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手にしているものを、真理愛の目の前の地面に音もなく置き、トモノリはもとの木箱に腰を下ろした。
「手にとってごらん。そして、想像してみるといい」
「想像?」
「君自身がその武器を使って、君をいじめていた子たちを殺す場面を。空想の中で人を殺すのは罪ではないから、存分に想像するといい。さあ、やってみて」
驚きと違和感が同時に胸を襲った。
真理愛は暴力行為に嫌悪感を持っている。少なくとも現時点では、暴力的な手段で樹音たちに復讐する意思はない。
その二つについては、トモノリにちゃんと伝えた。それなのに、なぜ、彼はそんな提案をしたのだろう?
言われたとおりに試してみれば謎が解ける気もして、真理愛は鉈の柄を掴む。
持ち上げてみて、その重量に驚いた。持つのがやっとというほどではないにせよ、ずっしりと重い。中学二年生の女子としては平均的な真理愛の腕力と体力では、長時間振るいつづけるのも難しそうだ。
凶器が予想以上に重い。ただそれだけの事実で、真理愛は人間を殺すのがいかに困難なのかを痛感させられた。
真理愛の復讐の対象は複数人だ。妥協して、諸悪の根源である川真田樹音一人に絞ったとしても、願望を成就させられるかは怪しい。当たり前だが、誰だって殺されたくない。逃げるし、抵抗するし、立ち向かってくる。体格、身体能力、ともに樹音のほうが上だから、なんらかの武器を手に一対一で戦ったとすれば、樹音が勝利を収める確率が高い。
寝込みを襲うなど、劣勢を覆す方策がないわけではない。しかし真理愛は、これ以上想像を推し進める意欲が湧かなかった。実質的に、鉈の重さを体感した時点で決着はついていた。
「やっぱり馬鹿げていますよね、暴力なんて」
どこか吹っ切れたような、爽やかな苦笑が真理愛の満面を彩る。上体を乗り出して手を伸ばし、トモノリの目の前の地面に鉈を置く。その体勢のまま彼を見上げた。
驚きが胸を襲った。
トモノリの顔に、どこか不服そうな、もどかしそうな、なにかを我慢しているような、そんな表情が浮かんでいるのだ。
真理愛からの視線に気がついたとたん、トモノリはスウィッチを切り替えたように無表情に戻った。鉈に一瞥をくれてから真理愛と視線を合わせ、
「そうだね。君の言うとおりだよ」
無表情なのに、どこかさびしそうだった。
「手にとってごらん。そして、想像してみるといい」
「想像?」
「君自身がその武器を使って、君をいじめていた子たちを殺す場面を。空想の中で人を殺すのは罪ではないから、存分に想像するといい。さあ、やってみて」
驚きと違和感が同時に胸を襲った。
真理愛は暴力行為に嫌悪感を持っている。少なくとも現時点では、暴力的な手段で樹音たちに復讐する意思はない。
その二つについては、トモノリにちゃんと伝えた。それなのに、なぜ、彼はそんな提案をしたのだろう?
言われたとおりに試してみれば謎が解ける気もして、真理愛は鉈の柄を掴む。
持ち上げてみて、その重量に驚いた。持つのがやっとというほどではないにせよ、ずっしりと重い。中学二年生の女子としては平均的な真理愛の腕力と体力では、長時間振るいつづけるのも難しそうだ。
凶器が予想以上に重い。ただそれだけの事実で、真理愛は人間を殺すのがいかに困難なのかを痛感させられた。
真理愛の復讐の対象は複数人だ。妥協して、諸悪の根源である川真田樹音一人に絞ったとしても、願望を成就させられるかは怪しい。当たり前だが、誰だって殺されたくない。逃げるし、抵抗するし、立ち向かってくる。体格、身体能力、ともに樹音のほうが上だから、なんらかの武器を手に一対一で戦ったとすれば、樹音が勝利を収める確率が高い。
寝込みを襲うなど、劣勢を覆す方策がないわけではない。しかし真理愛は、これ以上想像を推し進める意欲が湧かなかった。実質的に、鉈の重さを体感した時点で決着はついていた。
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どこか吹っ切れたような、爽やかな苦笑が真理愛の満面を彩る。上体を乗り出して手を伸ばし、トモノリの目の前の地面に鉈を置く。その体勢のまま彼を見上げた。
驚きが胸を襲った。
トモノリの顔に、どこか不服そうな、もどかしそうな、なにかを我慢しているような、そんな表情が浮かんでいるのだ。
真理愛からの視線に気がついたとたん、トモノリはスウィッチを切り替えたように無表情に戻った。鉈に一瞥をくれてから真理愛と視線を合わせ、
「そうだね。君の言うとおりだよ」
無表情なのに、どこかさびしそうだった。
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