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両親は昼食を済ませると、夫婦仲よく自家用車に乗って出かけた。行き先は聞いていないけど、夕方まで帰らないらしい。
外出しなくても決行するつもりだったけど、余計な人間がいないほうが心理的にはやりやすい。それは住友さんだって同じだろう。
同い年の異性が部屋まで来る。
大事な話をするから、静かで落ち着ける環境が必須。その条件を満たすということで、僕の自室が選ばれただけで、住友さんは僕と遊ぶために香坂家まで来るわけではない。
そう頭ではわかっていても、平常心を保つのは難しい。部屋の隅の目立たないところにほこりはたまっていないか、服装はこれでいいのか、飲み物はちゃんと冷えているのか。住友さんはたぶんそこまで気にしないだろうな、ということまで気になってしまう。
やがて、訪問者を報せる音が鳴った。
ちょうどトイレを済ませたばかりだった僕は、濡れた手をきちんと拭いてから階段を駆け下りた。インターフォン越しにやりとりするのではなくて、そのままドアを開ける。
「こんにちは」
住友さんは緊張気味のほほ笑みを浮かべて、髪の毛を耳にかけた。白地にピンク色の英文がつづられた長袖のシャツに、ブルージーンズ。
「こんにちは」
あいさつを返すのがワンテンポ遅れてしまったのは、住友さんの私服がかわいすぎるからだ。とても直視などできない。私服姿を見るのはこれで三回目だけど、たとえ百回見ても平然としてはいられないだろう。
だけど今日は、鼻の下を長くしている場合ではない。
「道、迷わなかった?」
「大丈夫だったよ。香坂の説明がわかりやすかったから」
「それはよかった。じゃあ、部屋まで案内するね。二階だから」
自室まで導いて、用意していた座布団に座ってもらって、冷たいお茶を出す。相対したことで緊張はピークに達した。
お互いにしゃべり出そうとしない。話し合いを持ちかけたのは僕なのだから、僕のほうから話し出さなければいけないと、頭ではわかっている。
かすれた声が出そうだったので、まずはお茶を口にする。それを見て住友さんもグラスを手にしたけど、飲まない。宙に浮かせたまま、さり気なくでも熱心にでもなく部屋を見回している。唇は閉じたままだ。
緊張しているのはお互いさまなのだ、と気がつく。
それを境に、心は少しずつ落ち着きを取り戻していった。それが一定の水準を下回ったのが、口火を切る合図になった。
「話、まずは由佳のことからになるけど」
いいかな、と問うよりも先に、いいよ、というふうに住友さんは小さくうなずいた。
真実を打ち明けるのをためらう気持ちがないといえば、嘘になる。それでも僕は思い切って言った。
「実は、由佳は実在の人物じゃなくて、女の子をかたどった西洋人形なんだ。僕が勝手にその人形の人格を設定して、実在の人物のつもりで接しているんだ。ほら、図書館で話したでしょ? 子どものころ、母親が昔かわいがっていた人形で遊んでいたって」
告白した瞬間、住友さんの瞳は大きく見開かれた。
外出しなくても決行するつもりだったけど、余計な人間がいないほうが心理的にはやりやすい。それは住友さんだって同じだろう。
同い年の異性が部屋まで来る。
大事な話をするから、静かで落ち着ける環境が必須。その条件を満たすということで、僕の自室が選ばれただけで、住友さんは僕と遊ぶために香坂家まで来るわけではない。
そう頭ではわかっていても、平常心を保つのは難しい。部屋の隅の目立たないところにほこりはたまっていないか、服装はこれでいいのか、飲み物はちゃんと冷えているのか。住友さんはたぶんそこまで気にしないだろうな、ということまで気になってしまう。
やがて、訪問者を報せる音が鳴った。
ちょうどトイレを済ませたばかりだった僕は、濡れた手をきちんと拭いてから階段を駆け下りた。インターフォン越しにやりとりするのではなくて、そのままドアを開ける。
「こんにちは」
住友さんは緊張気味のほほ笑みを浮かべて、髪の毛を耳にかけた。白地にピンク色の英文がつづられた長袖のシャツに、ブルージーンズ。
「こんにちは」
あいさつを返すのがワンテンポ遅れてしまったのは、住友さんの私服がかわいすぎるからだ。とても直視などできない。私服姿を見るのはこれで三回目だけど、たとえ百回見ても平然としてはいられないだろう。
だけど今日は、鼻の下を長くしている場合ではない。
「道、迷わなかった?」
「大丈夫だったよ。香坂の説明がわかりやすかったから」
「それはよかった。じゃあ、部屋まで案内するね。二階だから」
自室まで導いて、用意していた座布団に座ってもらって、冷たいお茶を出す。相対したことで緊張はピークに達した。
お互いにしゃべり出そうとしない。話し合いを持ちかけたのは僕なのだから、僕のほうから話し出さなければいけないと、頭ではわかっている。
かすれた声が出そうだったので、まずはお茶を口にする。それを見て住友さんもグラスを手にしたけど、飲まない。宙に浮かせたまま、さり気なくでも熱心にでもなく部屋を見回している。唇は閉じたままだ。
緊張しているのはお互いさまなのだ、と気がつく。
それを境に、心は少しずつ落ち着きを取り戻していった。それが一定の水準を下回ったのが、口火を切る合図になった。
「話、まずは由佳のことからになるけど」
いいかな、と問うよりも先に、いいよ、というふうに住友さんは小さくうなずいた。
真実を打ち明けるのをためらう気持ちがないといえば、嘘になる。それでも僕は思い切って言った。
「実は、由佳は実在の人物じゃなくて、女の子をかたどった西洋人形なんだ。僕が勝手にその人形の人格を設定して、実在の人物のつもりで接しているんだ。ほら、図書館で話したでしょ? 子どものころ、母親が昔かわいがっていた人形で遊んでいたって」
告白した瞬間、住友さんの瞳は大きく見開かれた。
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