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東京ドームに到着しました
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なんのトラブルもアクシデントもなく、俺たちは東京ドームに辿り着いた。
乗り替えだのなんだので、相当手間を食うに違いないと戦々恐々としていたのだが、心配は杞憂に終わった。東京駅から東京ドームの最寄り駅までは、一本の電車で、十分ほどで行けてしまうのだ。
どの乗り場からどこ行きの電車に乗ればいいのかは、駅員に訊いたら凄まじく親切かつ丁寧に教えてくれた。俺のような右も左も分からぬ田舎者にあれこれ疑問をぶつけられるのは慣れっこだからだろう、文句のつけようがないくらい分かりやすい説明だった。どこかの田舎の駅で駅員をやっている無愛想な小人とは大違いだ。
駅舎を出て、とりあえず、東京ドームの傍まで行ってみる。間近から見上げたドームは大層立派で、初見の人間に感嘆の声を上げさせるだけの風格がある。現在の時刻を確認すると、待ち合わせの約半時間前。
「ところでアリス、お前、野球は好きなの?」
ふと疑問に思ったので、ぶつけてみる。
「好きでも嫌いでもないわ」
「好きじゃないのに観に行きたいの?」
「好きでも嫌いでもないけど、興味があるのは確かだから」
「ということは、三人の中で俺だけ野球に興味なしって可能性もあるのか。なんか嫌だな。まあ、興味なし・興味なし・興味なしのトリプルスリーよりはマシか」
「よく観に行く気になったね。興味もないのに」
「まあね。ちなみに、野球に興味を持つようにきっかけとか、あんの?」
「特にないわ。なんとなく興味を持っただけだから」
「なんとなく興味を持っただけで戸棚に忍び込んだのか。型破りだな、お前」
小脇に抱え直し、歩き出す。
「ドームの周りを一周しよう。暇つぶしくらいにはなるだろ」
数多の老若男女と擦れ違う。アラブ系の人が妙に多い。なぜアラブ系だと判断したかというと、アラブっぽい服を着ていて、二瘤駱駝に乗っているからだが、日本国における人種の比率を考えると異様なまでの多さだ。
「中東フェスティバル的なイベントでも催されてるのかなぁ?」
「訊いてみればいいと思うわ」
「言葉通じなくない?」
「話してみなければ分からないと思うけど」
「えー、でも嫌だな。駱駝、見ろよ。あいつら、相当でかいぜ」
「草食なのだから、食べられはしないでしょう」
「まあ、そうだけど」
イランとかあのへんの国は産油国で、人口も多く、発展が著しいと噂に聞く。爆買い中国人みたく、経済的に豊かになった結果の東京進出なのかもしれない。
ただ、地面のあちこちに散らばっている糞、これはいかがなものか。中国人観光客はマナーがよろしくない、とはよく言われているが、所詮は一部の例外が目立っているだけ。全頭が必ず糞をする駱駝は、それとは次元が違う。
「こんなに糞をするの、おかしくない? 駱駝って、あれだろ。砂漠でも長期間食べなくても平気な体なんだろ。そんなに食べないんだから、必然的に糞も少なくならない? 違う?」
「さあ」
「あらっ。アリスちゃんにでも知らないことがありますか」
「ええ、残念ながら」
うんこを踏まないように注意を払いながらの歩行となったため、あまり楽しめなかったが、とにもかくにもドームを一周し終えた。が、待ち合わせ時間まではまだまだある。具体的には二十分ばかりある。というわけで、
「行きますか、もう一巡」
二周目に入ってすぐ、重大な手抜かりがあったことに気がついた。待ち合わせは東京ドームの前という取り決めを交わしたが、東京ドームの前とは具体的にどこを指すのか、そこのところの確認を取っていないではないか。
それだけではない。俺と古謝さんは連絡先を交換していない。つまり、具体的な待ち合わせ場所を決めるための協議を行うことができない。従って、俺も古謝さんも独断で行動しなければならない。
行動といっても、東京ドームの周りを歩き回って相手を捜すか、一点に留まって相手を待つか、パターンはその二つだ。選択肢として考えられるのは、
