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樹音たちは顔を寄せ合い、しかしひそひそ話と呼ぶにはうるさすぎる音量で談判する。その結果は、グループのリーダー直々に真理愛に伝えられた。
「唇にしたら拍手を送ってあげる。唇以外の体のどこかなら、みんなから一発ずつ平手打ち。なにもできなかったのなら、一人あたり一万円払う。賞罰はそんな感じでどうかな。スマホ、持ってるよね。ちゃんと証拠写真撮ってこいよ。証明できなかったら、問答無用で罰金一万円だからね」
いじめは、とうとう金銭を要求する段階にまで来たのか。
純度の高い闇が真理愛の胸中に広がっていく。救いを求めるように首を回すと、トモノリは作業の手を止めて樹音たちのことを見ていた。視線は真理愛を捉えている。
樹音たちのことはこれまでさんざんトモノリに話してきたが、彼が実際に樹音たちの姿を見たのはこれが初めてなのだ。そう思うと目頭が熱くなる。
トモノリと言葉を交わしたい、と切に思う。
「おい、さっさと行け」
背中を思いきり突かれ、前へと押し出される。咄嗟に地面に手をついたので転倒は免れた。すぐさま体勢を立て直し、トモノリのもとへ向かう。背筋を伸ばして、少し早足で。
肩越しに一瞥した樹音たちは、路傍でひと塊になって留まっている。好奇心丸出しの下卑たにやけ笑いの裏には、トモノリへの警戒心が秘められているのだろう。彼と少しでも言葉を交わし、穏やかな性格と語り口を知った者ならば、馬鹿げている以外のなにものでもない態度だ。
樹音たちにとっては罰ゲームでも、真理愛にとってはそうではない。
その気づきが、足を速めさせる。苦行を早く終わらせたい気持ちの反映だと樹音たちは解釈したに違いない。そう思うと足はさらに加速し、今にも駆け出しそうな速度に達する。なかば膝蹴りをする形となったスクールバッグが音を立てて弾む。携帯電話で撮影しろと言われていたのを思い出し、足を緩めてバッグの中から取り出す。速度を上げる。
二人の距離がゼロになった。
「湯田さん、君はあの子たちと――」
真理愛はトモノリを両腕で抱きしめた。発言が止まった。作業服からは鉄と木と埃と土の匂いがした。それを肺いっぱいに吸い込み、耳元でささやく。
「トモノリ。わたし、あの女どもからいじめられているの。だから、憎んでる。復讐したい。殺したい。だから、協力して。頼れる友だちはトモノリしかいないから」
間があった。発声に先立って口腔の唾を飲み込むためとも、発言内容を咀嚼するためともつかない、五秒にも満たない間が。
「唇にしたら拍手を送ってあげる。唇以外の体のどこかなら、みんなから一発ずつ平手打ち。なにもできなかったのなら、一人あたり一万円払う。賞罰はそんな感じでどうかな。スマホ、持ってるよね。ちゃんと証拠写真撮ってこいよ。証明できなかったら、問答無用で罰金一万円だからね」
いじめは、とうとう金銭を要求する段階にまで来たのか。
純度の高い闇が真理愛の胸中に広がっていく。救いを求めるように首を回すと、トモノリは作業の手を止めて樹音たちのことを見ていた。視線は真理愛を捉えている。
樹音たちのことはこれまでさんざんトモノリに話してきたが、彼が実際に樹音たちの姿を見たのはこれが初めてなのだ。そう思うと目頭が熱くなる。
トモノリと言葉を交わしたい、と切に思う。
「おい、さっさと行け」
背中を思いきり突かれ、前へと押し出される。咄嗟に地面に手をついたので転倒は免れた。すぐさま体勢を立て直し、トモノリのもとへ向かう。背筋を伸ばして、少し早足で。
肩越しに一瞥した樹音たちは、路傍でひと塊になって留まっている。好奇心丸出しの下卑たにやけ笑いの裏には、トモノリへの警戒心が秘められているのだろう。彼と少しでも言葉を交わし、穏やかな性格と語り口を知った者ならば、馬鹿げている以外のなにものでもない態度だ。
樹音たちにとっては罰ゲームでも、真理愛にとってはそうではない。
その気づきが、足を速めさせる。苦行を早く終わらせたい気持ちの反映だと樹音たちは解釈したに違いない。そう思うと足はさらに加速し、今にも駆け出しそうな速度に達する。なかば膝蹴りをする形となったスクールバッグが音を立てて弾む。携帯電話で撮影しろと言われていたのを思い出し、足を緩めてバッグの中から取り出す。速度を上げる。
二人の距離がゼロになった。
「湯田さん、君はあの子たちと――」
真理愛はトモノリを両腕で抱きしめた。発言が止まった。作業服からは鉄と木と埃と土の匂いがした。それを肺いっぱいに吸い込み、耳元でささやく。
「トモノリ。わたし、あの女どもからいじめられているの。だから、憎んでる。復讐したい。殺したい。だから、協力して。頼れる友だちはトモノリしかいないから」
間があった。発声に先立って口腔の唾を飲み込むためとも、発言内容を咀嚼するためともつかない、五秒にも満たない間が。
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