少女王とその奴隷

阿波野治

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モノ再訪①

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 シルヴァーに心の中を悟られることなく、モノが島を訪れる日がやってきた。
 毎日のように激しかったセックスの疲れを引きずりながらも、雷を落とされないようにきびきびと朝食の準備をする。もうすぐモノに再会できるのだと思うと、隠すことに成功していた喜びがとうとう表に出てしまいそうで、ひやひやした。

 本日のシルヴァーは上機嫌らしく、僕に小屋の中で食事をとることを許可してくれた。なおかつ、よくしゃべった。
 思い返せば、前回モノが来た日も機嫌はよかった。島に閉じ込められている身としてはやはり、外部の人間との交流は刺激的で、楽しみなイベントなのだろう。

「クロ、そろそろ出かけようか」
 昼食を終えて小一時間が経ち、僕たちは小屋を出る。僕が食事の後片付けをしている間、床に寝そべっていたシロもいっしょだ。
 つまり、先週と同じく、僕とモノが荷物を運んでいる間、女王と愛犬は散歩に出かける可能性がある。

 植物の楽園を抜けた僕は、海の遠くへと視線を投げた。すると、水平線の彼方に点が見えた。遠すぎて動く方向も、動いているのか否かさえも見極められないが、既視感のある映像だ。
 心臓が打つリズムが少し速くなった。

「なんだ、もう来ているのか。この前、もう少し早く来いと文句を言っておいたからかな。モノにしては気がきくじゃないか」
 僕と同じ映像を認めたらしく、シルヴァーがひとり言のようにそう呟いた。

 ほどなくして舟が着岸し、モノが下船した。服装も、表情を消した顔も、舟を飛び降りる軽やかさも、前回と変わりない。絶対に有り得ないが、着水のさいの海水の跳ねかたすらも、先週と全く同じに見えた。

「モノ、さっさと検分を済ませよう。早くシロと散歩がしたいんだ」
「荷物を運ぶのを待つ間、そうされることに決めたんですね」
「そんなところだ。ほら、クロ。なにをぼーっとしとるんだ」
「すみません」

 舟に駆け寄る。よじ登ろうとするさいに振り向くと、すぐ後ろにいたモノと視線が交差した。返ってきたのは、ほんの浅く頷くという反応。
 僕の胸中に滞っていた諸々のネガティブな感情が瞬時に消え失せ、体温がほんの少し上昇した。とてもモノらしい反応で、だからこそ嬉しかったし、安心した。

 シルヴァーは、まだ荷物を下ろしている途中の段階でモノを呼び止め、革袋の中身を説明させた。よほどシロと早く遊びたいらしい。
 必然に僕一人が作業する形となったが、苦痛ではない。
 またモノと二人きりになれる時間が、すぐそこまで来ている。

 元気よく砂浜を駆ける愛犬を穏やかにたしなめながら、シルヴァーは僕たちから遠ざかっていく。
 僕とモノは視線を交わし、荷物を胸に抱えていく。
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