1、俺は古謝さんを捜し回り、古謝さんは俺を待つ。
2、俺は古謝さんを捜し回り、古謝さんも俺を捜し回る。
3、俺は古謝さんを待ち、古謝さんは俺を捜し回る。
4、俺は古謝さんを待ち、古謝さんも俺を待つ。
この四つ。
1か3だった場合、つまり二人が取った行動が異なった場合、二人は遅かれ早かれ合流を果たせるだろう。
最悪なのは2か4、つまり二人が同じ行動を取った場合だ。なぜならば、広い範囲内を二人がともに絶えず動き回れば、相手を見つける・相手に見つけてもらう確率は低くなるし、互いが独自に定めた一点に留まり続ければ、二人が出会うことは永遠にないのだから。
捜す。待つ。どちらの行動を取っても、それが正解だという保証はない。しかしながら、人間は動くか止まるか、どちらかの状態にしか属せない。従って、正しくないかもしれないのを覚悟の上で、どちらかの行動を取らなければならない。そんな七面倒くさくてアホくさい状況に、今、俺と古謝さんは置かれているわけだ。
二周目が終わった。五歳児に泣きつくのは情けないが、そんな悠長なことを言っている場合ではない。
アリスに相談しようと足を止めた直後、こちらへと駆け寄ってくる靴音が聞こえた。
たまたま俺がいる方に向かって走っていただけで、靴音の主は全然知らない人でした。そんな肩透かしを何度も食らったので、二周目に入ってからは、接近してくるそれを聞き取っても顔を上げさえしていなかった。しかし、今回の音は妙に気がかりに耳に響く。
半信半疑で音源を見向いた俺は、歓声を上げずにはいられなかった。
「古謝さん!」
かなり距離がある上、視野をひっきりなしに行き交う通行人が妨げとなり、途切れ途切れにしか見えなかったが、はっきりと古謝さんだと分かった。上はブラウス、下はスカート。どちらも新雪のように白い。
通行人をかわし、駱駝の糞を跳び越え、とうとう俺のもとに辿り着いた。少し弾んだ息。乱れた前髪を整える指の動き。そして、綿菓子の微笑み。
「ごめんね、遅くなっちゃって。待った? ていうか、捜した?」
「はい。ずっとドームの周りをぐるぐると。古謝さんも捜しました?」
「ううん。駅を出てすぐのところで待っていたんだけど、アリスちゃんに呼ばれた気がして、呼んでいる方へ行ってみたら、小林さんたちがいたの」
「呼ばれた? 本当ですか」
「うん、本当」
古謝さんは膝に両手をついて前屈みになり、アリスと目の高さを同じにする。
「アリスちゃん、ありがとうね。あなたが呼んでくれた御陰で、すんなり合流することができたわ」
アリスは知らん顔をしている。本当に呼んだのか、呼ばれたと古謝さんが思い込んでいるだけなのか。真相は定かではないが、古謝さんの機嫌は上々のようだし、私服姿がとてもかわいいので、まあいいか、という気分になる。
「古謝さん、これからどうしましょうか。どこか寄りたいところがあるなら付き合いますよ」
「私、行ってみたい店があるの。前々から一度入ってみたかったんだけど、子供用品をメインで売っている店だから、大人一人だと入りづらくて」
「アリスがいるからちょうどいい、というわけですね。じゃあ、そこへ行きましょう」
「アリスちゃんはどう思う? お店、行ってみたい?」
「二人が行きたいなら、わたしも付き合うわ」
「ありがとう。いい商品があったら買ってあげるね。一緒に選ぼうね」
「好きにすればいいわ」
「じゃあ、買い物とお昼ご飯、どっちを先にしましょうか。二人はお腹、空いてる?」
「俺は無茶苦茶空いてはないですね」
「私もそんなに空いてないけど、アリスちゃんは?」
「あ、こいつ、飢えには強いんすよ。だよな?」
「ええ」
「あら、凄いのね」
古謝さんは表情一つ崩さずに言う。子供の戯言だからと見くびっているふうでもなく、さらりと。出会った当初、俺はアリスを「掴みどころがない」と評したが、それとはまた別の掴みどころのなさが古謝さんにはある。
「じゃあ、先にお店へ買い物に行って、そのあとでご飯。それで構わない?」
俺もアリスも異論はなく、それで決まった。
