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答えはあっさりと胸に浮上した。なおかつ、唯一の正答だと瞬間的に確信できた。
平穏だ。
湯田真理愛が欲しているのは、平穏無事な学校生活。樹音たちからいつなにをされるのか、言われるのかと怯えることなく過ごせる、平穏な日常なのだ。
それは、真理愛が川真田樹音たちからいじめを受けるようになって以来、無縁の環境だ。
転校する以前は、それを手にしていた。
友だちは一人もいなかった。欲した、にもかかわらず。得るために自分なりに試行錯誤した、にもかかわらず。
ただ、少なくとも平穏ではあった。
クラスメイトは誰も、真理愛を勝手に死んだことにして、花瓶の花を机には置かなかった。
授業中に大声で真理愛の悪口を言わなかった。
足を引っかけて転ばせようとはしなかった。
スクールバッグにつけた小さなクマのぬいぐるみは、誰からもちょっかいをかけられることなく、バッグに結びつけられて平和を享受していた。
憎しみはある。復讐したい気持ちもある。しかし、それらの感情を誰にもぶつけることなく、平穏に生きていけるならそれに越したことはない。
それが真理愛の本心なのだ。
目頭が熱い。
彼に伝えないと。
彼には、ぜひとも知っておいてほしい。
「トモノリさん、とお呼びしてもいいですよね。わたしは――」
真理愛は自らの考えを率直に、包み隠さずに話した。
「なるほど。君の気持ちはよくわかったよ」
感情がこもった語りを最後まで聞き届けたトモノリは、彼らしい穏やかな声でそう言って、浅くうなずいた。
「話をまとめると、君はいじめの加害者たちを憎んでいるし、復讐したいと思ってもいるけど、自らの手で実行せずにはいられないほど強い欲求ではない。なぜなら、暴力的なことに対して嫌悪感を抱いているからであると同時に、平穏な日常を欲する気持ちのほうがより強いから。その解釈で合っているかな」
真理愛は唇をきゅっと結び、首を縦に振った。
トモノリは彼女から視線を外した。沈思黙考しているらしい横顔を見せていたが、
「少し待っていて」
おもむろに腰を上げてそう告げ、小屋の中に入る。
一分もしないうちに戻ってきたとき、彼の手にはなにかが握りしめられていた。
鉈だ。
トモノリ自身から殺気立ったオーラが発せられているわけではない。それにもかかわらず、真理愛は鳥肌が立った。
呼吸が止まりそうな緊張感が肉体を押しつぶしてくる。禍々しい鈍色の刃から冷気が立ち昇り、彼の手元だけ気温が低下しているように感じられる。凶器から一瞬たりとも目が離せない。
平穏だ。
湯田真理愛が欲しているのは、平穏無事な学校生活。樹音たちからいつなにをされるのか、言われるのかと怯えることなく過ごせる、平穏な日常なのだ。
それは、真理愛が川真田樹音たちからいじめを受けるようになって以来、無縁の環境だ。
転校する以前は、それを手にしていた。
友だちは一人もいなかった。欲した、にもかかわらず。得るために自分なりに試行錯誤した、にもかかわらず。
ただ、少なくとも平穏ではあった。
クラスメイトは誰も、真理愛を勝手に死んだことにして、花瓶の花を机には置かなかった。
授業中に大声で真理愛の悪口を言わなかった。
足を引っかけて転ばせようとはしなかった。
スクールバッグにつけた小さなクマのぬいぐるみは、誰からもちょっかいをかけられることなく、バッグに結びつけられて平和を享受していた。
憎しみはある。復讐したい気持ちもある。しかし、それらの感情を誰にもぶつけることなく、平穏に生きていけるならそれに越したことはない。
それが真理愛の本心なのだ。
目頭が熱い。
彼に伝えないと。
彼には、ぜひとも知っておいてほしい。
「トモノリさん、とお呼びしてもいいですよね。わたしは――」
真理愛は自らの考えを率直に、包み隠さずに話した。
「なるほど。君の気持ちはよくわかったよ」
感情がこもった語りを最後まで聞き届けたトモノリは、彼らしい穏やかな声でそう言って、浅くうなずいた。
「話をまとめると、君はいじめの加害者たちを憎んでいるし、復讐したいと思ってもいるけど、自らの手で実行せずにはいられないほど強い欲求ではない。なぜなら、暴力的なことに対して嫌悪感を抱いているからであると同時に、平穏な日常を欲する気持ちのほうがより強いから。その解釈で合っているかな」
真理愛は唇をきゅっと結び、首を縦に振った。
トモノリは彼女から視線を外した。沈思黙考しているらしい横顔を見せていたが、
「少し待っていて」
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一分もしないうちに戻ってきたとき、彼の手にはなにかが握りしめられていた。
鉈だ。
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