少女王とその奴隷

阿波野治

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決行①

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 女王殺しを決行するのは夜だと決めていた。
 寝込みを襲い、目を覚ます前に殺してしまう。それが一番いい。成功率の観点からも、心理的な抵抗感の観点からも。

 内に秘めた企みを悟られないまま、世界は闇夜に包まれた。

 こんな日にもセックスは行われた。これが最後の交わりだ、という感慨はない。ただただ苦痛で、一秒でも早く終わってほしかった。
 幸いにも、シルヴァーはたった四回で切り上げてくれた。寝込みを襲うつもりなのだから、消費量はもともとそう多くないとはいえ、体力と気力を温存できたのはありがたい。

 夜が更けた。
 ベッドの上のシルヴァーは身じろぎ一つしない。寝たふりをしているのか、それとも、本当に眠っているのか……。
 目を凝らし、耳を澄まし、我慢強く注意を傾けて観察した結果、どうやら前者らしいと判明した。
 とうとう決行のときが来たのだ。

 物音を立てないように寝床から起き上がる。
 シロを殺害した凶器である棍棒は、僕の寝床とシルヴァーのベッドを結ぶ直線上の真ん中、ややベッド寄りの位置に無造作に転がっている。シロを殺したときからずっと放置されているそれを拾い上げ、さらに歩を進めてベッドの脇で立ち止まる。この場所でシロはよく眠っていたと思いながら、女王を見下ろす。

 あどけない寝顔だ。年齢相応の、邪気のない、安らかな寝顔。
 殺意は揺れた。しかし、瞬間的に凶器を握る手に力を込め、決して手放してはならないものを繋ぎ止める。
 見つめている時間が長引けば長引くほど、躊躇いは強まりそうだ。計画を白紙に戻す、などという馬鹿げた気持ちを起こさないためにも、速やかに殺してしまおう。
 女王とも、奴隷生活とも、今宵で永久にお別れだ。

 細く長く息を吐き、棍棒を高々と振りかざす。
 白い額を目がけて、力強く打ち下ろした。
 確かな手応えを感じ、「あっ」という小声を確かに聞いた。

 ――いや、逆だ。
 小声を聞いたあとで、手応えを感じた。
 その「あっ」という声は、棍棒が額に激突する直前に発せられた。

 一撃が命中した箇所から、信じられないほど大量の血が流れ出している。それは闇の中で、漆黒の流体のように見える。
 流出する黒の根源を両手で押さえて、シルヴァーは悶絶している。
 二つの手が半ば隠し、闇に妨害されてはっきりと見えないが、その顔は苦悶に歪んでいる。

 女王が奴隷の前で初めて見せる、苦痛の表情。
 僕を散々痛めつけ、苦しめてきた人間が、今初めて、被害者の痛みと苦しみを味わっている――。

 苦しんでいる。
 つまり、シルヴァーはまだ死んでいない。
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