あちこちに散らばった駱駝の糞、それだけは踏まないように気をつけながら、三人一塊となって駅へ向かった。
乗り替えだのなんだので、相当手間を食うに違いないと戦々恐々としていたのだが、心配は杞憂に終わった。東京駅から東京ドームの最寄り駅までは、一本の電車で、十分ほどで行けてしまうのだ。
どの乗り場からどこ行きの電車に乗ればいいのかは、駅員に訊いたら凄まじく親切かつ丁寧に教えてくれた。俺のような右も左も分からぬ田舎者にあれこれ疑問をぶつけられるのは慣れっこだからだろう、文句のつけようがないくらい分かりやすい説明だった。どこかの田舎の駅で駅員をやっている無愛想な小人とは大違いだ。
駅舎を出て、とりあえず、東京ドームの傍まで行ってみる。間近から見上げたドームは大層立派で、初見の人間に感嘆の声を上げさせるだけの風格がある。現在の時刻を確認すると、待ち合わせの約半時間前。
「ところでアリス、お前、野球は好きなの?」
ふと疑問に思ったので、ぶつけてみる。
「好きでも嫌いでもないわ」
「好きじゃないのに観に行きたいの?」
「好きでも嫌いでもないけど、興味があるのは確かだから」
「ということは、三人の中で俺だけ野球に興味なしって可能性もあるのか。なんか嫌だな。まあ、興味なし・興味なし・興味なしのトリプルスリーよりはマシか」
「よく観に行く気になったね。興味もないのに」
「まあね。ちなみに、野球に興味を持つようにきっかけとか、あんの?」
「特にないわ。なんとなく興味を持っただけだから」
「なんとなく興味を持っただけで戸棚に忍び込んだのか。型破りだな、お前」
小脇に抱え直し、歩き出す。
「ドームの周りを一周しよう。暇つぶしくらいにはなるだろ」
数多の老若男女と擦れ違う。アラブ系の人が妙に多い。なぜアラブ系だと判断したかというと、アラブっぽい服を着ていて、二瘤駱駝に乗っているからだが、日本国における人種の比率を考えると異様なまでの多さだ。
「中東フェスティバル的なイベントでも催されてるのかなぁ?」
「訊いてみればいいと思うわ」
「言葉通じなくない?」
「話してみなければ分からないと思うけど」
「えー、でも嫌だな。駱駝、見ろよ。あいつら、相当でかいぜ」
「草食なのだから、食べられはしないでしょう」
「まあ、そうだけど」
イランとかあのへんの国は産油国で、人口も多く、発展が著しいと噂に聞く。爆買い中国人みたく、経済的に豊かになった結果の東京進出なのかもしれない。
ただ、地面のあちこちに散らばっている糞、これはいかがなものか。中国人観光客はマナーがよろしくない、とはよく言われているが、所詮は一部の例外が目立っているだけ。全頭が必ず糞をする駱駝は、それとは次元が違う。
「こんなに糞をするの、おかしくない? 駱駝って、あれだろ。砂漠でも長期間食べなくても平気な体なんだろ。そんなに食べないんだから、必然的に糞も少なくならない? 違う?」
「さあ」
「あらっ。アリスちゃんにでも知らないことがありますか」
「ええ、残念ながら」
うんこを踏まないように注意を払いながらの歩行となったため、あまり楽しめなかったが、とにもかくにもドームを一周し終えた。が、待ち合わせ時間まではまだまだある。具体的には二十分ばかりある。というわけで、
「行きますか、もう一巡」
二周目に入ってすぐ、重大な手抜かりがあったことに気がついた。待ち合わせは東京ドームの前という取り決めを交わしたが、東京ドームの前とは具体的にどこを指すのか、そこのところの確認を取っていないではないか。
それだけではない。俺と古謝さんは連絡先を交換していない。つまり、具体的な待ち合わせ場所を決めるための協議を行うことができない。従って、俺も古謝さんも独断で行動しなければならない。
行動といっても、東京ドームの周りを歩き回って相手を捜すか、一点に留まって相手を待つか、パターンはその二つだ。選択肢として考えられるのは、
1、俺は古謝さんを捜し回り、古謝さんは俺を待つ。
2、俺は古謝さんを捜し回り、古謝さんも俺を捜し回る。
3、俺は古謝さんを待ち、古謝さんは俺を捜し回る。
