人』と呼んでいる。万事を事務的に執り行う、いけすかない連中だ。連中といっても、最近は一人しか来ないのだがな。人畜無害だから身構える必要はないぞ」
「役人と呼ばれている人物が食料を持ってくる、ということは分かりました。その人物は定期的にこの島を訪れるんですよね?」
「そうだ。二週間に一回という約束になっている」
「無害な人間という話ですが、それは陛下に害を及ぼさないという意味での無害、ですよね。イレギュラーな存在である僕を見て、どういう対応をとるか……」
外部の人間が来島するという情報は、客観的に見ればなかなか衝撃的だと思うのだが、僕は冷静さを保てている。だからこそ、懸念するべき点を的確に見抜き、不安を訴えられた。
「いや、無害だね。無知で浅はかなお前が考えるよりも、役人はずっと無害だ。お前のことは、何日か前に漂着し、食事を与える見返りに奴隷として使役していると、正直に報告しようと考えている。それで問題ないはずだ」
「……本当に大丈夫なんでしょうか」
「心配するな。もともとあたしは一人で島で暮らす予定だったのだが、寂しいからパートナーが欲しいと申し出たら、連中はシロを寄越してきたんだよ。奴隷であるお前は家畜みたいなものだから、シロのときのように共同生活の許可が下りる。そうだろう?」
シルヴァーは身を屈めて、ラストスパートといった勢いで餌を食らっているシロの背中をそっと撫でる。
彼女の奴隷である僕は、彼女にとってはシロ以下の存在だ。セックスはするが、いわば乳牛からミルクを搾乳するように、性的感を得るために性器を利用しているだけで、対等なパートナーではない。家畜という表現はこれ以上ないくらいしっくりくる。
しかし、そうはいっても僕は人間。シロの場合のようにすんなりいくのだろうか?
不安で仕方がなかったが、これ以上口答えをすると女王陛下が機嫌を損ねそうだ。
「分かりました」と答えて、朝食を食べるのに専念した。
これまでに何度か、奴隷契約書に署名してからは頻繁に、シルヴァーからそんな言葉をかけられた。
現在のところ動物は一匹もしとめられていないが、ジャングルに踏み込めばいくらでもなっていて、採集も簡単な果物にはよく世話になっている。他にも、キノコ、野草。今のところ口に入れたことはないが、いざという場合には昆虫も選択肢に入るだろう。
食料をシルヴァーはどこから入手しているのだろう、という疑問は前々から抱いていた。
パン、ソーセージ、チーズ。そのどれもが、島では調達不可能な食材から作られている。つまり、外部から持ち込まれた。
シルヴァーがこの島で暮らしている理由は定かではないが、彼女はなにか事情があってこの島までやってきた人間で、食料はそのさいに持ち込んだのだろう。
これまで僕は漠然とそう考え、それ以上の考察はしてこなかったが、シルヴァーがとうとう真実を告げた。
「安心しろ。今日、役人がこの島に食料を持ってくることになっている。だから慌てる必要はない」
「役人……。食料……」
「驚いているな。まあ、無理もない。記憶を失ったお前にとって、出会った人間は今のところあたし一人なのだからな」
女王の口角に笑みが滲む。僕を憐れんでいるのか、微笑ましさに起因するものなのか、判然としない笑みだ。
「きちんとした役職名があるのだろうが、あたしはただ『役人』と呼んでいる。万事を事務的に執り行う、いけすかない連中だ。連中といっても、最近は一人しか来ないのだがな。人畜無害だから身構える必要はないぞ」
「役人と呼ばれている人物が食料を持ってくる、ということは分かりました。その人物は定期的にこの島を訪れるんですよね?」
「そうだ。二週間に一回という約束になっている」
「無害な人間という話ですが、それは陛下に害を及ぼさないという意味での無害、ですよね。イレギュラーな存在である僕を見て、どういう対応をとるか……」
外部の人間が来島するという情報は、客観的に見ればなかなか衝撃的だと思うのだが、僕は冷静さを保てている。だからこそ、懸念するべき点を的確に見抜き、不安を訴えられた。
「いや、無害だね。無知で浅はかなお前が考えるよりも、役人はずっと無害だ。お前のことは、何日か前に漂着し、食事を与える見返りに奴隷として使役していると、正直に報告しようと考えている。それで問題ないはずだ」
「……本当に大丈夫なんでしょうか」
「心配するな。もともとあたしは一人で島で暮らす予定だったのだが、寂しいからパートナーが欲しいと申し出たら、連中はシロを寄越してきたんだよ。奴隷であるお前は家畜みたいなものだから、シロのときのように共同生活の許可が下りる。そうだろう?」
シルヴァーは身を屈めて、ラストスパートといった勢いで餌を食らっているシロの背中をそっと撫でる。
彼女の奴隷である僕は、彼女にとってはシロ以下の存在だ。セックスはするが、いわば乳牛からミルクを搾乳するように、性的感を得るために性器を利用しているだけで、対等なパートナーではない。家畜という表現はこれ以上ないくらいしっくりくる。
しかし、そうはいっても僕は人間。シロの場合のようにすんなりいくのだろうか?
不安で仕方がなかったが、これ以上口答えをすると女王陛下が機嫌を損ねそうだ。
「分かりました」と答えて、朝食を食べるのに専念した。
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