4、俺は古謝さんを待ち、古謝さんも俺を待つ。
この四つ。
1か3だった場合、つまり二人が取った行動が異なった場合、二人は遅かれ早かれ合流を果たせるだろう。
最悪なのは2か4、つまり二人が同じ行動を取った場合だ。なぜならば、広い範囲内を二人がともに絶えず動き回れば、相手を見つける・相手に見つけてもらう確率は低くなるし、互いが独自に定めた一点に留まり続ければ、二人が出会うことは永遠にないのだから。
捜す。待つ。どちらの行動を取っても、それが正解だという保証はない。しかしながら、人間は動くか止まるか、どちらかの状態にしか属せない。従って、正しくないかもしれないのを覚悟の上で、どちらかの行動を取らなければならない。そんな七面倒くさくてアホくさい状況に、今、俺と古謝さんは置かれているわけだ。
二周目が終わった。五歳児に泣きつくのは情けないが、そんな悠長なことを言っている場合ではない。
アリスに相談しようと足を止めた直後、こちらへと駆け寄ってくる靴音が聞こえた。
たまたま俺がいる方に向かって走っていただけで、靴音の主は全然知らない人でした。そんな肩透かしを何度も食らったので、二周目に入ってからは、接近してくるそれを聞き取っても顔を上げさえしていなかった。しかし、今回の音は妙に気がかりに耳に響く。
半信半疑で音源を見向いた俺は、歓声を上げずにはいられなかった。
「古謝さん!」
かなり距離がある上、視野をひっきりなしに行き交う通行人が妨げとなり、途切れ途切れにしか見えなかったが、はっきりと古謝さんだと分かった。上はブラウス、下はスカート。どちらも新雪のように白い。
通行人をかわし、駱駝の糞を跳び越え、とうとう俺のもとに辿り着いた。少し弾んだ息。乱れた前髪を整える指の動き。そして、綿菓子の微笑み。
「ごめんね、遅くなっちゃって。待った? ていうか、捜した?」
「はい。ずっとドームの周りをぐるぐると。古謝さんも捜しました?」
「ううん。駅を出てすぐのところで待っていたんだけど、アリスちゃんに呼ばれた気がして、呼んでいる方へ行ってみたら、小林さんたちがいたの」
「呼ばれた? 本当ですか」
「うん、本当」
古謝さんは膝に両手をついて前屈みになり、アリスと目の高さを同じにする。
「アリスちゃん、ありがとうね。あなたが呼んでくれた御陰で、すんなり合流することができたわ」
アリスは知らん顔をしている。本当に呼んだのか、呼ばれたと古謝さんが思い込んでいるだけなのか。真相は定かではないが、古謝さんの機嫌は上々のようだし、私服姿がとてもかわいいので、まあいいか、という気分になる。
「古謝さん、これからどうしましょうか。どこか寄りたいところがあるなら付き合いますよ」
「私、行ってみたい店があるの。前々から一度入ってみたかったんだけど、子供用品をメインで売っている店だから、大人一人だと入りづらくて」
「アリスがいるからちょうどいい、というわけですね。じゃあ、そこへ行きましょう」
「アリスちゃんはどう思う? お店、行ってみたい?」
「二人が行きたいなら、わたしも付き合うわ」
「ありがとう。いい商品があったら買ってあげるね。一緒に選ぼうね」
「好きにすればいいわ」
「じゃあ、買い物とお昼ご飯、どっちを先にしましょうか。二人はお腹、空いてる?」
「俺は無茶苦茶空いてはないですね」
「私もそんなに空いてないけど、アリスちゃんは?」
「あ、こいつ、飢えには強いんすよ。だよな?」
「ええ」
「あら、凄いのね」
古謝さんは表情一つ崩さずに言う。子供の戯言だからと見くびっているふうでもなく、さらりと。出会った当初、俺はアリスを「掴みどころがない」と評したが、それとはまた別の掴みどころのなさが古謝さんにはある。
「じゃあ、先にお店へ買い物に行って、そのあとでご飯。それで構わない?」
俺もアリスも異論はなく、それで決まった。
あちこちに散らばった駱駝の糞、それだけは踏まないように気をつけながら、三人一塊となって駅へ向かった。
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